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時計面で見ると、メイショウサムソンに匹敵する優秀な内容
文/編集部

先々週の弥生賞は、重馬場で2分6秒1という近20年でもっとも遅い時計の決着となった中、単勝1.7倍の断然人気に推されたヴィクトワールピサが貫禄の差し切り勝ち。クラシックに向けて視界良好という結果を収めた。

一方、スプリングSは、良馬場で1分48秒2という近20年で3番目に速い決着となった中、4角3番手以内の馬が①~②着となり、単勝1.4倍のローズキングダムは中団追走から今ひとつ伸び切れず③着。こちらは、クラシックを前にして初の敗戦を喫するという、ほろ苦い感じの結果となった。

負けたとはいえ、ローズキングダムはメンバー中最速の上がり(34秒9)を計時して、②着と同タイムの③着。久々に加え、初となるコーナー4回の競馬でありながら、中団のインから馬群をさばいて伸びていて、それほど悲観する内容でもなかったと思われる。皐月賞での巻き返しも、十分に考えられるだろう。

①~②着は先行馬で、②着のゲシュタルトは近2走の500万でも②⑤着と負けていた10番人気の1勝馬。パッと見た限りではどうしても「先行していた①~②着馬は展開利が大きくて、ローズキングダムは展開が向かなかった」という印象も抱いてしまいそうな面がある。

確かに展開面が影響した面も、ないとは言えないのだろう。レース後のインタビューを聞くと、横山典弘騎手もハナに行けたことを勝因のひとつとして挙げていた。

しかし、次走以降の馬券検討に向けて、「展開が大きかった」で済ませてしまっていいのだろうか。展開、時計、馬場状態といった様々な面で過去のスプリングSと比較してみると、今回のアリゼオの勝利内容は、非常に優秀だったことがわかってくる。

まず単純に、良馬場で逃げ切り勝ちを収めること自体、非常に価値が高い

スプリングSでの逃げ切り勝ちは、89年のナルシスノワール(1分49秒8)以来で、「良馬場を4角1~2番手で勝利」としても、90年以降では00年のダイタクリーヴァ(1分49秒1)、03年のネオユニヴァース(1分48秒2)、06年のメイショウサムソン(1分48秒9)、08年のスマイルジャック(1分48秒9)と、4頭しかいないのだ。

馬名の後ろは勝ち時計だが、時計以前に、並んだ馬名を眺めていて気づいた人もいるだろう。いずれも後に春二冠の皐月賞やダービーで連対した、そうそうたる顔ぶれとなっている。

ダイタクリーヴァは皐月賞②着、ネオユニヴァースメイショウサムソンは皐月賞→ダービーと春二冠を達成、スマイルジャックはダービーが②着だった。

これら4頭は89年のナルシスノワールと違って、スプリングSを1分48秒台~1分49秒台前半で勝っていた。これらの結果を見ると、「良馬場で時計の速いスプリングSを4角2番手以内で勝利することは、非常に価値が高い」という仮説が成り立つのではないだろうか。

アリゼオが記録した今回のラップを見てみると、1F目と6F目に12秒4が入っているが、それ以外はすべて12秒2以内という、非常に淀みないラップで逃げ切っている。

先述の4頭のうち、アリゼオと同じく「12秒4以上のラップが2回以内」だったのは、00年のダイタクリーヴァと06年のメイショウサムソンの2頭だけ。ダイタクリーヴァは位置取りが3角6番手→4角2番手だったのに対して、メイショウサムソンは3角2番手→4角2番手だっただけに、ラップや位置取り面を加味すれば、今回の結果は06年にもっとも近いと言えそうだ。

メイショウサムソンは、スプリングSでは4番人気に過ぎなかったが、単勝1.6倍の断然人気のフサイチリシャールを破って勝利を収めた。そして皐月賞ではさらに人気が下がり、6番人気ながらG1制覇を果たし、その勢いのままダービーでも戴冠した。

アリゼオも、皐月賞ローズキングダムより人気が上に来る可能性は低いと思われる。人気に反してのメイショウサムソンの再現は、もちろん簡単ではないだろうが、少なくとも今回は、「現3歳の牡馬路線は、本当にヴィクトワールピサローズキングダムの2強体制なのだろうか?」という疑問を抱かせるだけのインパクトを残したと言えるだろう。