サンテミリオンの勝利は、高評価に値するもの
文/編集部
逃げ込みを図る
アグネスワルツを、上位人気に推されていた2頭、
サンテミリオン(1番人気)、
ブルーミングアレー(2番人気)が直線で捕まえに行く。レース前に予想した展開は、ざっくりと言えばそんな感じだったが、くしくも、ほぼその通りの展開となった。
アグネスワルツが引っ張った流れは、1000m通過が60秒6。他にハナを主張しそうな馬が見当たらない印象のメンバー構成だっただけに、比較的ゆったりとしたこの流れも予想できたが、5ヶ月の骨折休養明けに加え、芝2000mが初だった
アグネスワルツが渋太く粘り込んだことは、個人的には想定外で、馬券でも消してしまっていた。
「いまのゼンノロブロイ産駒に逆らってはいけませんよ」と、心の中でもうひとりの自分が囁いていたような気もするが、このパターンだったかと、レース後に頭を抱えたことは言うまでもない。このパターンとは、①着
サンテミリオン、②着
アグネスワルツで、ゼンノロブロイ産駒が2頭揃って馬券圏内に入ったこと。
今年に入ってから、フェアリーSを制した
コスモネモシンに始まり、アネモネSで
ギンザボナンザと
アニメイトバイオが①着&②着。フラワーCでは
コスモネモシンと
サンテミリオンが②着&③着。牝馬だけかと思いきや、皐月賞トライアルの若葉Sでは、
ペルーサが
ヒルノダムール(次走で皐月賞②着)を負かして3連勝を飾った。
桜花賞こそ3頭が出走し、すべて掲示板外に終わっていたが(⑦着
ギンザボナンザ、⑧着
アニメイトバイオ、⑨着
コスモネモシン)、その勢いは陰ることなく、このフローラSへと至ることとなった。
来週に行なわれるダービー・トライアルの青葉賞には、その
ペルーサと、これまた2戦2勝と底を見せていない
ハートビートソングが登録しており、まだまだゼンノロブロイ産駒から目が離せない日々が続きそうだ。
父のゼンノロブロイは現役時代、天皇賞・秋やジャパンCの勝利を含め、東京芝の重賞で[3.1.1.0]と強さを見せていた。キャリアを通じて④着以下が3回しかなかった馬だけに、東京が特に得意だったと言い切れない面もあるが、その産駒は4月25日終了時点で、東京芝では[7.6.10.22](複勝率51.1%)と抜群の成績を残している。
さらに、
東京芝2000mに限れば[3.1.4.0]で、④着以下となった馬はまだいなかったりもする。あくまで結果論ではあるのだが、
フローラSでは特に、ゼンノロブロイ産駒には逆らってはいけなかったのかもしれない。
いずれにせよ、勝利した
サンテミリオンを見ていても、広い東京のほうがのびのびと走れているように思えた。前走のフラワーCは小回りの中山芝1800mで馬込みに入り、初めて窮屈な競馬を強いられたことがこたえたような感じだったから、
フローラSでの走りこそが、この馬の能力ということだろう。
86年以降で見ると、フローラS(旧・4歳牝馬特別)組はオークスで[3.5.5.128]と勝ち切れないことが多く、そのデータから言えば、
サンテミリオンには強い向かい風が吹いていると言えるかもしれない。
その一方、角度を変えると、フローラSで1倍台の1番人気に推されて勝利した馬は、86年以降で4頭いて、その4頭のオークスでの成績は①③⑧②着。87年マックスビューティが①着、92年キョウワホウセキが③着、07年ベッラレイアが②着と好走していた。
サンテミリオンは単勝1.9倍の支持に応えて勝利したことは、高評価に値するもの。
サンテミリオンは母系にミルリーフの4×4というクロスを内包していて、スタミナを秘めていそうだし、折り合いに心配のなさそうなタイプでもあるから、東京芝2400mはどんと来いだろう。
初年度産駒から次々と活躍馬を送り出すゼンノロブロイ。
サンテミリオンはその父に、初のG1タイトルをプレゼントできるのか。強豪ひしめく牝馬三冠路線、その第2弾・オークスに向けて、
サンテミリオンが新たな楽しみをもたらしてくれた。