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ギリギリまで仕掛けを我慢した鞍上の好騎乗が光った
文/秋山響(サラブレッド血統センター)

やはり、競馬におけるシリーズ戦は現実的ではない。特にそれが世界を股にかけて、となるとなおさらだ。突然、なんの話だと思われる方もいるかもしれないが、もちろんG1・安田記念の話である。

皆さん、たぶん、お忘れだと思うが、安田記念はアジアマイルチャレンジというシリーズ戦の最終戦にあたるレースなのだ。

アジアマイルチャレンジは全4戦で構成されており、初戦は2月にオーストラリアで行われるフューチュリティS(G1、芝1600m)。3月のドバイデューティーフリー(G1、芝1800m)が2戦目で、4月のチャンピオンズマイル(G1、芝1600m)が3戦目。そして最終戦がこの安田記念にあたる。

シリーズを2勝すれば、100万ドルのボーナスが出るにもかかわらず、今年、これまでの3レースの勝ち馬はいずれも他のレースに参戦していないのだ。シリーズとしては機能していないのが現実だ。

もちろん、アジアマイル王を決めようという発想はよく分かる(ドバイのレースが1800mだということはそっとしておきましょう)。ただ、馬は生き物であって、F1カーのようなマシンではない。

輸送で体調に大きな変化を引き起こす可能性があるし、検疫をクリアするためには、慣れない環境に一定期間いなければならない。生き物を扱うスポーツに“シリーズ戦”は馴染まないのだ。同じように形骸化しつつあるグローバルスプリントチャレンジも含めて、そろそろ根本的に見直していい時期だろう。

ちなみに、個人的には、シリーズ戦ではなく、アジアのマイル王を決めるレース(名称はアジアカップマイルとか?)を新設して、日本と香港が交互に毎年開催するというのはどうだろうかと思っている。

日本と香港の交流を深めることにもなるし、現状のアジアマイルチャレンジよりもはるかに世界の耳目を集めるはずだ。いま、アジアを引っ張っているのは日本と香港。この2カ国が協力すれば、世界の競馬地図を塗り替えるようなデカいことができると思う。

さて、肝心のレースはというと、これが6歳にしてG1初挑戦となったショウワモダンが見事に優勝。ここ2走の勢いそのままにマイルの頂点に駆け上がった。

パドックではキビキビとした動きが目立ったショウワモダン。レースでは中団の外目でじっと我慢。最終コーナーで余裕を持ちながらポジションを上げると、残り400mを切ってから追い出され、そこからゴールまでいい脚が持続した。

レース後、鞍上の後藤騎手も語っていたことだが、ギリギリまで追い出しを我慢したことが勝因のひとつだろう。後藤騎手は先週の日本ダービーでローズキングダムに騎乗して②着。後藤騎手本人の中ではもう少し仕掛けを我慢していれば、結果は違ったものになっていたかもしれないという思いがあったようだ。

そして、迎えた今回は、ギリギリまで仕掛けを我慢。最後の最後に末脚を爆発させた。敗戦から大きな糧を得て、それを次の機会に活かすことができるのが名ジョッキーの証明。後藤騎手の好騎乗が光った。

最後に、香港馬について触れておくと、⑨着フェローシップは体重がマイナス19キロと本調子にはほど遠いデキ。パドックでもイレ込みが目立ち、本来の力を出し切れなかった。

⑪着のビューティーフラッシュは最初の3ハロン33秒6という速い流れ(逃げたエーシンフォワードは⑩着、2番手マイネルファルケ最下位、3番手リーチザクラウン⑭着)の中、前目のポジションを取りにいってしまってはダメ。前目から押し切るという競馬は、香港国内でも壁にぶつかっていたはず。前走のように後ろに控えるべきだった。

香港馬では最先着の⑤着だったサイトウィナーは、いつもより後ろから競馬をしたのが奏功。日本の競馬をよく知るC.ウィリアムズ騎手が手綱を取ったことが大きかった。ただ、長く脚は使えるのだが、一瞬の切れがないのがこの馬の特徴。今回、瞬発力比べにはならなかったことも、この馬には味方したのだろう。