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これで高松宮記念でエールを送るべき対象は決まった
文/編集部

重馬場での施行となったオーシャンS「この馬場ではあんまり高松宮記念の参考にはならないんだろうなあ」と、降りしきる雨の量と水が浮くダートコースに目を泳がせつつ、半ば人気馬が崩れることを前提に各馬に見ていた。「この馬場なら、ここで崩れても本番では改めて買えるだろう」と、ここは馬券的にも荒れる展開を予想していた。

結果、1番人気に推された魅惑の血統馬、父ショウナンカンプ、母父ダイナマイトダディで「サクラユタカオーの3×3」配合であるショウナンカザンは、スタート直後から行きっぷりが悪く、道中はノメり続けて最下位⑯着に大敗。賞金的には苦しくなったが、次走はどこに進むのであれ、良馬場なら今回の結果は度外視していいだろう。

②着には7番人気のエーシンエフダンズが入り、③着には8番人気のシンボリグランが続き、「波乱」という予想は、このあたりまでは的中。ただ、キンシャサノキセキの強さは想像以上だった。昨年末の阪神Cで見せた、1400mで大きく2馬身は出遅れながら、最後方から別次元の超大マクリ勝ちには感動すら覚えた。が、その印象をもってしても、想像を超えていた。

キンシャサノキセキは少なくともいまが、これまでのキャリアの中でいちばん強いと思う。重賞3連勝を決めた以上、当たり前だと言われそうだが、この馬、もう7歳である。

南半球産の9月生まれであることを加味しても、明確に晩成型だろう。③着にまたも僅差好走を見せたシンボリグランも8歳と高齢だが、昨年8歳秋にして大成したカンパニーといい、最近の馬にはこういうタイプが多く見られる。

7歳、8歳を旧齢で言えば、8歳、9歳。旧齢が使われていた当時からすれば、そういった年齢で充実期を迎えることはレアだったが、昨今からすればもはや珍しくもない。

『サラブレ2月号』では、このような高齢馬・晩成馬の増加に関して特集し、設備や医療技術の進化、景気低迷による現役馬所有サイクルの鈍化などを想定される原因として取り扱ったが、それらは以前に比べて競走寿命が延びたということへの究明であって、おそらくは要因のいくつかなのだろうとは思う。ただ、現役キャリアにおける最大のピークがそういった年齢になってやってきている理由については、個人的に正直、まだモヤモヤしている。

モヤモヤしていると言えば、世界的に一環した現象として現われている、ここ数年における牝馬の強さもそうだ。3月4日、ドバイワールドC前哨戦のマクトゥームチャレンジ・ラウンド3では、日本のレッドディザイアがペリエ騎手を背に、他国の牡馬勢をウオッカも含めて一蹴したばかり。

レッドディザイアの主戦騎手は四位洋文騎手だったが、ドバイ遠征に際して乗り替わりとなった。その結果、このオーシャンSではここ2戦、デムーロ騎手とスミヨン騎手が鞍上を務めていたキンシャサノキセキに、四位騎手が初めて騎乗することになった。いわば外国人ジョッキーと四位騎手の間で、レッドディザイアキンシャサノキセキの鞍上が入れ替わった形だ。

ジャパンCの時のように外からの差し脚を見せたレッドディザイアに対し、今回のオーシャンSで四位騎手は中団の位置取りから、内ラチ沿いの経済コースを選択。直線では他馬に包まれ、一旦は行き場を失ったかにも見えたが、最後は前をこじ開けて抜け出し、他馬をねじ伏せてゴールに飛び込んだ。それはオークスでブエナビスタ相手に見せた、あのレース運びと似ていた。

当時、そのレースでは敗れたとはいえ、馬が持っていた力の100%を引き出したと思える四位騎手の騎乗には、多くの賛辞が寄せられた。さらにはジャパンCでも、3歳牝馬があのウオッカらに府中で挑んで③着。それなのに今回はドバイを前に乗り替わりとなった。

それだけに今回、四位騎手が騎乗したキンシャサノキセキが勝つシーンを見た時、何か少し溜飲が下がったような気分だった。「重馬場だから、ここは負けても……」と思って見ていたのだから、驚きを伴ってそのスッキリは尚更のことだったのかもしれない。本来穴党の自分だが、これで高松宮記念で買うべき、エールを送るべき対象は決まったと思った。

マクトゥームチャレンジオーシャンCは同週に行なわれたが、今月末、ドバイワールドC本番高松宮記念本番も同週に行なわれる。ドバイで乗れぬなら中京で、ぜひG1を勝ってもらいたい。

四位騎手とレッドディザイア、ドバイと中京が、自分の胸の中では4点ボックスにつながった。自分は本番の当週、出張でドバイに行かせてもらうことになる。メイダン競馬場ではレッドディザイアの姿を見て、同時にキンシャサノキセキのことも思い出すに違いない。