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この高速スライダーを打てる現役馬は、そうはいないだろう
文/編集部

キャプテントゥーレ2番人気で、1番人気がOPでの実績がまだなかったアドマイヤメジャーになったのは、おそらくキャプテントゥーレ休み明けでの連対歴がなかったからだろう。

08年の皐月賞馬で、昨年の朝日CCを制しているが、キャプテントゥーレはそれらを含めて4勝を中5週以内で記録していた。皐月賞制覇は、休み明けだった弥生賞で④着に敗れた後の叩き2戦目だったし、昨年の朝日CC関屋記念で復帰した後の一戦だった。

3ヵ月ぶりの実戦でいきなりエンジン全開となるのか? それが不安材料だったわけだが、皐月賞以来となる逃げの手に出ると最後まで後続を寄せ付けず、これぞ「快勝」という感じで、不安材料を一蹴してみせた。

結果論としては、他馬とはスピードが違いすぎたということなのだろう。その差が如実に現れていた場面が、今回は2度あった。

ひとつは、スタートから開始10秒の間での出来事だった。

先手争いはドリームフライトキャプテントゥーレの2頭に絞られていて、ドリームフライト酒井騎手が出ムチを入れて先手を主張した。ところが、キャプテントゥーレは、鞍上の小牧騎手が手綱を少し動かすとスッと先頭を奪い取り、1コーナーを目指していった。これは天性のスピードの違いだなあと思わせられた。

その後は、前半の1000mを61秒2で通過し、マイペースを構築したわけだが、残り3Fを過ぎた辺りから、スピードの違いを見せつけるふたつ目の場面がやってきた。

3~4コーナーの中間で、他馬の鞍上は手綱を動かしてキャプテントゥーレとの差を詰めようとしていたが、先頭を行くキャプテントゥーレ小牧騎手の手綱がピクリとも動かない。持ったままで4コーナーも駆け抜け、直線に向いた。

ラップを振り返ってみると、キャプテントゥーレは残り800mを11秒5-11秒6-11秒1-12秒1でまとめている。残り400~200mの地点でもっとも速いラップを刻んでいるわけだが、ここは4コーナーの出口前から直線の半ばまでにあたる。

レース映像を見返してみると、直線に入っても小牧騎手の手綱はそれほど動いていない。直線の坂下辺りで追い出し始めていてラップが速くなった面もあるのだろうが、それがなくても11秒台前半のラップは刻んでいたことだろう。このようなラップのまとめ方をされては、他馬がどうすることもできなかったのも頷ける。

芝2000mの重賞で、上がり3Fの中で11秒台前半のラップが刻まれることは、例えば今年の新潟記念でも記録されている。しかし、新潟記念はご存じの通り、最後の直線が659mもあるコースで行われていて、356mの阪神芝内回りとはワケが違う。

キャプテントゥーレはコーナーをカーブしながら高速ラップを刻んだわけで、言ってみればこれは140km台の高速スライダーみたいなものか。2000mという中距離で、この球を打ち返せる現役馬は、そうはいないだろう。

昨年は朝日CC(①着)→天皇賞・秋(⑫着)という臨戦過程を踏んでいて、今年も同様のローテーションになるだろうか。もしそうなると、今度は最後の直線距離が525.9mの東京競馬場が舞台となる。残り2Fがすべて最後の直線に集約されているその地でも、伝家の高速スライダーを使うことができるだろうか。そのあたりが焦点となってきそうだ。

なお、キャプテントゥーレを管理する森調教師は、93年の開業年以来続けている重賞制覇を、今回の勝利で18年連続に伸ばした。これは現役調教師の中で最長とのことで、素晴らしい記録だ。

JRAの重賞勝利は今回で42度目で、これまでに2勝以上を挙げているコースを調べてみたら、次のようになっていた。

4勝 阪神芝内1600m
3勝 中山芝1600m
中山芝2200m
2勝 中山芝1800m
中山芝2000m
京都芝1200m
阪神芝2000m
東京ダ1400m
東京ダ1600m

芝重賞に限ると、2勝以上を挙げているのは、直線距離が短いコースなんですね。もしかしたら、森厩舎は、高速スライダーを決め球にする馬を作るのが得意なのかもしれませんね。