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エスポワールシチーにはダートの本場にぜひ殴り込みをかけてほしい
文/秋山響(サラブレッド血統センター)

米三冠レースの勝ち馬として鳴り物入りで来日したサマーバードの出走回避にはガクッとさせられた。

三冠最終戦のG1・ベルモントS、真夏のダービーの異名をとるG1・トラヴァーズS、そして、G1・BCクラシックが創設されるまでは米最強馬を決めるレースだったG1・ジョッキークラブゴールドカップとG1・3勝の実績は文句なし。

同期にG1・プリークネスSを制したレーチェルアレクサンドラという歴史的名牝がいるため、今年の米最強3歳馬とまでは言えないが、少なくともサマーバードは最強3歳“牡馬”であることは誰もが認めるところ。

2003年のフリートストリートダンサー以来、日本馬に負け続けているアメリカ勢の鬱憤を晴らす可能性を持っていた馬だけに、戦わずして日本を去ることになったのは極めて残念なことだった。

しかし、心配なのはこれからかもしれない。

ご存じの通り、アメリカの競馬はすべて左回りで行われている。そのため、元よりアメリカの競馬関係者は、右回りで行われることを大きな障壁だと考えている。そして、そんな状況でアメリカでも知名度の高い馬が、右回りで調教を積み重ねている中で故障してしまったのだ。中には、慣れない右回りで調教したから故障したのだ、と考える人が出てきても不思議ではない。

もちろん、右回りで調教を積んだから故障した、などと言い切れるわけはない。しかし、もし、右回りで調教しなかったら、故障しなかったという意見を否定することもまたできないのだ。そして、何より怖いのは、そういう直感的、直情的な意見がジャパンCダートに対するイメージとしてできあがってしまうことだろう。いわゆる風評被害だ。

しかも、悪いことにただ1頭のアメリカ調教馬ティズウェイは見せ場もなく12着に敗退。これでアメリカ馬は阪神では2年続けて、まるで良いところがなかったということになる。来年以降、アメリカ馬の参戦が減らないことを祈りたい。

さて、肝心のレースはと言えば、エスポワールシチーの強さだけが際立ったレースだった。

エスポワールシチーは最内1番枠。7番枠に逃げ宣言のティズウェイが入ったことで、それとの兼ね合いが心配されたが、最初のコーナーを決して無理せずに先頭で入った時点で勝負あり。エスポワールシチーの鞍上・佐藤哲三騎手は、インタビューで「ティズウェイがあのスピードでコーナーに入れば、外にふくらむことは分かっていた」と答えていたが、さすがはベテラン。実に冷静な状況判断だった。

1000m通過は60秒7。これは昨年の60秒2に比べて0秒5遅いもの。しかも、エスポワールシチー「オレについて来たら、そっちがつぶれるぞ」という感じで、2番手を1馬身以内に近寄らせずに単騎の逃げ。まるでバリアを張っているかのような逃げだった。

こうなると、完全にエスポワールシチーのペース。ただ1頭、持ったままで直線に向くと、危なげなくゴールに飛び込んだ。自身の上がり3Fは37秒1。最速の上がりを記録した2着シルクメビウス、3着ゴールデンチケットがともに36秒9とわずか0秒2しか差がないのだから、これでは捕まるはずもない。

「テン良し、ナカ良し、シマイ良し」とはまさにこのこと。まったくケチのつけようがない勝ちっぷりだった。8着に終わったヴァーミリアンに替わって、ダートの新王者が誕生したと言っても過言ではないだろう。しばらくは、この馬の時代が続きそうな雰囲気である。

レース後、佐藤哲三騎手からは「海外」という言葉も出ていた。確かにこの馬のスピードなら海外に行っても面白そう。ドバイももちろんいいが、アメリカにはこの馬向きの1600m、1800mのG1が山ほどある。ダートの本場にぜひ殴り込みをかけてほしい。