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後に「伝説の重賞レース」と言われていることになるのではないか
文/村本浩平

こんなに好メンバーが揃った札幌2歳Sを見るのは初めてだった。

いや、デビューしたばかりの2歳馬に対して、「メンバーが揃った」とするのは不適切なのしれない。それでも今年の札幌2歳Sは、POGで人気となった馬を始めとする血統馬がずらりと揃った

その中でも筆頭と言えるのが、祖祖母ダイナカールから4代続くG1制覇の夢をかけられたアドマイヤセプターだろう。芝1500mで行われたメイクデビュー札幌では、2着馬に7馬身差をつける衝撃のデビュー。勝ち時計も優秀であり、この札幌2歳Sでも牡馬たちを押しのけて1番人気の支持を集めていた。

2番人気に推されたのも牝馬のアヴェンチュラ。こちらも阪神JFオークスを制したトールポピーを全姉に持つ良血馬。また、天皇賞・秋の勝ち馬ヘヴンリーロマンスの産駒となるヴェイロンや、初年度産駒となる3歳世代からクラシックホースを送り出したゼンノロブロイを父に持つルルーシュなども名を連ねた。

一方、名よりすでに実績面を買われた形となったのが、札幌2歳Sが行われる芝1800mを、メイクデビュー&コスモス賞と連勝したマイネルギブソン、そして芝1800mの未勝利戦を優秀なタイムで勝ち上がったオールアズワンだった。

パドックで目に付いたのは、やはり人気のアドマイヤセプター、そしてアヴェンチュラだった。アドマイヤセプターは春先の取材ではまだ頼りなくも映ったのだが、それから数ヶ月経った今は筋肉のメリハリも出ていたように成長の跡が窺えた。

アヴェンチュラは、全姉のトールポピーそっくりの馬体はそのままに、体全体に伸びが出たような印象も受けた。

例年に増して完成度の高い14頭が周回を重ねていく中で、力強い足取りで、一頭だけ年齢が違って見えたのがオールアズワンだった。筋肉の張りも申し分なく、育成段階からしっかりとした乗り込みが続けられてきたことの証明とも言えた。

レースは、ゲートが開くとマイネルギブソンが先手を奪ったかに見えたが、ビービーマキシマスが並びかけてこれを交わし、マイネルギブソンは2番手に控えた。その直後にルルーシュが付け、中団にはオールアズワンアドマイヤセプターアヴェンチュラは、先行勢を見るように後方からレースを進めていく。

直線に入った時、真っ先に抜け出したのが3コーナーから加速してきたオールアズワンだった。後方からアヴェンチュラアドマイヤセプターが差を詰めてくるも、ゴール前では鞍上の安藤勝己騎手が手綱を抑えていたように、3/4馬身差という着差以上の完勝と言えた。

インタビューに答えた安藤勝己騎手は、「自分から動いてくれて、追ってからもしっかりと伸びてくれました。デビューの頃と比べても、力を付けていますね」と終始笑顔を浮かべながら話していた。

一方、1番人気に支持されながら3着に敗れたアドマイヤセプターに騎乗していた四位洋文騎手は、「他の馬にマークされたこともあってか、折り合いに苦労しました。ただ、素質は高いだけにこれからだと思います」と悔しそうに話していた。

表彰式では関係者が壇上に上がっていたが、そこにはオールアズワンの育成を手がけていた山田ステーブルのスタッフの姿があった。

「おめでとうございます」と声をかけた後に、「育成の頃から目立っていたのですか?」と話を向けると、「おとなしい性格をしていましたが、動きも良かったですし、乗り心地も良かったですね。あまりPOG媒体で紹介できなかったのは申し訳なかったです」と照れくさそうな表情を浮かべていた。

山田ステーブルの育成馬で、後にクラシックを勝利した馬では、ダービー馬ディープスカイがいる。表彰式の後で取材陣に囲まれた領家政蔵調教師は、「函館2歳Sを勝利したマジカルポケットもいますし、この後はラジオNIKKEI杯(2歳S)を目指します。皐月賞は狙える馬だと思いますね」と話した。

敗れたとはいえ、この舞台に2歳馬を送り出した育成牧場関係者の表情は一応に明るく、「レースぶりからしてもメドが付いた」「この内容なら今後が楽しみ」との声も聞かれていた。

今回は完成度で他馬を上回っていたオールアズワンが勝利した形となったが、来年のクラシックシーズンまでには他の出走馬も成長を遂げているに違いない。今年の札幌2歳Sは後々となって「伝説の重賞レース」と言われていることとなりそうだ。