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ペースや勝ち時計の遅さは、今後を考えると逆に価値が高い!?
文/編集部

昨秋にカンパニーが8歳にしてG1を連勝(天皇賞・秋→マイルCS)したのも大きな衝撃だったが、振り返れば今年の約4ヶ月の重賞を振り返っても、「長年の競馬との付き合いで染み付いた古い常識」の修正を迫られる結果が何度も起きている気がする。

まあ、古い常識と言っても、勝手に培われた「間違った認識」なのかもしれないが、福島牝馬Sで3歳春の桜花賞以来の勝利を挙げたレジネッタにしても、そんな古い常識で取捨を考えたために、この馬を①着付けで買うのを避けてしまった。

どんな考え方かと言うと、「牝馬、特に2歳~3歳春に重賞で活躍した牝馬がしばらく勝ち星から遠ざかったら、復活の勝利を挙げるのは厳しい」というもの。これはもはや、古くさ~い認識なのだろう(笑)。

牝馬に限らずだが、考えてみれば今年に入ってから、実績馬が復活を遂げる勝利がやけに目立っているように思う。

AJCCのネヴァブションは、前年のAJCC以来の勝利。京都記念のブエナビスタは、前年5月のオークス以来の勝利。中京記念のシャドウゲイトは、07年5月のシンガポール・エアラインズ・インターナショナルC以来の勝利。日経賞のマイネルキッツは、前年5月の天皇賞・春以来の勝利。そして、先週のマイラーズCのリーチザクラウンも、前年2月のきさらぎ賞以来となる勝利を挙げた。

ここでもうひとつ、問題になってくることがある。仮にこういった馬を馬券的に嫌ってしまう感覚を修正できたとして、ではその次に、こういう復活の勝利の次走以降をどう考えれば良いのか。

それについてはここで簡単に結論づけることはできないが、今回のレジネッタについては過去の福島牝馬S、さらに過去の福島の芝中距離重賞を参考にすると、「次走以降も十分に注意が必要」という判断をすべき勝利内容だったと思う。

ひとつの重要な判断ポイントとしては、前半1000mの通過タイムが挙げられる。今年はショウナンラノビアブライティアパルスが前で引っ張り、一見、ペースは速いように感じられたが、馬場状態が稍重だったこともあってか、前半1000mは60秒3に過ぎなかった。

00年以降に行なわれた福島の芝1800~2000mの重賞は、今回の福島牝馬Sで40レース目。それを前半1000mの通過タイムで分類すると、60秒0より遅かったのが21レース、59秒9より速かったのが19レースと、約半数ずつとなっている。

そして、それら40レースの勝ち馬がその後にどういう成績を収めたかを見ると、後に芝重賞を制した馬は計7頭いたが、そのうち「60秒0より遅かった」のが6頭、「59秒9より速かった」のが1頭。「60秒0より遅かった」を遅いとするなら、ペースの遅いレースで勝った馬たちの方が圧倒的に、その後に好成績を収めていたのだ。

ちなみに、昨年の福島牝馬Sは前半1000mが64秒2。その昨年の勝ち馬ブラボーデイジーは、今年2月に地方のダートの交流重賞ながらエンプレス杯を制覇。福島牝馬Sを制した後に1勝でも挙げている馬は、現時点で実はこのブラボーデイジーだけだったりもする。

ペースの速い福島の芝中距離重賞を勝った馬が、どうしてその後にあまり活躍できていないのか。その解釈は色々あるだろうが、例年の福島の芝状態を考えると、福島牝馬Sに関しては「荒れた芝で、しかもペースも速くなると、牝馬にとっては負担が大きい」という仮説が考えられるように思う。

ブラボーデイジーが制した昨年の福島牝馬Sは、不良馬場ということもあり、例年に比べて極端に遅いペースだったが、同馬は次走にG1のヴィクトリアマイルでも②着と好走した。負担が大きかったとしたら、この連続好走は考えづらいところだろう。

今年は先述の通り、前半1000mが60秒3。昨年に比べればかなり速いが、道悪で60秒0以上という括りで見れば昨年と共通している。さらに、勝ち時計1分48秒9も決して速いとは言えないが、これらペースや勝ち時計の遅さは、「負担が少ない形で勝てて良かった」という見方もできるように思う。

レジネッタは果たして、昨年の勝ち馬ブラボーデイジーのように、その後に勝利を挙げたり、G1で好走したりできるのだろうか。予想段階ではついつい「古い常識」で考えて軽視してしまったが、今後についても、良い意味で私の「古い常識」をどんどん覆すような活躍を期待したいものだ。