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内がぽっかり空いて、フジキセキの血が騒いだ!?
文/編集部

勝利騎手インタビューを聞いていて、いつも好感を持つのが福永騎手なんですよね。丁寧に、しかも冷静にレースを振り返って話をしてくれるし、言葉の中に馬への愛情を感じることが多い。

今回の毎日王冠のレース後にも、いいことを言うなあ、と思わせられる場面があった。それは、「まだ若い馬だから、こういう馬だと決め付けるのは早い」というもの。

これは、アリゼオが差す形になるとは思わなかった、というインタビュアーの質問に対して答えたものだが、それは勝者のアリゼオばかりでなく、他の馬たちにも当てはまることだと思った。

1番人気には、アリゼオと同じ3歳馬ペルーサが推されたが、「メインレースの考え方」にも記されていた通り、これには、果たしてどうなのか?という思いがしていた。

毎日王冠の歴史を振り返って、差し脚質というのは不安があったし、他にG1で実績を残している馬がたくさんいた。前走のダービーで出遅れていて、スタートに不安を抱えていたとも言える(実際に出遅れてしまったわけだが…)。

今回の⑤着という着順は、仕方のない面もあったのではないかと思う。開幕週の芝で少頭数というのは特殊な条件だし、今回の着順がそのまま実力ではないことは明らかだ。

ペルーサはデビューからの4連勝で期待が大きく膨らみ、その余韻が残っているのではないかと思われるが、ここからまた出直せばいいだけの話ではないか。

出遅れる馬は、練習でクリアしても、またレースに行くと出遅れるケースがある。だからと言って、まだ3歳ペルーサを出遅れる馬と決め付けるのは良くないのだろうし、1~2度きちんと出ても、ゲートの問題を完璧にクリアした馬と決め付けるのも良くないだろう。馬券を買う人間は、その不安はいつでも抱えている、そう思って接するべきだと思う。

不安が的中する一方で、想定以上の大敗となったのがショウワモダンだった。鉄砲実績も道悪実績もあり、鞍上(後藤騎手)との相性も抜群だったが、直線ではまったく伸びなかった。

若い3歳馬を「こういうタイプ」と決め付けるのは良くないのだろうが、その一方で、実績が豊富なベテランについては、いつまでもそのデータ通りに事が運ぶわけではない、ということか。ただ、それを言い出すと、いったい何を信用したら良いのかって話になりますが(苦笑)。

福永騎手はインタビューで、「あんなに内が開くとは思わなかった」と話していたが、その点も、今回のレースのカギだったように思う。

逃げたシルポートは1000m通過が58秒9で、想定通りに淀みない流れで引っ張ったが、開幕週にもかかわらず、4コーナーから直線に向いたところで、馬場の中央の方へ進路を取った

もしかしたら、馬場の乾きが、馬場の内より外の方が良かったのかもしれないが、シルポートが進路を中央に取ったことで、馬場の内がぽっかり空いた。上位3頭は1~4番枠で、直線で内を突いたのだから、これはレース結果に大きな影響を与えたと思う。

今回優勝したアリゼオは4枠4番で、先週のスプリンターズSで③着となったサンカルロは2枠3番。ともに内を突いたもので、これだけを見ると、シンボリクリスエス産駒は内枠が得意なのかと思うかもしれないが、実はそんなことはない。

シンボリクリスエス産駒は芝のOPクラスで11勝をマークしているが、1~3枠に限ると[2.4.6.56]で、勝ったのはサンカルロ(ニュージーランドT)とアリゼオ(スプリングS)だけ。シンボリクリスエス産駒の中では、この2頭が特殊であると考えた方がしっくりくる。

アリゼオは芝重賞での③着以内がすべて馬番4~5番で、この内枠巧者ぶりを見ると、やはり母父フジキセキの影響が強い馬なのではないかと思う。

ちなみに、アリゼオ社台レースホースの馬で、募集時(1歳時)のパンフレットを見返してみたら、こんなことが書いてあった。「悍性が良過ぎる傾向にある母系ですが、この配合によってうまく緩和されたのか、スタッフの手を煩わせることはありません」。あの気性面の強さは、やはり母系からのものなのだろう。

アリゼオは、父(シンボリクリスエス)似ではなく、母父(フジキセキ)似なのか。そんなことを頭に入れつつ、年齢を重ねるごとに父の影響が強く出てくる馬も少なくないので、決め付けすぎずに今後の接し方を考えていきたいものだ。