パワー派やスピード派という区別は、ヴァーミリアンには意味がなかった
文/安福良直

G1になって11回目となる
フェブラリーS。G1になった当初は、
距離適性よりも
ダート適性のほうが重要で、まさに
ダートでこそ、というパワー派が強かった。しかし、最近は距離適性がかなり重要になってきていて、
スピード派の台頭が目立ってきている。
そして今年だが、
ヴァーミリアン、
フィールドルージュ、
ドラゴンファイヤー、
メイショウトウコンなど、ダート中長距離で強い
パワー派は豪華メンバーとなった。
一方、
スピード派は、
ダイワスカーレットをケガで欠き(
今回の目玉と言える存在だったのに、あろうことか
目のケガとは……)、万能型の
ワイルドワンダーや
ロングプライドを除いては高齢馬ばかり。走る前は、久々に
パワー派の勝利が見られるのかな、と思っていたのだが……。
結果的には、
パワー派の大将、
ヴァーミリアンが勝ったが、健闘したのはスピード派の面々だった。芝のG1馬
ヴィクトリーが逃げて、前半の1000m通過が
59秒1。これは
フェブラリーSとしてはそれほど速いペースではなく、
スピード派の面々にとっては楽に追走できる流れ。
でも、
パワー派の面々にとっては、ついていくには苦しいペースだったようだ。これがもっと速いペースならば、後方待機策で
スピード派がバテるのを待つこともできただろうが、
スピード派がバテない流れなのだからそれもできない。
こんな流れに上手く乗っていたのが、
ブルーコンコルドだった。好スタートからすかさず4、5番手につけ、余裕の手応えで直線を向き、いったん前に出られた
ワイルドワンダーを内から差し返した。同じ2着でも、流れに乗りきれず何とか届いた、という感じだった昨年よりもはるかに好内容。
また、馬券には絡めなかったが、
リミットレスビッドや
デアリングハートなどの
人気薄スピード派軍団も、差のない競馬をしていた。
終わってみれば、
昨秋の盛岡の南部杯(ダート1600m)1、2着馬(2着が
ワイルドワンダー)が、そのまま2、3着に入ったのだから、やはりいまの
フェブラリーSは、
スピード派マイラーが強いレースなんだなあ、ということを再確認した。
一方、
パワー派にとっては本当に散々なレースだった。
フィールドルージュは故障するアクシデントに見舞われてしまい、
メイショウトウコンや
ドラゴンファイヤーは見せ場すら作れず。いちばん頑張っていたのが、6着となった8歳の
クワイエットデイだもんなあ……。
そんな中、
ヴァーミリアンだけは別格だった。良績は2000m以上に集中している馬だが、この流れにも苦しむところはまったくなく、外から楽々と抜け出してしまった。
川崎記念を回避するアクシデントがあり、馬体もまだまだ絞れるかなという状態でこの強さ。
芝の重賞を勝ったこともある馬だから、他の
パワー派とは一線を画す馬ではあるのだが、それ以上に
ヴァーミリアンのレベルが高すぎて、
パワー派や
スピード派という区別はこの馬には意味がなかったようだ。
この勝利を手みやげに、昨年に続いて
ドバイWCに向かう
ヴァーミリアン。スピードもパワーも超一流の馬たちが相手になるが、今日見せた走りなら、昨年以上の成果を期待していいだろう。