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個人的には、ナカヤマフェスタには「ヤンチャ」なままでいてほしい
文/浅田知広

レッドディザイアの鼻出血、出走回避は大変残念だったが、それでもなかなかの好メンバーが揃った今年の宝塚記念。

その筆頭格はブエナビスタだが、春の天皇賞馬・ジャガーメイルに昨年のグランプリ連覇・ドリームジャーニー、そして連勝中のアーネストリー、復活を期すロジユニヴァースなど、可能性のある馬はなかなか多い一戦だったと言えるだろう。

ただ、単勝オッズ的には上位5頭から6番人気以下までやや離れており、勝つチャンスがあるのはその「好メンバー」に収まる馬なのではないか、というのが大方の見方だったと思われる。

その一方で、多頭数になることの少ない宝塚記念が、今年は出馬投票の段階で18頭(その後、コパノジングーが出走取消)。同じG1でも、日本ダービーあたりと比較すれば、「出走すること」自体にそれほど大きな意義はなさそうなレースでのフルゲート。「賞金を拾えるチャンスはあるんじゃないか」と思った陣営がそれだけあった、と言えるのかもしれない。

もちろん「賞金」「単勝」では求められる着順に違いはあるが、この頭数を見て、もしかしたらファンと馬を出走させる側に、多少なりとも認識の違いがあるのではないか、などととも考えていた。

そんな中でゲートが開くと、ナムラクレセントの逃げに始まり、アーネストリーロジユニヴァースは2~3番手。そして、いったいどんな競馬になるのか、と思われたブエナビスタも、有馬記念以後からは「順当」と言える好位のインを確保する形になった。

ジャガーメイルの中団も予想通り、ドリームジャーニーも中団馬群の後ろで折り合いをつける競馬と、おそらく人気馬を買っていた人の多くはそれぞれ「よしよし」と思っていたことだろう。

実は筆者もそんな一人で、前残り予想から◎アーネストリー、○ブエナビスタ、そして展開に関係なく突っ込む可能性がありそうなドリームジャーニーが▲。直線に向いてアーネストリーが抜け出しにかかり、その内からブエナビスタが突っ込んできた時には、後はもう何が来ても3連複くらいは当たるだろう、と思って見ていたのだった。

ところが。その2頭の外からジリジリと伸び脚を見せつつある17番。確か4コーナーで「圏外だな」と思ったはずのナカヤマフェスタである。後になってレースを見直すと、確かに4コーナーの手応えはかなり悪く、前のアクシオンに突き放され、外のドリームジャーニーにも交わされそうな勢い。そこから渋太く盛り返しての一気の差し切りで、いくらラスト1ハロンが12秒5とかかったとはいえ、よくぞこの脚を使えたものだ。

と言ってしまうと、ナカヤマフェスタをまったく評価していなかったように聞こえるかもしれないが、実はこの馬、セントライト記念も菊花賞も、そして今回の◎アーネストリーが勝った中日新聞杯でも本命に推していた馬だった。そんな馬をここで無印にした理由と言えば、相手関係だ。

そんなこんなで思い出すのは「出馬投票18頭」という事実。もう少し突き詰めて考えていれば、ある程度の評価をしていた馬、それも穴馬を「相手関係」という理由で消してしまうなど論外の一戦だったはず。しかも、気性面に少々難を抱えていた馬が「まともに走れば」などという、穴狙いにはわかりやすい理由がありながら、である。

ともあれ、「まともに走って」G1の舞台でも結果を出したのが今回のナカヤマフェスタ。これをきっかけに、これまでとは一転して「G1馬らしい」実績を重ねていくのも味があるが、やはりこういった馬には(たずさわる方々には申し訳ないが)「ヤンチャ」なままで、どこか人気を落としたところで再度の一撃を期待したくなるもの。

それは有馬記念か、それとも来年の宝塚記念か。力を出せばG1馬。この後どんな成績を残そうとも決して忘れず、次の一撃はきっちりとモノにしたい。