レースを観て思い浮かぶフレーズは「人馬ともに大胆不敵」
文/編集部
激しい雨が降ったり、曇ったり、晴れ間が覗いたり。目まぐるしく天気が変わった日曜日の新潟だったが、
新潟2歳Sが行われた時は
不良馬場ながら晴れていた。後から考えれば、その勝利を示唆していたようだったが、勝ったのは
1番人気の
セイウンワンダー。
セイウンワンダーがスタートで出遅れた瞬間、目を覆いたくなった人も少なくなかったと思うが、終わってみれば、
直線大外一気で豪快に差し切り。右回り、左回りの違いはあれど、外ラチから伸びてきた
セイウンワンダーを見て、
有馬記念の
シンザンを連想した人もいたはずだ。
15番人気で
2着に突っ込んできた
ツクバホクトオーにも驚かされたが、
不良馬場で
ガンズオブナバロン(2番人気12着)、
ダイワバーガンディ(3番人気9着)など、他の人気馬が伸びあぐねた中、馬場の良い外ラチ沿いを通ったとはいえ、直線だけで他馬をゴボウ抜きにした
セイウンワンダーは天晴れ。
ツクバホクトオーとの着差は
1馬身半差だったが、スタートを五分に切れていれば、その差はもっと拡がっていたかもしれない。
着差以上の完勝だった。前日の
メインレースの考え方で、
「グラスワンダー産駒は外回りの新潟芝1600mで[1.4.3.36]と②着止まりが目立つ」と触れたが、
「スミマセンでした!」と正座して謝りたい気持ちです(笑)。
セイウンワンダーはデビューから
芝1600mで
②①①着。初戦こそ出遅れが響き、
ツルマルジャパンを半馬身捕まえ切れなかったが、3戦ともメンバー中最速の上がりを計時している。
マイルでの決め手はピカイチと言っていいだろう。
今後の課題はもちろんスタートということになるが、3戦の走破時計は
1分35秒5、
1分35秒6、
1分35秒4となっているので、時計を短縮できるかもポイントか。
朝日杯を
1分33秒6で駆け抜けた父
グラスワンダーとまではいかなくても、
1分34秒前後で走れれば、
朝日杯FSへむけて展望が開けそうだ。
先行する競馬から一転、追い込み一気で勝利を収めた
セイウンワンダーは、賞賛されてしかるべきパフォーマンスを発揮したが、鞍上の
岩田康誠騎手もまた見事だった。
「出遅れた瞬間はガチ焦りました(笑)」とレース後の勝利騎手インタビューで話していたが、レースぶりはなんとも肝が据わっている。
先日、たまたま
岩田騎手に話を伺う機会があったが、
「天皇賞・春で出遅れたり、まだ競馬が荒っぽいですね。もっともっと経験を積まないとダメだなって。フランスに行っても、それをつくづく痛感しました」と話していた。
岩田騎手の人柄から想像する限り、これはおそらく本音だと思う。
それでも、
天皇賞・春の
アドマイヤジュピタも、今回の
セイウンワンダーも勝利に導いた。いずれも
「馬の力で勝たせてもらいました」と走った馬を称えていたが、馬に力があっても勝てないのが競馬。
「開き直って乗った」というレース後のコメントに、
騎手・岩田康誠の本質が垣間見えた気がした。
以前、NHKの
『プロフェッショナル』という番組で、棋士・
森内俊之氏と
羽生善治氏の対決が取り上げられていた。
永世名人の称号を得た
森内氏のコメントにいたく感銘を受けたのだが、その言葉が
「窮地の時ほど、大胆に攻める」である。
今回の
岩田騎手にも通ずるところがあると思うが、
ピンチの時に大胆になれるのはジョッキーや棋士に限らず、優秀な資質と言えるだろう。
馬券で負けが込んでくると、どうしても大胆になれない自分にはなんとも羨ましい(笑)。
また、
岩田騎手は勝利騎手インタビューで、
「大外だったので、ファンのみなさんの声がすごく聞こえて気持ち良かったです」とも話していた。実際に競馬のレースに乗ったことがないので分からないが、レース中にそこまで気が回るものなのか。
人馬ともに大胆不敵。
セイウンワンダー&
岩田康誠騎手のコンビが次走以降でどんな競馬を披露するのか、注視してみたい。