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ダノンシャンティが桁違いだったとしか言いようがない
文/浅田知広

今年のNHKマイルC、皆さんが買われたのはAセット「ダノンシャンティリルダヴァルだっただろうか。それとも、Bセット「サンライズプリンスエイシンアポロンだろうか。

Aセットは、上がり33秒台中盤の脚で重賞やOP特別を勝っている2頭。Bセットは、34秒台中盤以上の脚で勝っている2頭だ。5番人気まで含めれば、昨秋に東京の500万を34秒1で勝ったダイワバーバリアンも、Aセットの「サイドニュー」と言えたかもしれない。

もちろん、競馬は同タイプの馬が上位を独占するレースばかりではなく、逃げ-追い込み決着もあれば、上がり33秒台の馬と35秒台の馬が①&②着を占めるケースもある。今回の1&2番人気はダノンシャンティサンライズプリンス。「強いもんは強い」とばかりに、AセットとBセットのメインディッシュ同士の注文だった。

また、ダノンシャンティ-エイシンアポロンの組み合わせ、サンライズプリンス-リルダヴァルの組み合わせもほぼ単勝相応といったところで、人気上位に関しては、あまり「セット」意識しないオッズとなっていた。

もうひとつ言えば、種牡馬欄に「アグネスタキオン」と書いてある2枠2頭を、AセットとBセットに分けるのもどうなんだ、という考え方も当然あるに違いない。

今回の正解はAセット。毎日杯を上がり33秒4で圧勝したダノンシャンティに、前述のダイワバーバリアン、そして休養前の野路菊Sを上がり33秒2で差し切っていたリルダヴァルの①~③着。持続力よりも切れ味勝負で結果を出していた3頭の決着となった。

こんな書き方をすると、まだレース映像を見られず、外出先から『サラブレモバイル』でこの原稿をご覧になっている方は、「落ち着いた流れになったのか」と思われるかもしれない。だが、展開予想がハズレたって馬券が当たることがあるように(その逆もしかり)、得意と思われる展開にならなくたって好走する馬もいる。

前半3F33秒4、そして驚きの日本レコード1分31秒4。このレース14回の歴史を振り返ると、前半3Fが33秒台に突入したのは、タイキフォーチュンが1分32秒6で勝った第1回(33秒9)、そしてキングカメハメハがこの時計をコンマ1秒更新して5馬身差で圧勝した第9回(33秒9)、この2回しかない。

レースレコードを記録した昨年でも34秒3。33秒4はいかにも速く、展開だけを見ればAセットはなし崩し的に脚を使う形になり、粘り強さのBセットが良いようにも見える。

しかし結果は、その速すぎる流れの中で先行する形になったサンライズプリンスは残り100mで脚色が鈍り、ペースに対応できなかったエイシンアポロンは中団でいわゆる「バテず伸びず」。ハイペースでも直線坂下から爆発力を発揮したダイワバーバリアンリルダヴァル、そしてこの2頭をまとめて交わし去ったダノンシャンティのAセット決着だった。

後続を離して先行した4頭のうち、3頭が上がり36秒台中盤以上に失速する中、35秒2で上がったサンライズプリンスも相当強い。ただ、いくら後方待機とはいえ、このペースを上がり33秒5で突き抜けたダノンシャンティが桁違いだったとしか言いようがない。「1頭だけ他の有力馬とは違う流れに身を置いたから」などと片付けることは到底できない、文句なしの快勝だ。

これで、日本ダービーの出走馬はほぼ確定。今日のレースでこれほどの強さを見せた馬で勝ったばかりの安藤勝己騎手ですら、「強い馬がいる」という今年のダービー。

皆さんのご注文は「皐月賞セット」「トライアルセット」か、はたまた「NHKマイルCの単品」か。あれもこれもと目移りする馬ばかりの非常に楽しみな一戦。いまの時点ではとてもではないが絞り切れず、もうバイキング形式でがっつりお腹いっぱい食べたい気分である。