3強は並び立たず、でも、心の3強は並び立つ!?
文/編集部
神戸新聞杯より先に行われた前哨戦の
セントライト記念では、
夏の条件戦をステップに挑んだ
ダイワワイルドボアが、
ダービー4着馬の
マイネルチャールズを負かす結果となった。今年の3歳牡馬戦線は、春の実績組と上がり馬にそれほど差がないのか。そんな疑問が小さく芽生え始めた。
神戸新聞杯では
ダービー上位3頭、
ディープスカイ、
スマイルジャック、
ブラックシェルが顔を揃えた。言ってみれば、この世代の横綱、大関クラスだ。ましてや、春の実績組が強さを見せることが多いこのレース。若かりし頃の自分だったら、そんな疑問は生じていなかったのかもしれない。
ところが、年を取ったせいなのか、人気に推されるだろう実績馬に、どこかスキはないかとあら探しをする。
ディープスカイ、
スマイルジャック、
ブラックシェルはいずれも
ダービー以来の休み明け。特に、
500kgを超える大型馬で、使われつつ上昇していた
ディープスカイ、
ブラックシェルはきちんと実力を発揮できるのか。
ディープスカイは最内枠を捌いて追い込み切れるのか、
ブラックシェルは皐月賞(⑥着)のように、道中で窮屈な位置に入ったら、器用に馬群を捌けるのか、
スマイルジャックは休み明けで長距離輸送、落ち着いてレースに臨めるのか。
さらに、
18頭立てのフルゲート。出走馬全頭の父の現役時代を見ている自分に、またしても年を取ったなと感じつつ、道中でゴチャついて、人気馬がスムーズに競馬をできない展開もあるんじゃないか。馬柱を見ていると、どうにもひと筋縄では収まりそうにない雰囲気が伝わってくる。
だが終わってみれば、1着1番人気
ディープスカイ、2着3番人気
ブラックシェル、3着2番人気
オウケンブルースリ。4番人気の
スマイルジャックはスローペースで前半に少し掛かり気味だったせいか、直線で失速して
9着に敗れたが、上位はほぼ人気通りの決着となった。
ディープスカイはいつもより前で競馬をして、内で包まれることなくスムーズに抜け出し、先頭でゴールを駆け抜けた。直線での反応は
NHKマイルCや
ダービーに比べると見劣ったが、
前で競馬をしたことと
休み明けのぶんだろう。今回に関しては、勝ったことに意義があると思う。
ブラックシェルは直線で馬群がバラけた内を捌いて急追。抜け出した
ディープスカイにクビ差届かなかったものの、久々を感じさせない反応、レースぶりだった。
重賞未勝利というのが、いまだに信じがたい。
注目を集めた上がり馬の
オウケンブルースリも人気に違わぬ走り。道中では後方のインで窮屈な競馬を強いられ、普通の馬なら馬群に消えていたと思うが、そこから
メンバー中最速の上がり(34秒5)を使い、上位2頭に迫った。いちばい強い競馬をしていたと思う。
というわけで、スケベなあら探しが、気持ちいいくらいに空を切りました(笑)。
神戸新聞杯は
強い馬が勝つ。馬名をちらほら忘れがちになってきている脳みそが、来年の
神戸新聞杯まで憶えていられるかわからないが、言い聞かせるしかない。そういう結果だった。
ただ、自分の馬券スタイルが、完全にスケベ心に覆われたわけではない。
自分の中にはまだまだ、ロマン派な自分がいたのだと、
神戸新聞杯で気づかされた部分もある。
「まさか、そんなことにはならないよな」と思っていたが、それが現実のものとなったのだから。
1~3着馬の父は
アグネスタキオン、
クロフネ、
ジャングルポケット。
00年のラジオたんぱ杯3歳S(現・ラジオNIKKEI杯2歳S)で
1、3、2着となり、
01年の牡馬クラシック戦線を湧かせた最強世代の3強である。
3頭の邂逅はその
ラジオたんぱ杯3歳Sだけだったが、その後の活躍は言わずもがな。
アグネスタキオンの
弥生賞、
クロフネの
ジャパンCダート、
ジャングルポケットの
ジャパンC……そのパフォーマンスに競馬場で胸をトキめかせていた自分が懐かしい。
その子供たちが、初めて顔を合わせた
神戸新聞杯で
ワンツースリーするなんて! ロマン派にはたまらない結果でしょう。3頭が再び
菊花賞で顔を合わせるなら、
3連複1点勝負か!? それはスケベな自分が許してくれないかもしれません(笑)。
ダービー上位3頭による3強は並び立たず。でも、
人気的には
3強が並び立ち、そしてまた、自分の
心の3強も並び立った。これは祝杯を上げるしかないでしょう。
馬券を外して
完敗、でも、
若かりし頃の自分に
乾杯(笑)。