過去に同様のパターンの勝ち方をした例には名馬がズラリ
文/編集部
先週のNHKマイルCでは1分31秒4という、芝1600mの日本レコードが計時された東京の芝。先週同様の良馬場なら、京王杯SCも時計の速い決着になることは予想されたが、1分20秒を切る
1分19秒8のコース・レコードが計時されるとは、さすがに予想を超えていた。
しかも、そのレコードを計時したのは、重賞挑戦の近2走がオーシャンS⑦着→阪神牝馬S⑩着と、掲示板外続きだった
サンクスノート。今回で第55回となる伝統のG2レースにおいて、こういった戦績の馬がレコード勝ちしたという点も、驚きをさらに増幅させた。
90~09年の過去20年で、重賞初勝利を京王杯SCで挙げた馬は、海外馬3頭を除けば、02年ゴッドオブチャンス、05年アサクサデンエン、09年スズカコーズウェイの3頭だけ。別定のG2らしく、基本的にはさすがに敷居は高めで、この3頭にしても「芝重賞で1~2番人気に推された経験はあり」という馬たちだった。
それが
サンクスノートは、重賞で掲示板内がなかっただけではなく、近2走の重賞が10→11番人気で、1~2番人気はおろか、ひと桁人気の経験すらない。
京王杯SCに限らず、別定&定量戦の古馬のG2でこういった戦績の馬が勝ったこと自体、かなり珍しいと言えるだろう。
では、今回の勝利は、「超高速馬場がもたらした非常にレアなケースで、今後の参考にはあまりならないような結果」なのだろうか。それとも、超高速決着の東京芝1400mという舞台が、
サンクスノートの適性に驚くほどピッタリとハマったのだろうか。
後者については、血統を考えると、そうかなと思える部分もある。なにせ、父のサクラバクシンオーは94年のスワンSを4角2番手から1分19秒9で押し切った快速馬で、同産駒では他に、ショウナンカンプも02年のスワンSを1分19秒8で逃げ切り。
「高速の芝1400mで先行押し切り」は、血統的に十八番という面もあるのだろう。
ただし、それだけだと単に血統的な特性の話だが、過去に「勝ち時計1分21秒9以内の東京芝1400m重賞を4角2~4番手から押し切り」という勝利を挙げた面々を調べてみると、
「確かな実力の裏づけなしではとてもできない芸当」だという風に思えてくる。
90年以降で先週までに、「勝ち時計1分21秒9以内の東京芝1400m重賞を4角2~4番手から押し切り」という勝利を挙げた馬を古い順から並べると、以下の通り。なお、馬名の後ろのカッコ内で、Aは京王杯SCでの勝利、Bは京王杯2歳S(旧・京成杯3歳S)での勝利となる。
91年ダイイチルビー(A)、92年ダイナマイトダディ(A)、93年ヤマニンゼファー(A)、97年タイキブリザード(A)、97年グラスワンダー(B)、98年タイキシャトル(A)、03年コスモサンビーム(B)、05年アサクサデンエン(A)。
馬名を見ただけでも当時の走りが生き生きと思い出される名馬が多いが、これら8頭の次走を見ると、(A)の付いた6頭のうち、92年ダイナマイトダディ以外は次走に安田記念を制し、(B)の付いた2頭はともに次走で朝日杯FS(旧・朝日杯3歳S)を制していた。
芝1400mの前哨戦を勝った後に距離延長で芝1600mのG1も制するというのは、他のマイルG1の歴史を振り返っても、決して多いパターンではない。その例がこれだけ多く見られるのは、
「勝ち時計1分21秒9以内の東京芝1400m重賞を4角2~4番手から押し切り」をすれば、それは確かな実力を証明している面があるのだと思われる。
過去の例に挙がった馬、特に京王杯SCを勝った6頭はいずれも、京王杯SCが重賞初制覇ではなかった。その意味で言えば、
サンクスノートをそれら6頭と同じように評価するというのは、さすがに強引と言わざるをえない面があるだろう。
ただし、その一方で
サンクスノートの今回の勝ち方を、例えば「高速馬場で後方からの差しでは厳しく、前に行っていた展開の利も大きかった」などと、
サンクスノートの実力を真正面から評価する方向以外で結論づけようとするのも、ピント外れじゃないかという気がする。
では、そんな
サンクスノートの実力は、次にどこで好結果を生むのだろう。条件や距離は問わず、すぐにまた次走なのか。それとも「芝1400m以下に出走してきた時」など、何かしらの但し書きがついてくるのか。
過去の例に挙がった馬たちのように、次走であっさりG1も制したりすれば、まさに「歴史的な印象深い名馬」の1頭になるんじゃないかとも思うが、とにかく
馬券的な意味でも馬券を離れた意味でも、非常に予想のしがいのある快速馬が頭角を現してきたなという感じだ。