こんなにうまくいくことも、たまにはあっていい
文/安福良直
今回は自慢話になって申し訳ないが、実は私、先月末の時点で
「菊花賞はスリーロールス本命!」と決めていた。いやあ、久しぶりに完璧な予想だった。そう思ったのも、
スリーロールスの前走の勝ちっぷりがとても素晴らしかったからだ。
その前走(
野分特別)は、スローペースで2番手から抜け出す勝利だったが、2着に4馬身差をつける圧勝で、上がり3ハロンは33秒6。
斬れる末脚、というより、
息の長い末脚をずっと繰り出し続ける、という走りだった。
しかも、父は菊花賞大得意の
ダンスインザダーク。そのレースぶりと血統で
「これは菊花賞向きだ!」という直感が走ったのも無理はない。推理で楽しむ競馬もいいが、時には
「これだ!」という直感も必要だね。
ちなみに、
スリーロールスは、
アンライバルド、
リーチザクラウン、
ブエナビスタがそろい踏みした
「伝説の新馬戦」で
4着だった馬だそうで、そのことは今週になって初めて知ったのだが、もしあの新馬戦の時点で
「菊花賞の頃になったら、この馬がいちばん強くなるぜ!」という直感が働いた人がいたら、脱帽です。
そして今日、私の直感通りに見事、
菊花賞馬に輝いた
スリーロールスだが、終わってみれば、
いろんなことがすべてスリーロールスに味方してくれたおかげもあって、つかんだ勝利、とも思える。
まず、
7分の6という抽選をくぐり抜けて出走権を得る、というところから始まって、次は
枠順。これが願ってもない
1枠1番。1800mでしか勝ったことがない馬なので、折り合いをどうつけるかが課題だったが、この枠順なら逃げ馬の直後にスンナリ入ることができて、折り合いはつけやすい。しかも、
リーチザクラウンというハッキリした逃げ馬がいて、自分が先頭に立ってしまうという心配もいらない。
だから、
「3、4番手のインでじっとしていて、直線で前走の末脚を繰り出せばなんとかなるのでは」という考えを、
浜中騎手をはじめ、
スリーロールスの関係者や
馬券を買っている人はみんな思い描いていたのではないだろうか。
そして、レースでは抜群のスタートを切り、
リーチザクラウンに先に行かせ、折り合いもバッチリ。直線で抜け出した時に、ターフビジョンに物見したらしく外に行ってしまったが、それ以外は完璧。
こんなにうまくいくなんて、というのも、たまにはあっていいね。
もちろん、思い描いた通りに乗ることができた
浜中騎手も、見事のひと言。これがうれしいG1初勝利だが、こういう競馬で勝ったことは、今後の自信につながっていくことだろう。
2着の
フォゲッタブルも、ほぼ思い描いていた通りの競馬ができたと思う。終始
スリーロールスの2馬身後ろを追走し、折り合いもバッチリ。
もしもスリーロールスと枠順が逆だったら結果も逆だったのでは……、と思わせる内容。
母エアグルーヴでデビュー戦から注目を集めていた馬で、春は結果が出せなかったが、
この2着でステイヤーとして開花したと言っていいだろう。ハナ差でG1初勝利を逃した
吉田隼騎手にとっては残念だったが、この騎乗ぶりならチャンスは近いはずだ。
それにしても、改めて思うのは、
菊花賞でのダンスインザダーク産駒の強さだ。2頭出走してワンツーなのだからね。今回特に印象的だったのは、1周目の3コーナーの坂の場面。多くの騎手が手綱を引っ張って、折り合うのに必死になっている中で、1、2着馬は自然と折り合っていた。
ダンスインザダークが持つ
スタミナや
脚質もさることながら、このあたりの
折り合いのつけやすさも、
菊花賞で力を発揮できる原因になっているのだろう。2頭の単勝人気のわりには、馬連や馬単は安い配当だったような気がするが、ここは
「やはり菊花賞はダンスでしょ」という直感が働いた人が多かったからかな?