今年の天皇賞・春は、トップジョッキーの駆け引きが最大の見どころになりそうだ
文/編集部
日曜日の阪神競馬は、朝から大変なことになっていた。第1Rからの勝利騎手を見てもらえば、何が大変だったか、理解できるだろう。
第1R
安藤勝己第2R
武豊第3R
武豊第4R(障害競走)
第5R
安藤勝己第6R
安藤勝己第7R
武豊第8R 小牧太
第9R
武豊第10R 小池隆生
平地の10レース中、4レースを
武豊騎手が勝ち、3レースを
安藤勝騎手が制していた。しかも、
安藤勝騎手が勝てば
武豊騎手が盛り返し、それをまた
安藤勝騎手が押し返すという流れで、本人たちはそれほどでもないのかもしれないが、端から見ていると
火花バチバチだった。
この勢いに押されたか、リーディング2位の
岩田騎手は、第10Rまでの着順が、
競走中止②②④②③⑮②②着。
阪神大賞典も気圧されるように
④着に敗れた。
阪神大賞典は、
安藤勝騎手の
ドリームパスポートが1番人気。
武豊騎手の
アイポッパーが2番人気だった。3000mの長丁場であれば、2頭の差はそれほどないと思われたが、単勝オッズは1.6倍と4.5倍。少し差がついたことが、それぞれに
「プレッシャー」と
「気楽さ」を生み出したか。
レースも、掛かり気味だった
ドリームパスポートに対して、
アイポッパーはピタリと折り合い、
ドリームパスポートをマークする絶好の形となった。
こうなれば
アイポッパーに断然有利。あっさり捕らえて、重賞2勝目を飾るかと思われた。
ところが、
ドリームパスポートは渋太かった。単勝1倍台の馬に渋太いとは失礼かもしれないが、それほど合っているとも思えない急坂の阪神芝3000mで、道中で引っかかり、早め先頭からマークされる形になったのである。正直、これほどまでの接戦に持ち込めるとは想像できなかった。
結果は、この日の阪神競馬を象徴するように
「武豊・アンカツ丼」となったわけだが、本番の
天皇賞・春へ向けては、この差はあってないようなものだろう。
今回は
ドリームパスポートが引っかかったために目標とされたが、本来は
差し脚質なわけで、本番ではどこに位置するか分からない。
デルタブルースも、今回は控える形となったが、
菊花賞や
メルボルンCを見ても分かるように、平坦コースでは
早め先頭から押し切る戦法を取ってくる。
トウカイトリックも、もし次走も
池添騎手が手綱を握るのなら、今回でどれくらいの脚を使えるのか感触をつかんだだろうから、仕掛け所も変わってくるだろう。
アイポッパーは自由自在。
天皇賞・春を6勝し、勝ち方を知っている
武豊騎手が騎乗すれば、どんな戦い方もできそうである。
もちろん4頭以外にも
“盾”を狙ってくる馬はいるわけで、今年の
天皇賞・春は、
馬の実力、そして
騎手の駆け引きが最大の見どころとなりそうだ。
年末の騎乗停止処分で、今年は出遅れた感のあった
武豊騎手だが、
弥生賞、
フィリーズレビュー、
阪神大賞典と、前哨戦をきっちり勝って本番を迎えるあたりはさすが。
連対率4割超えでリーディングを走る
安藤勝騎手に、それを追う
岩田騎手も、毎週毎週、達者なレースを見せてくれている。
“マスターズ”のレースより、現役バリバリのトップジョッキーたちが繰り広げる真剣勝負の方が遥かに面白いに決まっている。
地方所属騎手への門戸(半)開放により、
ジョッキー戦国時代になったことに感謝しつつ、来週以降も騎手たちの熱い騎乗を楽しみたいものだ。
天皇賞・春まで、あと42日。
3分10秒ほどのレースの中で、どのような駆け引きが行われるのか。その想像を42日間、毎日しても悪くないほど、今年の
天皇賞・春は面白そうだ。