惑わされて躍らされ、不当に人気を落としていた実績馬がG1・4勝目
文/長岡伸治
難解どころの騒ぎじゃなかった。前日夕方の時点で、
単勝50倍以上が1頭もいないというかつてないほどの割れっぷり。
最終的には最低人気の
スーパーホーネットが
62.0倍となったが、これは、フルゲートが18頭となった91年秋以降の18頭立ての全レースの中で、3番目に高いオッズ。上位の2レースはいずれも500万下条件だったので、G1に限れば、
近年最大級の超々混戦レースだったのである。
日本馬の確固たる主役が不在、
香港馬の近走がいずれも好成績など、人気が割れた理由はいくつかあるが、
今年のG1戦線が荒れに荒れていることも、大きな要因だったに違いない。
先週、堅く収まることの多い
ダービーまで大波乱の決着となった以上、もとより荒れるレースである
安田記念で堅い馬券を買う道理はない。
皆が血眼になって
穴を探した結果、
穴であるべき馬たちは、もはや
穴でなくなり、さらには、そのうねりが
本命馬の存在感をどんどん薄めていったのだ。
上位人気3頭のうち、
スズカフェニックスと
コンゴウリキシオーは、
マイルG1においてはある意味
「ポッと出」である。
1番人気に推された
スズカフェニックスは前走の
高松宮記念がG1初出走で初勝利。3番人気の
コンゴウリキシオーにしても、クラシックに乗るほど早い時期から活躍はしていたが、この路線に限れば新顔といっていい。
それに対して、2番人気の
ダイワメジャーは
1600~2000mのG1をすでに
3勝、
日本馬の中では明らかに格上の存在であった。
ところが、
「荒れる!」という半ば願望に近い思いが渦巻く中で、不当に人気を落としていた。
そんな空気にも惑わされす、
ダイワメジャーは完璧なレースを見せた。
懸念された内枠もなんのその、出たなりに好位のインで難なく折り合うと、直線半ば、やや強引なコース取りではあったが、鞍上のゴーサインに鋭く反応、坂を上がってからもしっかり伸びて、粘る
コンゴウリキシオーを退けた。
あっぱれ、
G1・4勝目である。
配当も、3連単で
6万円台と、平穏とは言えなくても、皆が期待した荒れ方には程遠かった。
レース後、グリーンンチャンネルの中継番組の中で、生産者である
社台ファームの関係者への電話インタビューがあった。
キャスターが
「この馬はノド鳴りもあって、たいへんでしたでしょ?」と、お決まりのエピソードを持ち出すと、電話の向こうで社台の関係者は
「いや、あれはたいしたことなかったんですよ」と平然と答えた。
え~、なんだったの?
競走馬生命を脅かすほどの重病からカムバックしたというのは、フィクション??
再度念押しするキャスターに対して、
「たいしたことなかった」と繰り返す社台関係者。
情報に踊らされるのは、いつもファンである。