1000万円であっても、いろいろと夢が広がる、それもまた競馬
文/編集部
1000万円あったら何に使おう。
マンション購入の頭金にする? キャッシュでドンと
車でも買う? 将来に備えて
貯蓄に回す?
子供の養育費として取っておく? とりあえず、
値札のないお寿司屋さんに行ってたらふく食べる?
1000万円もあれば、いろいろと夢が広がる。22日(土)の東京12R、1着
8番人気タイセイハニー、2着
14番人気レオブルース、3着
16番人気ジョウテンロマン。3連単は
1046万500円、
JRA史上5位の高額配当が飛び出したが、レース後はため息が出るばかり。
「こんな馬券、当てられやしませんよ」と、大多数の人はレース後、同じ言葉を思い浮かべたことだろう。3連単の総票数は
552万7906票、そのうち、的中票数は
39票。確率はおそよ
0.000007%。計算機をたたいてみても、天文学的な数字すぎてよく分かりません(笑)。
ただ、
1000万円といっても、サラブレッドの値段としては、決して高額とは言えない。でなければ、
G1・7勝、歴代最高の賞金(18億3518万9000円)を稼いだテイエムオペラオーの落札価格(1000万円)が、話題として上がることもなかったはずだ。
近年の
東京スポーツ杯2歳Sの勝ち馬を見ると、01年
アドマイヤマックス(
7000万円)、03年
アドマイヤビッグ(
9200万円)、05年
フサイチリシャール(
9900万円)、06年
フサイチホウオー(
1億円)、07年
フサイチアソート(
4300万円)など、
セレクトセールで高額で落札されていた馬が目立つ(いずれも税別)。
その金額を見ていても、これまたため息が出てしまうが、
東京スポーツ杯2歳Sはそういった面で、
敷居の高い重賞と言えた。今年なら、
2006年セレクトセールで
4100万円(税別)で落札されていた
ダノンカモンが優勝していれば、例年通りの流れだったかもしれない。
ところが、勝ったのは
9番人気の
ナカヤマフェスタ。
2007年セレクトセール(1歳部門)で、アドマイヤムーンの弟
アドマイヤコブラが
2億5000万円(税別)、エアグルーヴの仔
フォゲッタブルが
2億4500万円(税別)で落札された中、
1000万円で落札されていたのが
ナカヤマフェスタだった。
その比較でいえば、
1000万円を安く感じてしまうが、
1000万円は
税別価格であり、税込だと
1050万円となる。東京12Rの3連単が
1046万500円だから、
3万9500円足りない。
夢の高額配当でも届かないと考えると、やっぱり高いです(笑)。
レースは、好位に控えていた
ナカヤマフェスタが直線で抜け出しにかかると、外から手応え良く
1番人気の
ブレイクランアウトが並びかける。対して、追っつけ気味の
ナカヤマフェスタだったが、そこから渋太い根性を見せ、最後は
ブレイクランアウトをクビ差で凌いでゴールを駆け抜けた。
1000m通過は
61秒0、レース上がりは
34秒3。2着
ブレイクランアウト、4着
ダノンカモン、6着
マッハヴェロシティはいずれも
33秒4の上がりで後方から脚を伸ばしたが、その上がりは2歳馬としては極限に近いだろう。それ以上を求めるのは難しい。
一方、
ナカヤマフェスタは
上がり33秒8で勝利したが、確かに上記の3頭よりも前で競馬ができたことも大きい。ただ、それもまた実力のうちであり、レースの上がり3Fのラップは
11.6-11.4-11.3だから、
ナカヤマフェスタは
ゴールに近づくにつれて加速していたと推察できる。
それこそ、
ブレイクランアウトが迫ってからの最後の粘り、並びかけられてからひと伸びした証明だろう。初戦でも見せた
残り1Fでの一瞬の加速力、並ばれてから渋太い
父ステイゴールド譲りの勝負根性、
ナカヤマフェスタはその強力な武器を持ってして、勝つべくして勝った。決してフロックではないはずだ。
競走能力と落札価格は必ずしも比例しない。その下克上があるからこそ、競馬にはドラマ、ロマンが生まれる。キャリア2戦で早くも、
自身の落札価格の約4倍にあたる
4000万円を稼ぎ出した
ナカヤマフェスタ。
上を見れば、
テイエムオペラオーというとてつもない賞金王が君臨しているが、
まずは成り上がりストーリーの第一歩をしっかりと進めた、いや、2戦目だから
第二歩か。いずれにせよ、
1000万円であっても、いろいろと夢が広がる。それもまた競馬。