真正なるリーチザクラウンが、新星として新たなスタート
文/編集部
デビュー2戦目の未勝利戦は2秒1差をつけての大差勝ち。千両賞は3馬身差、きさらぎ賞は3馬身半をつけてこれまた圧勝。勝つ時は②着以下をちぎってきた
リーチザクラウンにとって、クビ差の勝利というのは、派手さに欠けるパフォーマンスだったことは否めない。
野球で例えれば、
ギリギリのフェンスオーバーのホームランといったところか。それでも、きさらぎ賞以来となる1年2ヶ月ぶりの勝利は、ホーム・グラウンドで放った、価値あるホームランだったことは間違いないだろう。
リーチザクラウンのきさらぎ賞後の戦績を振り返ると、皐月賞⑬着、ダービー②着、神戸新聞杯②着、菊花賞⑤着、ジャパンC⑨着、有馬記念⑬着、フェブラリーS⑩着。芝2000m以上で走り、前走では適性が未知だったダートでも走った。
いまにして思えば、きさらぎ賞からマイラーズCまでの間のレースは、言ってみれば
ロード・ゲーム。その中でも、ダービーで②着に好走し、レコード決着だった神戸新聞杯でも②着だったから、輝きは失っていなかったが、ホームラン(勝ち星)からは見放されていた。
そういった紆余曲折を経て、今回は芝1600~1800m、言ってみれば
ホーム・グラウンドに戻って久々の一発。芝1600~1800mでは前記した3圧勝、このマイラーズCの勝利を含めて②①①①①着となり、唯一、先着を許したのは新馬戦での
アンライバルドだけで、同馬はのちの皐月賞馬であることは周知の通り。
リーチザクラウンは今回、掛かり気味に好位に取りつき、行きたがる面は相変わらずだったが、ゴールまでスピードを持続させることができた。
このレースぶりこそが、真正なるリーチザクラウンであり、その持ち味を活かすにはやはり、マイルくらいがちょうど良いのだろう。
いま考えれば、これだけ前向きな気性の持ち主で、なおかつ優秀なスピードがあるのに、芝3000mの菊花賞でよく0秒4差の⑤着で走ったものだと思う。走破時計3分3秒9も、②着だったお父さんのスペシャルウィークのそれと0秒1差だったし、逃げを打ち、自分で競馬を作っての時計だから感心する。
今回の勝ち時計1分32秒9は、久々のマイル戦と見れば上々だろうし、何より、G1連対馬が掲示板内を占めたように(②着
トライアンフマーチ、③着
キャプテントゥーレ、④着
セイウンワンダー、⑤着
スマイルジャック)、手強いメンバーを退けての勝利だから、高評価してもいいだろう。
話は変わるが、先日、ロサンゼルス・エンゼルスに移籍した
松井秀喜選手が、古巣のニューヨーク・ヤンキースとの今季初戦で打席に立った際、ヤンキース・ファンはスタンディング・オベーションで松井秀喜選手を迎え入れた。
その後、松井秀喜選手はヤンキースのホーム・グラウンドであるヤンキー・スタジアムでホームランを打ったが、いまや敵チームの選手なのにも関わらず、松井秀喜選手のホームランに対してもスタンディング・オベーションが起こった。普通ならまずあり得ないことだし、実際、見た事もない光景だった。
それらのシーンを観ていて胸が熱くなったが、今回の
リーチザクラウンの勝利も、個人的にはスタンディング・オベーションで迎え入れたい気持ちだった。
「リーチザクラウンはマイルがベスト」と信じ、ダービーでも馬券は無印にしたくらいだったから。
リーチザクラウンはこの後、6月6日の
安田記念に向かう予定とのこと。このマイラーズCの結果を受け、傑出馬不在のマイル路線の勢力図を、新星
リーチザクラウンが一気に塗り替える可能性もあるのではないだろうか。
ともかく、真正なる
リーチザクラウンが、マイル路線の新星として新たなスタートを切った。この復活劇は序章に過ぎないかもしれないが、惜しみない賛辞を送りたい。ホーム・グラウンドのマイル戦なら、G1という大舞台でも、ホームランの期待が高まりそうだ。