セントライト記念が荒れやすい理由とは!?
文/編集部
新書的なタイトルを付けるとすれば、
「なぜセントライト記念は荒れるのか」といったところだろうか。
3連複馬券が発売されるようになったのが02年で、それ以後の
セントライト記念での配当は、9年中8年で
9000円以上。今年は
1万320円という配当で、3連複万馬券はこれで
4年連続となった。近7年はすべて
8番人気以下の馬が馬券に絡んでいる。
セントライト記念が荒れやすい背景のひとつは、やはり
春の実績馬が休み明けで出走するケースが多いからだろう。
今回の場合で言えば、
キングスエンブレム、
クリスタルウイング、
タケミカヅチが
休み明け。休養明けの馬が走らないわけではないが、ひと夏を越して状態を掴みづらいのは事実。今回は3頭中2頭が
プラス体重での出走だったが、
それは当然と思う反面、
仕上がっているのか?と疑心暗鬼になりやすい。人気が分散しやすいのも、そのような面が作用しているのだろう。
ならば、夏を順調に使われている馬がいいかと言うと、単純にそれだけでも足りないようだ。
例えば、今回優勝した
ダイワワイルドボアは、近2走が
古馬相手の1000万で3着、3着という成績だったが、古馬相手とはいえ、その2レースの勝ち馬は3歳馬だ。しかも、2走前の
佐渡特別を制したのは、今回も出走していた
キングオブカルトである。
佐渡特別と
セントライト記念は、同じ
芝2200m。それでいて、
佐渡特別で
3着だった
ダイワワイルドボアが今回優勝し、
佐渡特別を快勝した
キングオブカルトは
10着に敗れた。
たった2ヶ月で逆転が起きた背景には、
同じ距離でもコース形態がまったく異なることが挙げられるだろう。
03年以降の
セントライト記念は、連対馬の10頭中9頭が
父か母父がノーザンダンサー系だった。
佐渡特別は
新潟芝の内回りの2200mだが、
セントライト記念は
中山芝の外回りの2200m。しかも、ご存じのように
変則的な外回りで、直線距離が長いわけではなく、2~3~4コーナーが長い形。
これにより、このコースでの重賞では、
血統内にノーザンダンサーの血を持つ馬がよく活躍している。持続的な脚が求められ、最後の急坂を乗り切る底力も必要となってくるからだろう。
キングオブカルトは父も母父も
ノーザンダンサー系ではなく、
ダイワワイルドボアは母父が
ヌレイエフ(その父
ノーザンダンサー)だった。2頭に
1秒2もの差が付いたのは、そういった血統面の影響もあったのではないだろうか。
札幌記念でひと叩きされてここに向かってきた
マイネルチャールズは、
1番人気に恥じぬ競馬を見せて
2着となったが、同馬も
父&母父が非ノーザンダンサー系。加えて言えば、
ブライアンズタイム産駒が中山芝2200mで[1.4.1.31]という成績だったこともあり、
血統的には不向きなコースであったとも言える。
個人的には馬券圏外もあり得るのではと思っていたが、やはり
皐月賞&ダービーで3着&4着となった実力はダテではなかった。むしろここを
2着という結果で乗り切ったので、今後の展望が開けた印象を受ける。
優勝した
ダイワワイルドボアは、前記したように
母の父がヌレイエフという血統の
アグネスタキオン産駒だが、母の
セニョラージョの半兄は
スワーヴダンサー(父
グリーンダンサー)である。
スワーヴダンサーとは、3歳時に
仏ダービー、
愛チャンピオンS、
凱旋門賞と制して
全欧3歳王者に輝いた名馬。つまり、
ダイワワイルドボアは
「超」を付けてもいい良血で、早くから将来を嘱望されていた馬だった。
初勝利を挙げたのが今回と同じ
中山芝2200mで、その後の2連対は
東京芝2300~2400m。ある程度の長い距離で、最後に坂のあるコースばかりだ。その意味では、
平坦小回りだった近2走よりも条件が良かった面もあるのだろう。
菊花賞トライアルを制したことで、次走でも注目されるのだろうが、ここでちょっとイヤなデータも記しておこう。
00年以降、
中山芝2200mでの重賞は今回で24レース目になるが、過去23レースの勝ち馬でその後にG1を制したのは、
メイショウドトウ、
コスモバルク、
マツリダゴッホの3頭。
メイショウドトウは
同じく芝2200mで最後に坂のある宝塚記念勝ち馬で、
マツリダゴッホは
中山芝2500mの有馬記念覇者。
コスモバルクが
シンガポール航空国際Cを制した時は、
芝2000mの時計が
2分6秒5というもので、非常に重い馬場だった。
このような結果を見ても、
中山芝2200mの特殊性が感じられるだろう。
菊花賞がどのような馬場で行われるかにもよるが、
ダイワワイルドボアは、
再び平坦コースに替わる点がポイントになってきそうである。
さて、冒頭の
「なぜセントライト記念は荒れるのか」についてだが、その回答を探るとすれば、
中山芝2200mの特殊性に加えて、
その適性がはっきりしていない3歳馬の戦いだからでもあるだろう。要約すれば、
「中山芝2200mを走ったことのある馬が少ない3歳戦で、よく分からんから」といったところでしょうか(笑)。
まあ、
「なぜ荒れるのか」が分かったところで、
「荒れさせる馬」が分かるとは限らないのが競馬の難しいところでもある。来年以降は、
目を瞑って指を差した馬から買うか、それとも、
目を瞑って締め切り時間が過ぎるのを待つか、どちらかを試してみたいと思います(笑)。