これからもまた、手に汗握り、ドキドキするような戦いを見せてほしい
文/編集部
前日発売オッズでは、2.6倍の1番人気で並んでいた
エイシンフラッシュと
ローズキングダムだったが、その後はジワジワと2頭のオッズに差がつき、最終的には
エイシンフラッシュが1.9倍、
ローズキングダムが3.0倍でレースを迎えることとなった。
その要因としては、
ローズキングダムの馬体重が
22kg増だったことも影響したように感じた。馬体重の発表後、オッズの動きを見ていたら、ジワジワと差がついていくのが見て取れただけに。
それはそうとして、前日発売からレース直前まで単勝オッズを眺めていたら、
エイシンフラッシュと
ローズキングダムの一騎打ちという様相に変化はなかった。
「一騎打ちと言えば、どんなモノがあったっけ?」と、この原稿を書く下準備として、いろいろと思い出そうとした。
パッと頭に浮かんできたのは、
「今年、MLBのア・リーク東地区で繰り広げられているレイズとヤンキースの首位争い」、
「2横綱時代によく見られた白鳳と朝青龍の優勝争い」、
「今年のフジサンケイクラシックでプレーオフにまで突入した石川遼選手と薗田峻輔選手の先輩後輩対決」などなど。
「神戸新聞杯の原稿に上手く落とし込めそうな気がしない」と思い、競馬で一騎打ちとなったレースを頭の中で探したが、真っ先に浮かんだのは
96年阪神大賞典。③着以下を9馬身ちぎり、
ナリタブライアン(①着)と
マヤノトップガン(②着)がデッドヒートを展開したあのレースである。
96年阪神大賞典は
「馬券を買わずに観ていたレースで、手に汗握り、ゴール前までドキドキした部門」ではトップ3に入るが、
「そうそうそんなレースがお目にかかれるはずがないよな」と、そんなことを思っていると、
神戸新聞杯のゲートが開いた。
レースは
武豊騎手もインタビューで話していたように、1000m通過が63秒1で超がつくスローペース。向正面では折り合いに苦労している馬が多いように見えたが、その中、
ローズキングダムと
エイシンフラッシュは中団の馬込みでじっと脚を溜めていた。
4コーナーでは併走していた
ローズキングダムと
エイシンフラッシュだったが、直線に向き、2頭の馬体がぶつかったのを合図にしたかのようにスパートを開始。
サンディエゴシチーを挟み、内から
ローズキングダム、外から
エイシンフラッシュが脚を伸ばす。そしてまた、2頭の馬体が接近する。
そこから2頭のデッドヒート。先に抜け出した
ローズキングダムが半馬身もないほどのリードを保ったまま、
エイシンフラッシュの追撃を必死に振り切ろうとする。対して、
エイシンフラッシュも
内田騎手のムチに応え、
ローズキングダムを必死に交わそうとする。
結果は、
ローズキングダムがクビ差で
エイシンフラッシュの追撃を封じ、先頭でゴールを駆け抜けたが、2頭の計時した
上がり3Fはいずれもメンバー中最速の33秒3だった。
折り合いを欠き、力を発揮できずに終わった馬もいるだろうが、③着
ビッグウィーク以下には
3馬身差がついていたから、超がつくスローペースを考えると、その着差はオッズが示す通り、
2頭の総合力が抜けていたことを証明するものだろう。
エイシンフラッシュを①着に固定し、
ローズキングダムを②着と③着に置いた3連単で勝負していたので、
「馬券を買わずに観ていたレースで、手に汗握り、ゴール前までドキドキした部門」に、この
神戸新聞杯は残念ながらノミネートされないのだが、正直、かなり手に汗握ってドキドキしました(笑)。
実に見応えのあるレースだったし、馬券は
あるデータを考慮した結果、前記した買い目で勝負したので、
「しょうがない」とスッパリと諦めもついた。
86年以降(過去24年)の
神戸新聞杯において、
馬体重が10kg増以上だった馬は[1.8.6.39]という成績で、勝ち馬は87年の
マックスビューティ(18kg増)しかおらず、
その成績を牡馬に限定すると[0.8.5.39]だった。あるデータというのはそのこと。
前週の
ローズSで、24kg増だった同じ
キングカメハメハ産駒の
アパパネが④着に敗れていたことも記憶に新しく、22kg増だった
ローズキングダムは、そのデータがかなり気になってしまったのだ。
ローズキングダムは
22kg増とはいえ、今回の馬体重462kgは新馬戦との比較で6kg増でしかない。パドックで見た姿にも太め感はなかったし、
22kg増というのは、春で減った馬体の回復分と成長分だったのだろう。
馬券は
自分が見つけたデータで墓穴を掘った格好だが、
ローズキングダムと
エイシンフラッシュによる、手に汗握る一騎打ちが見られたことは満足。
これで、
ローズキングダムと
エイシンフラッシュは3回対戦したことになるが、
皐月賞はハナ差で③着
エイシンフラッシュ、④着
ローズキングダム、
ダービーはクビ差で①着
エイシンフラッシュ、②着
ローズキングダム、そして、
神戸新聞杯はクビ差で①着
ローズキングダム、②着
エイシンフラッシュ。
このように、2頭の対決はいまのところ、
小差の決着が付き物となっている。この戦いがこの後、どのように展開されていくのかは非常に興味深いが、いずれにしても、
菊花賞のみならずその先もまた、
手に汗握り、ゴール前までドキドキするような戦いを見せてほしいものだ。