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混戦ムードも、終わってみればアパパネの一強だった
文/安福良直

今年の桜花賞は、1番人気のアパパネが完勝。関東馬が勝つのは06年のキストゥヘヴン以来4年ぶりだが、関東所属騎手が桜花賞を勝つのは、なんと25年ぶりだそうな。

蛯名騎手は、単なるG1の1番人気という重圧以上に(これだけでもすごい重圧だと思うが)、「関東騎手は勝てない」というジンクスとの戦いでもあったわけで、今回、それにも打ち勝てたのは、とても大きな意味があるだろう。来年以降は「関東馬の桜花賞」という時代になるかもよ。

さて、レースの流れは、先行馬不在ということで、それほど速くないペースとなった。近年の桜花賞ではよくある展開と言えるが、4コーナーで5番手以内にいた馬のうち、4頭が⑤着までに入っていて、ここまで先行勢が上位に残るのは珍しい。

そんな展開を先導したのが、いままで逃げたことが一度もなかったオウケンサクラ。意外な展開ではあったが、思えば、鞍上は最近5年で桜花賞3勝の安藤勝騎手。桜花賞の勝ち方を誰よりも知っている男が選んだ作戦で、結果的にはあわやの②着だったのだから、これは大正解。レースを支配していたのは、間違いなくアンカツだった。

桜花賞は関東騎手がなかなか勝てない一方で、関西でも特定の騎手だけがいくつも勝つレースであり、やはり「桜花賞の勝ち方」を知っている騎手は狙わなければならない、ということだね。

そんなアンカツ支配のレースを勝ち切ったのだから、今回はアパパネの力が一枚も二枚も上だったと思う。アパパネも好スタートからレースの流れに上手く乗っていたが、序盤はやや掛かり気味だったし、直線も外に持ち出すところで少し距離損があった。

上位に入った馬の中では、いちばんロスの多い競馬に見えたが、これはロスなく立ち回ろうとしてつまらない不利を受けるよりは、広いところに出して堂々と走れば勝てる、という自信の表れだったのだろう。むしろ、この少々荒々しい競馬ぶりが、他馬との力の差を際立たせた、と言えるだろう。このあたりは、父キングカメハメハのダービーを思い出させるね。

走る前は、重賞を2勝以上挙げている馬が不在で混戦ムードと言われていたが、終わってみればアパパネの一強だった、ということがハッキリした。そんな桜花賞だった。

③着、④着にはエーシンリターンズショウリュウムーンが入り、これも終わってみれば、チューリップ賞の①~④着が入れ替わっただけ、という結果になった。牝馬クラシック戦線では、特定のレースの上位馬がそのまま本番でも上位に来るケースが多いので、それに気づいていれば簡単に獲れた馬券かも。もっとも、だいたいは終わってから気づくんですけどね、私のように。

つまり、今年のチューリップ賞はレベルが高かった、ということになるのだろうが、今回はこれまでの桜花賞の中でもちょっと特殊な流れで、それに高い対応力を示した馬が上位に来た、とも言える。また、内枠のほうがレースがしやすかったのも確かだ。だから、②着以下の馬については、今回の結果がそのまま実力差だとは思わないほうがいいだろう。

オークスも、このまま順調に行けば、アパパネの軸は揺るがないだろう。母系が短距離血統というのがカギになるが、オークスはマイラー血統の馬でも活躍してしまうもので、長距離適性よりも、これまでの実績でどうにかなってしまうものだ。

むしろ混戦なのは②着争い。今日負けた馬の中では、シンメイフジアニメイトバイオの最後の脚が目立っていて、オークスでの巻き返しに期待したいところだ。2頭とも、今日は外枠と前残りの展開に泣かされた。

一方、2番人気で⑤着だったアプリコットフィズは、上手に立ち回って不利のない競馬ができていただけに、伸びあぐねたのは少し不満も。初の長距離輸送がこたえた、ということにしておきたいが……。