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三重苦を克服したニシノブルームーンは、実にあっぱれだった
文/編集部

ブライティアパルスブラボーデイジーザレマショウナンラノビアと、近3走以内に逃げて馬券圏内に入った馬が4頭もいた今回の中山牝馬S。その4頭はいずれも6~8枠となり、見るからに流れが速くなりそうだった。

中山芝1800m重賞で先行馬が多く揃ったケースと言えば、2週前の中山記念が思い出される。あの時は、内枠の馬(馬番3番のトーセンクラウンと馬番5番のテイエムアンコール)が直線で連対圏まで差し込み、掲示板内は馬番10番以内の馬で占められた。そして、今回の中山牝馬Sも差し馬が台頭し、⑤着以内の5頭はすべて馬番10番以内だった。

こう書けば簡単な結果だったようにも思えるが、ニシノブルームーンがあれほど快勝しようとは、レース前にはまったく想像できなかった。ニシノブルームーンに対しては、『三重苦』を感じていたからだ。

今回のニシノブルームーンは、昨年12月の愛知杯以来、およそ3ヶ月ぶりの出走だった。別に骨折などの故障による休養ではなかったけれど、タニノギムレット産駒に対しては、「休み明けでは割り引いて考える」という固定概念があった。まず、これが引っ掛かった。

休み明けのタニノギムレット産駒では、アブソリュートが富士Sを制したことがあるものの、全体の成績としてはあまり良くない。特に牝駒は休み明けで勝った馬が過去に2頭しかおらず、代表産駒であるウオッカは休み明けが③着(07年秋華賞)、②着(08年毎日王冠)、⑤着(09年ジュベルハッタ)、②着(09年毎日王冠)、⑧着(10年アルマクトゥームチャレンジラウンド3)と、ついに勝ち鞍を挙げられなかった。

ニシノブルームーンは休み明けが②着、③着、⑦着と連対歴があったが、それは500万クラスの話。重賞では勝手が違うのではないかと思われた。

約3ヶ月ぶりだったことに関しては、中山芝の牝馬限定戦という条件で見ても苦しいのではないかと感じていた。

86年以降の中山芝の牝馬限定のOPクラスで、休み明けの馬は21勝を挙げていたが、そのうち20勝は2~3歳限定戦でのもの。古馬混合戦では[1.1.4.57]という成績で、勝ち馬はたった1頭しか出ていなかった。

その唯一の勝ち馬はレディパステル(03年中山牝馬Sを4ヶ月ぶりで制した)だが、同馬はオークス馬である。G1勝ち馬と重賞未勝利の馬を同列で扱うのは、さすがに憚れた。

さらにダメ押しに感じられたのが、当日の馬体重だった。今年の中山牝馬Sで馬体重が10kg以上増えていた馬は2頭いて、どちらも休み明けだった。

約4ヶ月ぶりだったジェルミナルが18kg増(480kg)で、約3ヶ月ぶりだったニシノブルームーンが14kg増(480kg)。どちらも自己最多体重だったので、一度叩かれてからの方が良さそうだと思ってしまったのだ。

タニノギムレット牝馬は休み明けが良くない、中山芝の古馬混合の牝馬限定戦で休み明けは良くない、しかもニシノブルームーンは14kg増。これだけのマイナスデータを覆したのだから、今回のニシノブルームーンは、敬遠球をサヨナラヒットにした新庄選手ぐらいあっぱれだった。

ニシノブルームーンは、ウオッカと同世代の同じタニノギムレット産駒。誕生日も04年4月4日のウオッカと1日違い(ニシノブルームーンは04年4月3日生)で、ウオッカの現役引退が発表された翌週に初重賞制覇を果たすあたり、何かの縁を感じてしまう。

それにしても、振り返ってみると、昨年の愛知杯はレベルが高かったことを思い知らされる。

勝ち馬のリトルアマポーラこそ、その後に2戦して勝ち星がないが、②着だったブラボーデイジーはエンプレス杯を勝ち、③着だったメイショウベルーガは日経新春杯を快勝。④着だったヒカルアマランサスも京都牝馬Sを追い込んで勝利し、⑤着だったニシノブルームーンが中山牝馬Sを制した。

掲示板外の馬でも、⑥着だったのが今回②着のウェディングフジコだし、⑧着だったレインダンスは牡馬相手の京都金杯で③着となっている。

この先の古牝馬の戦いにおいても、昨年の愛知杯組には一目を置いておくといいのではないだろうか。