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マツリダゴッホの勝利は、誰にも文句の付けようがないもの
文/田端到

こんな有馬記念も悪くない。ゴール前は半ば呆気にとられながらも、楽しく拍手しながら観ていた。

そう、有馬記念は元々こんなレースだった。万人の期待に応えるかのようなドラマティックな演出をほどこしたかと思えば、次の年にはヒザカックン級のスカシ技を決めてみせる。

90年オグリキャップのラストランの翌年には、14番人気ダイユウサクが単勝万馬券で勝利した。06年ディープインパクトのラストランの翌年には、9番人気マツリダゴッホが完勝する。

競馬の神様はこうして気まぐれな顔を交互にのぞかせながら、下界の欲深い人間たちを翻弄し、ぼくらを現実に引き戻す。

かなうファンタジーより、かなわないファンタジーのほうがずっと多いのだ。有馬記念というレースは、いや、競馬というリアルはそれを冷徹に教えてくれる。

マツリダゴッホの勝利は、誰にも文句の付けようがないものだ。内枠の利を活かしてスムーズに先行し、終始ロスのないコース取り。この日絶好調の蛯名正義騎手のゴーサインに弾かれ、ダイワスカーレットを力強く突き放した。

これで中山コースは8戦5勝。G2のAJC杯を5馬身差で楽勝した実績を持ってすれば、このくらいの芸当をやってのけても不思議はない。

東京ジャパンカップをスキップして、得意の中山に合わせたローテーション。雨が降ると一段とトリッキーになるコースで、中山巧者の能力を存分に発揮した。

2着ダイワスカーレットには、マツリダゴッホ以上に驚かされた。もうこれでウオッカより下の評価をする人はいないだろう。個人的にはごめんなさいと謝るしかない。年度代表馬アドマイヤムーンと争うことになるはずだ。

メイショウサムソンはどうしたのか。武豊騎手「馬が前に進んでくれなかった」とコメントしているが、確かにパドックから覇気がないように映った。

連戦の疲れなのか、あるいはグランプリで断然の1番人気を背負うほどの器ではなかったのか。宝塚記念でもジャパンカップでも、ねじ伏せて勝ったのはアドマイヤムーンのほうであり、ライバル不在の1戦で押し出された中心馬の信頼度はこの程度かもしれない。

ただし、武豊の騎乗に疑問がなかったわけではない。得意の内枠を引き当てながら、わざわざメイショウサムソンを外に持ち出し、直線は大外を回った。

行きっぷりが悪くて好位を取れなかった馬場の良いところを選んで外を回ったという弁護もあるだろうが、結果的に内枠の先行馬が上位を占めたレースで、1枠の馬を大外に持ち出して敗れたのは事実である。

「外に出して負けた」と批判されたジャパンカップの雑音を封じるために、同じ乗り方をしたのかと勘ぐってしまう。

思えば2007年はジョッキーの勢力図も揺れた。G1は安藤勝己が勝ちまくり、リーディングは一時期、岩田康誠が独走。武豊のお手馬だったアドマイヤオーラ岩田へ乗り替わりとなる事件もあった。

有馬記念には4人の外国人ジョッキーが呼ばれ、関東リーディングを争う後藤浩輝田中勝春の名前はなかった。「また前残りか……」というため息も最後まで繰り返された。その意味では2007年らしい有馬記念だった。

最後にクエスチョン。今年の有馬記念を漢字1文字で表すとしたら? 正解が「偽」でないことを願う。

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