07年の新潟記念と妙な共通性を感じさせられた
文/編集部
1番人気(
トリビュートソング)の単勝オッズは4.4倍で、それだけを見ると、今年の新潟大賞典は人気が割れていたと言いたくなるが、8番人気(
シャインモーメント)のそれは26.9倍だった。単勝オッズが10倍台の馬が存在せず、
人気が割れていたのは上位7頭だけ、というのが今年の新潟大賞典の姿だった。
新潟競馬場が左回りになったのは01年で、それ以降、芝での準OP以上のレースは115回行われている。その中で、上位7頭の単勝オッズが10倍を切っていたことは一度もなかった。
ハンデ戦ながらトップハンデが56kg(しかも5頭もいた)で、ハンデキャッパーにとっても馬券を買う人にとっても、迷いに迷う7頭だったのではないだろうか。
結局、上位人気の7頭のうちの4頭が上位④着までを占めて、3連複配当は5280円だった。3連複の7頭ボックスの買い目点数は35点なので、レース後、
「なんだ、そんな買い方で良かったのかよ」という脱力感に襲われた。
でも、7頭ボックスの買い目点数は、馬連だと21点、馬単だと42点、3連単だと210点で、今回のそれぞれの配当は、馬連1640円、馬単3220円、3連単2万7010円。すべてのボックス買いで収支がプラスになるわけではないので、その点は今後の馬券ライフの参考にしてください。
単勝オッズで考えれば、上位7頭がハナ面を揃えてゴールしてもおかしくない状況だったわけだが、結果的には
ゴールデンダリアが馬場の中央から突き抜け、1馬身の差を付けた。
ゴールデンダリアは前走の大阪杯で②着に入る走りを見せていたが、そのレースを含めて、過去の7連対を坂のあるコースで記録していた。だから今回の不安点は、平坦の新潟芝コースにあると思われた。
ゴールデンダリア自身、今回の上がり3Fは33秒8だったので、平坦だから切れ味が鈍るなんてことはなかった。ただ、それでも、流れが速くなり、レースの上がり3Fが35秒0と、
このコースの重賞としては時計が掛かったこともプラスに働いたと思われる。
昨年の新潟大賞典のレース上がりは、34秒3だった。一昨年はペースが緩んだこともあって32秒9。3年前は34秒4だった。
新潟芝外2000mの重賞で、レース上がりが35秒0以上になることは、まったくないわけではない。でも、それは、連続開催後半の芝で行われる夏の新潟記念や、開催6日目の施行だった05年以前の新潟大賞典で見られることが多い。
開催が移ってからのこのレースでは、珍しく上がりが掛かったと言える。
その要因は、今年は先行馬が多く揃ったことにあるだろう。1000m通過が58秒2という速い流れが作り出され、新潟芝外回りの長い直線で、先行馬と差し馬の逆転が起こった。
このコースの重賞で、レース上がりがもっとも掛かったのは07年の新潟記念だった。その時は1000m通過が58秒1で、上がり3Fが35秒5。この時、1/2馬身差で優勝したのはユメノシルシだった。ユメノシルシは、
ゴールデンダリアと同じフジキセキ産駒である。
今年の新潟大賞典の前までで、フジキセキ産駒は新潟芝外2000mでどんな成績を収めていたと思いますか?
驚くなかれ、実は
[1.1.3.22]という成績だった。唯一の勝利が07年の新潟記念で、今回で2勝目。いずれもレース上がりが35秒0以上というのから、妙な共通性を感じさせられる。
フジキセキ産駒では、NHKマイルCをダノンシャンティが勝ち、1ヶ月半前には高松宮記念でキンシャサノキセキもG1制覇を成し遂げている。そのふたつのG1でのレース上がりは、高松宮記念が35秒1で、NHKマイルCも35秒1。
こういうことを書くと、フジキセキ産駒は35秒0以上の芝重賞で強さを発揮する、と思ってしまうかもしれないが、ファイングレインが08年高松宮記念を制した時は33秒7だったする。
フジキセキ産駒が上がりが速くなって苦労するはずもなく、正しくは、
上がりが速くなっても速くなくても強さを発揮できる、といったところだろう。それくらい、奥の深さを感じさせる種牡馬である。
フジキセキ産駒は、JRAの芝重賞で45勝を挙げていて、そのすべてが2000m以下。
2200m以上の芝重賞では[0.5.1.49]と勝てていないが、これとて近い将来に破られる可能性があるだろう。実際に、08年のドバイシーマクラシック(芝2400m)では、オーストラリア産で南ア所属のサンクラシークが快勝している。
日本でそのデータを覆すのは、セントライト記念(中山芝2200m)でスクリーンヒーローに先着し、ロックドゥカンブの0秒2差の②着に入ったことがある
ゴールデンダリアかもしれない。平坦コースで勝ち鞍を収めた
ゴールデンダリアが、6歳春にして確変した可能性も低くはないのではないかと思われる。