生粋のスプリンターが空白を埋めてくれることは喜ばしい限り
文/編集部

レース直前までは
トウショウカレッジが
6倍台の1番人気だったが、最終的には
5.4倍に着地。それでも、最低人気の
フジサイレンスが
84.7倍だから、今年の
CBC賞はどこをどう切り取っても
混戦模様だった。
その要因は、
芝1200mのフルゲートでハンデ戦という側面も関係していただろうが、
芝の重賞ウイナーが
リキアイタイカン、
フジサイレンス、
キョウワロアリングの3頭だけで、しかも、近走ではその実績に見合った成績を残せていない。
さらに、
傑出馬が不在という状況では、どの馬にもチャンスがありそうと思うのは自然の流れ。それはもはや、
デパ地下の食料品売り場でおいしそうな惣菜に目移りし、迷っている状態とさほど違いはないでしょう(笑)。
そこへきて、内目の枠に
タニノマティーニ、
スリープレスナイト、
ウエスタンビーナス、
ニシノプライド、
スパインと行きたい馬がズラリと並び、いったいどの馬が行くやら行かないやら、神のみぞ知るというハナ争い。
誰もがハイペースを描いていたはずのメンバー構成では、前走の
テレビ愛知オープンを強烈な末脚で差し切っていた
トウショウカレッジが
1番人気、4着だったが追い込んで見せ場を作っていた
スピニングノアールが
2番人気にも推されるのも頷ける。
ところが、ハナ争いは押して行った
ウエスタンビーナスですんなりと決着。
スリープレスナイト、
タニノマティーニは番手から悠々と追走する。
スパインも
ニシノプライドもその直後で行く構えを見せない。
そのせいか、テン3Fは
34秒0。同日の
3歳500万(6R、1着
メイビリーヴ)が
33秒4、
3歳未勝利(1R、1着
ブルーアース)ですら
33秒8だったのだから、歴戦の古馬が揃った重賞としては、いかにペースが遅かったかがわかる。
そんな中、勝った
スリープレスナイトは楽々と2番手へ。2走前の
京葉S(中山ダ1200m、芝スタート)ではテン3Fを
33秒5で行き、2番手につけていた馬からすれば、
芝の忙しい流れに戸惑う、なんていう懸念はどこ吹く風だった。
結果は、直線で早々と
ウエスタンビーナスを交わし去り、あとはリードを保ったまま先頭でゴール。まったくもって危なげなし。
芝で未勝利の牝馬に55kgのハンデはいかがなものかと思ったが、逆に、
スリープレスナイトの強さを際立たせる要因となった。
スリープレスナイトは近親に
アドマイヤムーン、
ヒシアマゾンという芝G1馬がいて、芝で走ってもまったく不思議ではなかったが…これで
1200mでは
[7.1.0.0]。ここに、
ダートも芝も問わない、生粋のスプリンターが誕生した。
昨年のサマースプリント王者の
サンアディユ、
昨年のスプリンターズSを制した
アストンマーチャンが相次いでこの世を去り、空白となっていた
牝馬の名スプリンターのポジション。その空白を待望の新星が埋めてくれることになりそう。これは喜ばしい限りだ。
サンアディユは父フレンチデピュティ、母父カーリアン(ノーザンダンサー系)、
スリープレスナイトは
父クロフネ(その父フレンチデピュティ)、母父ヌレイエフ(ノーザンダンサー系)。血統構成はよく似ている。
また、
サンアディユも
スリープレスナイトも、
OPまでの出世はダートであり、芝の初勝利がいずれも重賞という(
サンアディユは昨年の
アイビスサマーダッシュで重賞初制覇)。キャリアもそっくり。
CBC賞は施行時期を暮れから6月に移行して今年で3年目。
サマースプリントシリーズは7月の
函館スプリントSからスタートするが、
CBC賞はポツンと浮いてしまっている印象を受けるし、どうして
サマーシリーズの開幕戦にしないのかなあ。
スリープレスナイトというスプリント界の新星が
CBC賞を制したことで、余計にそう思ってしまう。ただ、それは言っても仕方がないので、
スリープレスナイトにはこの夏、頑張ってもらいたい。
3年連続の牝馬によるサマースプリント制覇に向けて。