ここまで来たら、ドラマチックなシナリオを期待したくなる
文/編集部
昨秋、
オウケンの冠名の競走馬を所有する福井明オーナーにインタビューをさせていただく機会があった。その時に
「2歳馬(現3歳馬)の中で期待している馬は?」という、こちらの質問に対し、福井氏が名前を挙げてくれたのが、当時はまだデビューしていなかった
オウケンサクラだった。
それを聞いていたため、
オウケンサクラのデビュー戦には個人的に注目していた。そして、オウケンブルースリがウオッカと歴史的な名勝負を繰り広げたジャパンCの前日、
オウケンサクラは11月28日の京都6R(芝2000m)でデビューを迎えた。
道中は3番手で追走し、絶好のポジションと思われたが、直線で伸び切れず④着に終わる。続く未勝利戦(阪神芝2000m)も③着と惜敗していたが、そこから未勝利戦(京都芝外1800m)、こぶし賞と連勝した。
特に、こぶし賞は牡馬を相手に1番人気に応える見事な勝利。デビューからの2戦は芝2000mを使われていたが、芝1800mで勝ち上がり、芝1600mのレースで勝利を挙げたことで、桜花賞戦線の注目株ともなった。だが、2番人気に推されたチューリップ賞では後方から差し届かず④着となり、惜しくも優先出走権は得られなかった。
それでも、桜花賞出走を諦めてはいなかった。
オウケンサクラは中1週で
フラワーCへと出走してきた。だが、チューリップ賞の敗戦もあってか、3番人気となった。断然の1番人気は新馬、若竹賞と連勝中だった
サンテミリオン。若竹賞では牡馬を相手に2馬身半差で快勝している。2番人気は新潟2歳Sを上がり32秒9の末脚で最後方から差し切った
シンメイフジ。⑤着だったとはいえ、阪神JFで1番人気に推された素質馬である。
スタートから飛び出した
オウケンサクラだったが、外から
ジュヴェビアンがハナを奪いに行くとスッと控える。ところが、これに反応してしまったのが
シンメイフジ。スタートが良すぎたことが災いしたのか、休み明けが影響したのか、掛かり気味に先頭に立つ。それを3番手から冷静にマークするように進んだのが
オウケンサクラ、
サンテミリオンは中団から進む。
直線に入ると、
オウケンサクラは一気にスパート。並ぶ間もなく
シンメイフジを交わすと、後続を突き放して最後は余裕のゴール。3番手の好位から進み、直線で早めに抜け出して押し切るというまさに横綱相撲で、重賞初制覇を飾るとともに、桜花賞への出走を確実なものとした。本番でも今回と同じ走りができるようなら、かなり有力な存在となりそうだ。
②着は直線で外から鋭く追い込んで来た
コスモネモシン。フェアリーSの勝利がフロックでないことを証明してみせた。1番人気
サンテミリオンはこれまでは先行策で勝ち上がってきたが、初めて中団に控えたことで馬が戸惑ったのか、③着争いを制すのが精一杯だった。逃げた
シンメイフジは⑤着。この結果を掛かったわりに粘ったと見るか、案外な内容と捉えるか難しいところだ。
勝った
オウケンサクラの冠名は、
桜拳塾という空手の道場からきている。そしてサクラは桜から。ちなみに、同世代に
オウケンドラゴン(牡3、栗・小崎、父ダンスインザダーク、母アリシーナ)という馬もいて、2頭を合わせると
『ドラゴン桜』という、福井氏が大好きだったドラマのタイトルになるのだという。
名前に桜の文字がふたつも入っている
オウケンサクラ。
桜花賞へと駒を進めたこと自体がすごいことだと思うが、ここまで来たら、その名に相応しく、桜の女王に輝くというドラマチックなシナリオを期待したくなる。