勝ち時計や枠順も含めて考えると、歴史的と言ってもいいような勝利
文/編集部

00年に距離が
芝1200mとなって以降の過去9年で、
牝馬が7勝している
セントウルS。今年は6頭の牝馬が出走していたが、そのうち4頭が1~4着を占め、
牝馬優位を再認識させる結果となった。
人気は、
昨年の最優秀短距離馬の
スリープレスナイト、
昨年のサマースプリントシリーズの覇者の
カノヤザクラらが上位だったが、それらを抑えて堂々の先行押し切りで勝ったのは
アルティマトゥーレ。今回は、強敵相手の重賞初制覇というだけでなく、
時計や枠順を考えると、かなり優秀な内容だったと言える。
まず、勝ち時計は
1分7秒8。近2年が、07年・
1分7秒1、08年・
1分7秒3で、今年も良馬場なら同様の高速決着が予想されたが、戦前の段階では
アルティマトゥーレは、この高速決着に若干の不安を感じさせる面があった。芝1200mの持ち時計は
1分8秒2。1分7秒台の持ち時計のある馬が9頭いる中、これは
出走15頭中の12位に過ぎなかった。
振り返ってみると、
アルティマトゥーレが
OPクラスの芝1200mに出走するのは今回が初めて。半弟に
皐月賞馬の
キャプテントゥーレ、母の
エアトゥーレも
重賞(阪神牝馬S)勝ち馬という良血馬だけに、強敵相手の重賞でかえって、潜在能力が引き出される結果となったのかもしれない。
さらに枠順も加味すると、
「勝ち時計が1分7秒9以内の芝1200mの重賞で、大外枠に入って先行押し切り」という内容は、実は大変な価値がある。
まず、90年以降の芝1200mの重賞において、大外枠に入って勝った馬は
アルティマトゥーレで20頭目。この時点では
「まずまず珍しい」といった程度だろう。
アルティマトゥーレと同じ
フジキセキ産駒で言えば、昨年の
小倉2歳Sにおいて
デグラーティアが16頭中の16番枠で勝っている。
しかし、これを
「勝ち時計が1分7秒9以内の芝1200mの重賞で、大外枠に入って勝った馬」とするとどうだろう。90年以降で勝った馬は、
94年・CBC賞の
ニホンピロプリンス(11頭立て11番枠)、
97年・スプリンターズSの
タイキシャトル(16頭立て16番枠)しかいなくなる。大外枠ではなく
8枠としても、
07年・北九州記念の
キョウワロアリング(16頭立て15番枠)が増えるだけ。
セントウルSを振り返ってみても、00~08年に1分7秒台の決着は5回あったが、そのうち4頭の勝ち馬は
1~2枠、もう1頭も
4枠だった。ここからもはっきりと、
「開幕週の良馬場で高速決着の芝短距離戦は内枠が有利(外枠が不利)」という傾向が見て取れるだろう。
さらに、先述の
「勝ち時計が1分7秒9以内の芝1200mの重賞で8枠に入って勝った馬」の3頭がどういう位置取りだったかを見ると、94年・CBC賞の
ニホンピロプリンスが
4角6番手、97年・スプリンターズSの
タイキシャトルが
4角4番手、07年・北九州記念の
キョウワロアリングが
4角8番手。先団~中団あたりから差して勝っている。
90年以降に勝ち時計が1分7秒9以内だった芝1200mの重賞において、8枠に入って4角3番手以内の競馬をした馬は
[0.1.1.13]。つまり、
3番手追走→4コーナーでは外から先頭に並びかける積極策→直線半ばからエンジン再加速で2馬身半差の楽勝というアルティマトゥーレの内容は、過去の歴史を振り返ると、なおさら優秀さが浮かび上がってくると言ってもいいだろう。
先述の
タイキシャトルや
ニホンピロプリンスは、マイルの重賞も制した馬で、おそらく今回のような勝ち方は、マイル重賞でも好走可能なスタミナも持ち合わせていないと、できなかった芸当だと思われる。
アルティマトゥーレは今回が優秀だったことで、逆に反動が心配な面もあるが、この後、
スプリント路線だけでなく
マイル路線も含めて、大きな注目をしていきたい。
ちなみに反動と言えば、
休み明けで22kgの馬体増ながら連対を果たした
スリープレスナイトも気になるところ。そもそも、
20kg以上の馬体増がありながら重賞で1番人気になった馬は、過去にどれぐらいいるのだろうか。
90年以降に、20kg以上の馬体増がありながら重賞で1番人気になった馬は、
スリープレスナイト以外で
[3.0.0.6]。
昨年の札幌2歳Sで、
ロジユニヴァースが
26kg増で勝ったのは記憶に新しいところだろう。
ロジユニヴァースは
札幌2歳Sの後、間隔を開けて
ラジオNIKKEI杯2歳Sも制したが、勝った他2頭の次走を見ると、
ノーザンドライバーは
「91年のペガサスSを26kg増で勝利→中4週で出走の桜花賞は2番人気で3着」、
トウカイテイオーは
「92年の大阪杯を20kg増で勝利→中2週で出走の天皇賞・春は1番人気で5着」という結果だった。
要するに、
間隔を詰めて出走した2頭は上位人気で連対できなかったわけだが、
スリープレスナイトはこの後、中2週で
スプリンターズSに出走してきたら、どういう取捨をすればいいのか。馬券のことを考えると、
セントウルSの連対馬2頭は、
次走での反動等の判断が非常に悩ましい宿題として残った感じもする。