育成牧場での仕事が結果として表れた上位の2頭
文/村本浩平
札幌4レースのメイクデビュー札幌(芝1800m)は、3番人気に支持された
矢作厩舎の
モズが勝ち、2着には
国枝厩舎の
バシレウスが入った。
勝った
モズは、
函館2歳Sで
2番人気の支持を集めていた
キョウエイアシュラと同じ
シュウジデイファームの育成馬。一方の
バシレウスは、
キョウエイアシュラと人気を二分していた
ステラリードと同じ
グローバルの育成馬だった。
関係者の話を聞こうとウイナーズサークルに行った時、カメラマンの須賀秀晴さんから、
「メインもシュウジデイとグローバルで決まるかな」と声をかけられた。
今年の2歳戦では
森厩舎の快進撃が目立っているが、それを支えているのが
グローバルである。鵡川に牧場を構える
グローバルは、
民間の育成牧場としては最大規模の屋内坂路コースを有している。同牧場で育成された2歳馬たちは、パドックで目にしても、充分に乗り込まれたことを示すかのように、総じて仕上がった馬体をしていた。
函館2歳Sに、
キョウエイアシュラと
バトルレッドの2頭を送り出した
シュウジデイファームも、育成馬の
グラプリエンゼルが
函館スプリントSを優勝するなど、成績を伸ばしている育成牧場である。
2歳戦、しかも育成牧場での仕事がダイレクトに結果に出る北海道シリーズのレースだけに、須賀さんの言葉を信じてみるのも悪くないかなと思った。
レースは、
ショウナンカガリビが内枠の利を生かして逃げようとするも、すぐに
チェリーソウマが先手を奪い返し、淀みない流れを保ったまま最終コーナーへと向かっていった。
上位人気の2頭は枠順のままに、最内枠だった
ステラリードがコースの最内をきっちりと回っていき、大外枠だった
キョウエイアシュラは外へと進路を取った。
馬群のまま飛び込んでいった直線だが、初めての厳しい流れに体力と精神力を失った2歳馬の集団は徐々にほころび始める。その時に前を行く馬を交わしたのが
ステラリードであり、そして外から追い込んできたのが
キョウエイアシュラだった。
2頭の決着は、最後は写真判定に持ち込まれたが、位置取りの差が出たのか、ゴール前でアタマ差だけ抜け出していたのは
ステラリードの方だった。
今年の2歳馬が牧場を創業してから2世代目となる
グローバルであるが、1世代目はまだ坂路が完成していなかったことを考えると、
この世代が自分たちの仕事を貫けた最初の世代ともいえる。
グローバルの後藤場長とは昔から面識があったが、会うのは久しぶりとなる。
「おめでとうございます」と声をかけると、とても嬉しそうな表情を浮かべ、
「これだけの施設で、これだけの馬を任せてもらっているわけですから、結果が出せて良かったです」と話してくれた。
「これで夏が終わってもいいぐらいです」とうそぶく後藤場長だったが、
「クラシックでも楽しみな馬ですね」と話を向けると、
「牧場の頃から評価も高かった馬で、最後の脚も良かったですし、距離が延びても対応してくれるはずです」との声が聞かれた。
近年ではクラシックで目だった活躍を残していない函館2歳S組だが、育成牧場での仕事が結果として現れたこの上位の2頭には、今後、その傾向を覆すような活躍も期待できそうだ。