まさか、10年前と同じことが繰り返されるとは
文/安福良直
圧巻、カワカミプリンセス!残念、カワカミプリンセス!今年のエリザベス女王杯は、無敗の3歳馬
カワカミプリンセスが完勝と呼べる内容で1位入線しながらも、直線で内に斜行して
ヤマニンシュクルの進路を妨害し、12着に降着。
2位入線の
フサイチパンドラが繰り上がりで優勝となった。それにしても、まさかこんな形で無敗記録が途切れるとは……。
思い起こせば、レース序盤からちょっと意外な展開ではあった。
逃げた
シェルズレイがグングン飛ばし、前半1000mの通過は
57秒4。3番手以降の馬はかなり離されてはいたが、それでも1000mを1分を切るペースで進んでいたことは確か。
そもそも
エリザベス女王杯はスローペースになることが多く、
折り合いのついた大人の女性のレース、というイメージが強かった。
だからエリ女では古馬が強いのかもしれないね。それが今年は、
超ハイペースだったおかげで、3コーナーからバテる馬がいれば仕掛ける馬もいて、出入りの激しいドタバタな展開。
淑女のおしとやかさよりも、オテンバ度優先の流れになった、という感じで3歳馬向きの展開になったが、結果的にはこれが良くも悪くも
カワカミプリンセスを目立たせることにつながったようだ。
直線でカワカミは、前が壁になると見たのか、一気に内に切れ込んで馬群を抜け出した。この切れ込んだ時に、隣にいた
ヤマニンシュクルの進路を塞いでしまったわけだが、この時の圧倒的な瞬発力は
「恐ろしい」のひと言。
同じような位置から追い出した
ディアデラノビアや
スイープトウショウら、古馬たちの末脚がまったく霞んでしまったくらいだもんな。
思えば、エリ女に古馬が出走できるようになって最初の年(1996年)も、2位入線の
ヒシアマゾンが進路妨害で7着に降着となったが、この時もアマゾンの圧倒的なパフォーマンスに目を奪われ、他の馬は霞んでしまっていた。まさか10年前と同じことが繰り返されるとはね。
ということで今回も(?)、真の勝者となった
フサイチパンドラが霞んでしまった感じでなんとも後味が悪いが、
スイープトウショウの追撃を凌いだのだから、この馬も強かったのは間違いない。
これまでオークス2着、秋華賞3着とG1で奮闘していたので、
競馬の神様にご褒美をいただいた、といったところだが、でもやっぱり、
カワカミプリンセスを負かして勝たないことには、G1を勝った気がしないだろうなあ。