少頭数の重賞を勝った馬だろうと侮ると、痛い目に遭うかも!?
文/編集部
今年のダービーはレースの上がり3Fが33秒4で、連対馬2頭の上がり3Fが32秒台という、かなり偏った感じの上がり勝負となっていたが、同日の最終レースの目黒記念も同様に、レースの上がり3Fが34秒0と速くなった。
90年以降の東京芝2500m重賞で、レースの上がり3Fが34秒5を切ったのは、03年・目黒記念(34秒5、①着トシザブイ)、04年・アルゼンチン共和国杯(34秒3、①着レニングラード)の2レースしかなかったことを考えても、
かなり高速上がりの決着と言えるだろう。
また、12頭と少なめの頭数で、道中のペースが緩くなったこともあり、
コパノジングーの勝ち時計2分34秒8は、90年以降に良馬場で行なわれた目黒記念の中ではもっとも遅いもの。2番目が94年(①着ナリタタイシン)と96年(①着ユウセンショウ)の2分34秒0だから、それより0秒8遅いことになる。
コパノジングーは父(アグネスタキオン)がサンデー系で、
サンデーサイレンス直仔以外のサンデー系が東京芝2500m重賞を制したのは今回が初となるが、過去にSS産駒が東京芝2500m重賞を勝った際の時計を見ると、意外に思えるほど遅いものが多い。
97年・目黒記念(良)の
アグネスカミカゼが2分32秒7、99年・目黒記念(良)の
ローゼンカバリーが2分32秒2、00年・目黒記念(重)の
ステイゴールドが2分33秒2、01年・アルゼンチン共和国杯(稍重)の
トウカイオーザが2分32秒0。半分が道悪ではあるが、いずれも2分32秒0以上での勝利となっている。
父サンデー系と言うと、基本的には全体時計も上がりも含めて時計勝負に強いイメージがあるが、
東京芝2500mはおそらく、勝ち時計が速くなると高いスタミナ能力が問われてきて、瞬発力が活きづらくなる面があるのだろう。父サンデー系の勝利はそのぶん、時計のかかった場合に偏っているのかもしれない。
では、時計的な意味で言えば、上がりの速さばかりが目立って勝ち時計は遅かった目黒記念を制した
コパノジングーだが、この勝利をどのように評価したらいいのか。
今回は、実績上位の
アルナスライン(2番人気⑤着)が11ヶ月の休養明けだったり、1番人気の
トップカミング(⑨着)は重賞で9戦未勝利の馬だったり、
「例年に比べて低調なメンバー」という印象ではあった。
コパノジングーにとって、4走前のダイヤモンドS(11番人気⑥着)や3走前の阪神大賞典(14番人気⑧着)に比べれば、くみしやすいメンバー構成であったことは確かだろう。
また、
コパノジングーは今回も含めて6勝中4勝が13頭立て以下でのもの。
さばきやすい頭数で、しかも大外枠に入ったことが、幸いした面もあったのだろうと思われる。
こういう言い方をしていくと、楽なことばかりだが、今回の舞台はタフなスタミナを問われる東京芝2500m。そこで高レベルのメンバー、厳しい流れの末に勝利をもぎ取ることは、果たして良いことばかりなのだろうか。
それよりも、時計、メンバー、頭数など様々な面で、あまり負荷がかからない感じの重賞初制覇となったことは、今後を考えれば良かった面もあるのではないか。そんな風にも思う。
90年以降で、今回と同じように12頭立て以下の芝重賞を勝った馬は、次走にどのような成績を収めているのか。次走が頭数増で、13頭立て以上の芝重賞の出走した場合の成績を見てみると、90年以降から今週末までに[70.42.32.212](勝率19.7%、連対率31.5%、複勝率40.4%)。
近い時期の例で言うと、
ダノンシャンティは今年、11頭立ての毎日杯を制した次走に18頭立てのNHKマイルCを1番人気でレコード勝ち。
カンパニーは昨年、11頭立ての毎日王冠を制した後に18頭立ての天皇賞・春を5番人気で勝利していた。
ただし、先述の次走成績[70.42.32.212]で、重要なポイントとなるのが人気。
次走に6番人気以内だった馬が[70.42.31.146]と、馬券圏内の大半を占めているのに対して、
次走が7番人気以下だった馬は[0.0.1.66]と、③着が1回あるのみとなっている。
こういう人気に関しての但し書きはつくものの、「少頭数の重賞を勝利→次走が頭数増」というのは一見、楽なレース→厳しいレースというイメージで好走は苦しくも思えるが、案外それほどでもなく、
それほど大きな負荷がかかっていなかったことが、次走でプラスに働く面も少なくないのだろう。
コパノジングーが次走、13頭立て以上の芝重賞に出走するのかどうかはわからないが、たとえそうではなかったにしても、気になるのはまず次走での人気だ。今回がそもそも5番人気での勝利だったが、次走でもやはり、それほど人気に推されることはないのだろうか。
その人気面も気になるし、
コパノジングーのように、前走が条件戦で古馬の芝重賞を制したアグネスタキオン産駒、過去に例がなかったりする。その血統的な意味でも、非常に注目度が高い。戦前はやや手薄な印象もするメンバー構成だったが、結果的には思いのほか、今後が気になる新星が出現してきたなという感じだ。