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19戦の経験があって、早めに動くことができたのだろう
文/編集部

やはり今年の小倉記念も、いかに速い上がりを使えるかの勝負になった。

レースの上がり3Fが35秒2となる中、メンバー中最速の上がり(34秒4)を計時したスマートギアが③着に入り、2位の上がり(34秒7)を使ったバトルバニヤンが②着。そして、34秒8というメンバー中3位の上がりを計時したニホンピロレガーロナリタクリスタルが①着と④着になり、上がり3Fタイムの上位4頭がそのまま上位④着までを占める格好になった。

しかし、レースを観ていた人は分かると思うが、ただ単に速い上がりを使えれば勝てるかと言うと、競馬はそんなに簡単ではない。17頭の中で最速の上がり3Fをマークしたのはスマートギアだったが、同馬は最後に馬券圏内に滑り込んだ形だった。

スマートギアは、重賞では12回走って11回でメンバー中3位の上がりを計時している。しかし、突き抜けた実績まではなく、今回も③着までだった。

速い上がりを使えるなら、もう少し早めに動けばいいではないか。と考えるのは、レースに騎乗したことがない外野の意見だろう。追い込み脚質の馬が好位に付けたら、直線でさっぱり伸びなかった、というのはよくあることで、馬もそれほど簡単ではないということだ。

それでも、ニホンピロレガーロは本来は追い込み脚質で、今回は早めに動く形で優勝したではないか、という意見が聞こえてきそうだ。

確かに最近のニホンピロレガーロは、追い込む形で好走をしていた。ただ、以前は先行して好走を重ねていて、今回の小倉記念の前までに挙げた5勝のうち、4角6番手以下から差して勝ったのは一度だけだった。先行しての勝利実績があったことが、今回の勝利の伏線だったように思う。

3角5番手→4角3番手という位置取りでの勝利を可能にしたのは、鞍上・酒井学騎手との信頼関係があったからだろう。ニホンピロレガーロの鞍上は、07年12月の500万下戦からずっと替わっていない。今回の小倉記念まで、実に20戦連続で酒井学騎手が務めている。

レース後のインタビューで酒井騎手が話していたが、その20戦の中には降着処分となったレースもあるし、ふた桁着順もあり、ダート戦での勝ち鞍重賞での②&③着もある。人馬が苦楽を共にしてきたことが窺い知れる。

今回は小回りの小倉競馬場ということを考えて、「早めに動く形を取った」と酒井騎手は話していたが、そんな乗り方を実践できたのは、過去19戦の経験があったからこそだろうし、酒井騎手が話していた通り、ニホンピロレガーロもそれによく応えた。

前走までで、ニホンピロレガーロが芝でメンバー中3位以内の上がりを計時したことは6度あったが、そのうち5回は昨年以降のレースだ。以前は先行する形を取っていたこともあるのだろうが、切れる脚を使えていなかった。

それが6歳を迎えた昨年以降は、速い上がりでまとめることができるようになり、2~3走前には33秒台の上がりを連続して計時した。これは、この馬自身の成長力だろう。

7歳にして初の重賞制覇という今回の勝利は、ニホンピロレガーロの成長曲線と鞍上との20戦の経験が結びついた結果と言えるだろう。

ニホンピロレガーロの戦績を振り返っていたら、バンクーバー五輪の銅メダリスト(フィギュアスケート男子)高橋大輔選手のインタビュー記事を思い出した。

高橋選手は五輪のプレシーズンを右ヒザ靱帯のケガで棒に振ることになったが、その時も含めて、「悪いことが起きた時、それには必ず何か意味があると思っている」と話していた。そう思うことで何かを学び、課題を克服してきたのだという。

ニホンピロレガーロも、ふた桁着順が8回もあったり、半年以上の休養が3度もあったり、本当に山あり谷ありの戦績をしている。いろんなことがあった上で、それを克服して、今回の勝利に辿り着いたんだろう。

高橋大輔選手しかり、ニホンピロレガーロしかり。少しでも見習って、来週以降も戦っていきたいものです(笑)。