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トウカイトリックには、カンパニーと違った活力があるのだろう
文/編集部

近年は高齢馬の活躍が多いとはいえ、昨年、8歳以上で平地のOPクラスを勝ったのは、カンパニージョリーダンスダンスアジョイマイケルバローズの4頭だった。

それが今年は、1月の万葉Sを8歳のトウカイトリックを勝ち、ジャニュアリーSを10歳のニシノコンサフォスが勝利。2月はすばるSを9歳のアンクルリーサムが快勝し、3月に入っても、9歳のマヤノライジンが大阪城Sを差し切り、8歳のシャドウゲイトが中京記念を制するなど、早くも5頭が勝ち鞍を挙げていた。

高齢馬の活躍はいったいどこまで続くのかと思っていたら、別定G2である阪神大賞典まで制してみせた。その頑張りにはただただ平身低頭するばかりで、床にこすり過ぎた額が痛いです(笑)。

トウカイトリックは阪神大賞典が5度目の出走で、その戦績は一段一段降りていた。06年(4歳)が②着、07年(5歳)が③着、08年(6歳)が④着、09年(7歳)が⑤着。年齢を重ねるとともに着順は下降していたわけで、8歳にしてジャンプアップしようとはなかなか想像できなかった。

カンパニーは昨年のG1&G2で4勝を挙げたが、その4勝はいずれも馬番2~4番だった。

調べてみると、86年以降の平地のG1&G2を制した8歳以上の馬は8頭いて、そのうちの6頭が馬番4番以内で勝ち鞍を挙げている。例外の2頭も馬番10&12番で、これを考えれば、今回のトウカイトリック馬番13番は異例。

トウカイトリック自身、これまでの7勝はすべて馬番1~6番で記録してきていたのだから、今回は、様々なデータを覆した歴史的勝利と言えるのではないだろうか。

カンパニーは、高齢になっても衰えないその元気さが活躍の要因と言われていた。

思い出されるのは昨年の天皇賞・秋で、レース後に検量室前に戻ってきたカンパニーは、止まりきらずに勢い良く通過していった。その姿は、まだ走り足らん、といった風で、とても8歳馬とは思えない活力を感じさせた。

トウカイトリックは、それとはちょっと違うタイプと思われる。

レース後のインタビューで藤田騎手「自分から走らない馬なので」と話していたが、今回の阪神大賞典でも、2000mを通過した辺りで早くもムチを入れられていた。勝負所でも藤田騎手の手綱が激しく動き、それでもジャミールメイショウベルーガに先に行かれる形だった。

その後も藤田騎手の叱咤激励は続き、馬のボルテージが上がってきたのは最後の直線に入ってきてからのように見えた。

馬群の外には持ち出されず、中央に進路を取られると脚を伸ばし、先に行かれたジャミールメイショウベルーガを追いかける。そして、坂を登ってからさらに加速をして、ゴール前で再び2頭を捕らえて先頭でゴールした。それはまさしく「ナタの切れ味」だった。

その活力は、カンパニーのような表に出るものではなく、マグマのように内に溜め込んでいるように思われる。それを藤田騎手が上手く引き出す形になった。

と、言葉で表現するのは簡単だが、追走するのにも難儀をし、残り1000mから1分ほどの間を追いまくってくるのだから、藤田騎手が楽ではないのも想像が付く。カンパニーの横山典騎手とはまた違ったたいへんさがあったことだろう。

藤田騎手は、ダービー、有馬記念、宝塚記念、安田記念など数々のG1を制しているが、なぜか天皇賞には縁がなく、春は[0.0.2.11]秋は[0.0.2.8]という戦績が残されている。

8歳になっても衰えを知らないトウカイトリックのやる気を引き出し、盾を手にすることができるか。3200mの長丁場の中、どこで藤田騎手のムチが飛び、トウカイトリックのエンジンに火が付くかが楽しみだ。