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悪天候の下で行なわれたが、明るい光に満ちていた
文/編集部

上位人気馬を順番に並べると、1番人気ナムラタイタン(4歳)、2番人気サマーウインド(5歳)、3番人気グロリアスノア(4歳)、4番人気ケイアイガーベラ(4歳)、5番人気ダイショウジェット(7歳)、6番人気ティアップワイルド(4歳)、7番人気マカニビスティー(3歳)、8番人気コスモセンサー(3歳)。

開催時期が7月となった06年以降、3&4歳馬の出走頭数を見ると、06年なし、07年なし、08年2頭、09年1頭。今年は3&4歳馬が6頭いて、近4年との比較では格段に出走馬が増えていたが、上記の通り、そのすべてが8番人気以内に収まっていた。

出走馬全体を見ても、中央のダート重賞、ダート交流重賞を勝っているのはグロリアスノアだけというメンバー構成だったが、今後のダート短距離戦線を盛り上げるであろうルーキーたちが多く顔を揃えた、というのがレースに対する率直な印象だった。

そんな中、最大の焦点は単勝1.7倍の1番人気という支持に表れていたように、ナムラタイタンがデビューからの連勝を「7」に伸ばせるかだったが、直線で内目から弾け切れず、2番手につけていたサマーウインドにもハナ差届かずに③着に敗れた。

『メインレースの考え方』でも書かれていたように、ナムラタイタンにとっては、阪神ダ1400mで行なわれた過去9年で[0.1.2.44]の1~3枠に入ったことが難関と思っていたが、道中で詰まるようなシーンもなく、終始、スムーズに運べていた感じだった。

先ほど「直線で内目から弾け切れず」と書いたが、計時した上がり35秒7は、2走前のコーラスSで計時した上がり35秒6に次ぐ自己2位。今回の走破時計1分22秒5も、ダ1400mの7戦の中で自己ベストだった。自身の力は発揮したと言える。

一方、ケイアイガーベラはメンバー中最速の上がり(35秒3)を計時し、直線だけで後続を4馬身ちぎった。大外枠から好スタートを切り、道中で競りかけられることもなくマイペースの逃げに持ち込めた。降雨によって稍重となり、前有利の馬場が味方した面もあるだろう。とはいえ、である。

ダート短距離で底を見せていなかった牡馬2頭、サマーウインドナムラタイタンを、直線だけで置き去りにした。00年のゴールドティアラがマークした1分21秒9のレコードを0秒1更新し、1分21秒8で走破した。まったくもって恐れ入る。

サッカーのワールドカップが行なわれている、いまのご時勢にはマッチしませんが(笑)、今回のケイアイガーベラは、北京オリンピック(08年)の陸上男子100m決勝で世界記録を樹立し、爆発的なスピードでライバル選手を置き去りにしたウサイン・ボルト選手を想起させた。

プロキオンSの勝ち馬は過去に、バトルライン(97年)、ゴールドティアラ(00年)、ブロードアピール(01年)、スターリングローズ(02&03年)、ブルーコンコルド(05年)、メイショウバトラー(06年)、ワイルドワンダー(07年)が、その後にダートG1で連対を果たしている。

プロキオンSは「ダート短距離の重賞戦線へ向けての出世レース」と言っても過言ではないが、そのレースを爆発的なスピードで圧勝したケイアイガーベラの今後は、極めて明るいものだろう。キャリアはまだ10戦。今回は14kgの体重増で、自己最重量の474kgだったが、肉体的にもまだまだスケールアップが見込める。

また、今回はケイアイガーベラの後塵を拝したが、②着サマーウインド、③着ナムラタイタンもまったく悲観することはないだろう。サマーウインドはキャリア10戦。ナムラタイタンにいたっては、キャリアはわずか7戦だ。2頭の走破時計1分22秒5も、過去の勝ち時計と比較してもまったく遜色はない。

今回は差し届かず、馬場、展開に泣いた感のあるグロリアスノア(⑨着)はもちろんのこと、④着以下に敗れた馬たちの中からも(中でも、冒頭で馬名が挙がった3&4歳馬は特に)、のちにダート重賞を勝つ馬が現れても驚くことはないだろう。

近い将来、「あのプロキオンSはすごいメンバーが揃っていたんだな」と思い返す日がやって来る。楽観的、希望的観測ではなく、そう思えてしまうのが今年のプロキオンSだった。悪天候の下で行なわれたが、明るい光に満ちていたプロキオンSだったと思う。