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マイル以下に初出走で芝1600m重賞制覇は、歴史的にも価値大
文/編集部

中山芝1600mで傾向的に不利な大外枠に入り、しかも1600m以下に初出走となるサンライズプリンスが1番人気。朝日杯FSの③着馬ダイワバーバリアンの方が1番人気と予想していた自分としては、この人気にも驚いたが、好枠のダイワバーバリアンを突き放してのサンライズプリンスの楽勝劇には、さらに度肝を抜かれた。

スタートは立ち遅れ気味。しかし、これについて鞍上の横山典弘騎手はレース後、「後手を踏んだというより、(スタートに関しては)短いところを使ってきた馬と長いところを使ってきた馬の差」といったコメントをしていた。二の脚のダッシュ力を考えれば、確かにそういうことなのかと思う。

そして、3コーナーでは先頭を走るコスモセンサーのすぐ後ろまで取り付く積極策。前半5Fが58秒0という流れの中、外目を通ってこれだけの脚を使えば、直線で末脚が鈍っても不思議ないところだが、そんな心配はよそに、大きなストライドで最後までしっかりと伸び切った。

見た目の走りのインパクトが大きかっただけではない。勝ち時計の1分32秒9は、タイキリオンが勝った02年の1分32秒1に次ぐ、同レース史上2位の好タイム。馬場の差や前半のペースの違いもあるから単純比較はできないが、1週前に行なわれた古馬の中山芝1600m重賞のダービー卿CT(1分34秒3)を1秒4も上回った。

枠順、臨戦過程、レースぶり、勝ち時計。様々な面で自分の予想を超える強さだったが、その中でもっとも興味を引いたのは何かと言えば、臨戦過程の面だった。サンライズプリンスのように、1600m以下が初出走という臨戦過程ながら芝1600m重賞を制した馬は、過去に果たしてどういった面々がいるか。

90年以降、「1600m以下が初出走という臨戦過程ながら芝1600m重賞を制した馬」は、今回のサンライズプリンスで13頭目(13レース)。当然と言えば当然かもしれないが、キャリアの浅い馬たちが多く出走する2歳戦で勝った馬が、そのうちの7頭を占めている。

3歳以上で勝った馬たちの方を列記すると、00年クイーンCのフューチャサンデー(10)、04年NHKマイルCのキングカメハメハ(1)、07年ニュージーランドTのトーホウレーサー(11)、07年マイラーズCのコンゴウリキシオー(9)、10年フェアリーSのコスモネモシン(11)、そして今回のサンライズプリンス(1)。

カッコ内の数字は人気だが、9番人気以下の激走が目立つ。上位人気での勝利と言えば、サンライズプリンスの他にはキングカメハメハだけ。キングカメハメハと言えば、NHKマイルC→ダービーを連勝した歴史的な名馬だった点を考えれば、今回の勝利の価値の高さが見えてくる。

では、2歳戦も含めて「1600m以下が初出走という臨戦過程ながら、中山芝1600m重賞を1番人気で勝利」という馬はどうかと言うと、今回のサンライズプリンスの他には、95年朝日杯3歳Sのバブルガムフェローだけ。バブルガムフェローもまた、3歳で天皇賞・秋を制した印象的な名馬だった。

ただし、キングカメハメハにしてもバブルガムフェローにしても、サンライズプリンスと同じく「1600m以下が初出走という臨戦過程ながら芝1600m重賞を勝利」とはいえ、G2ではなく、G1での勝利。今回の結果をこの2頭の勝利と同等の価値と考えることは、やはり強引で早計な面があるだろう。

しかし、注目したいのはキングカメハメハバブルガムフェローも、「1600m以下が初出走という臨戦過程ながら芝1600m重賞を勝利」の後、芝2400mや芝2000mのG1を制していることだ。記憶を振り返ってみても、この2頭にマイラーというイメージはない。

そのあたりを参考に考えてみると、サンライズプリンス「重賞初制覇はマイルとなったが、それは適性的にマイルが合ったというより、中距離型としての資質の高さを示した結果によるもの」といった見方をした方が、この馬の実像に近いんじゃないかという気がしてくる。

サンライズプリンスは今後、どういったレース選択をしていくのだろう。キングカメハメハのように、NHKマイルC→ダービーという青写真を描いているのだろうか。違うコースのマイルでの走りも、もちろん見てみたい。さらにもちろん、東京芝2400mで走っても強いんじゃないかという気もしてくる。

そういった様々なカテゴリーでの活躍を想像させる「懐の広さ」を持つ素質馬は、それほど多くいるわけでもないと思うが、この馬は十分にそんな1頭じゃないかと、今回の走りを見て強く感じた。