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悲願の夢に向かって、空高く飛び立ったことは間違いないはず
文/編集部

新馬戦(札幌芝1500m)で繰り出した上がりが34秒3。直線で大外から弾けたその決め手から察するに、今回も斬れる脚を使うだろうと思っていたが、計時した上がりはメンバー中最速の33秒7紅一点・レーヴディソールはこちらの想像を超える別次元の末脚で、強豪牡馬をまとめて差し切ってみせた。

レーヴディソールに騎乗した福永騎手はレース後、「返し馬で乗りやすさと能力の高さを感じられたので、期待を持ってレースに臨みましたし、期待通りの伸び脚を見せてくれました。スタートは『遅いなぁ』と思いました(笑)」と話していた。

福永騎手が直線でムチを入れたのは2発か3発くらい。それも気合いをつける程度という感じで、直線後半ではほとんど馬任せのままで突き抜けてしまった。期待を持って騎乗した福永騎手をも納得させる末脚だったのだから、その秀逸さが窺い知れるというもの。

スタートの遅さについては、同じ松田博厩舎で兄姉のレーヴダムールレーヴドリアンもそういう面が見られたから、デビュー当初のブエナビスタなども含めて考えれば、この厩舎らしさとも言えるだろうし、血筋と言えば血筋ということかもしれない。

血筋と言えば、レーヴドスカーの仔は本当によく走ると感心させられる。上から順番に列挙すると、ナイアガラ(父ファンタスティックライト)、レーヴダムール(父ファルブラヴ)、アプレザンレーヴ(父シンボリクリスエス)、レーヴドリアン(父スペシャルウィーク)、そしてレーヴディソール(父アグネスタキオン)。

中央でデビューした上記5頭はすべて勝ち上がっていて、いずれもデビューしてから1、2戦目で初勝利を挙げている。さらに、レーヴディソールデイリー杯2歳Sを制したことにより、上記5頭は3歳5月までのOPクラスの芝で連対実績あり、となった。

もっと言えば、リーディングで上位に位置する種牡馬を父に持つ馬が目立つとはいえ、5頭の父はいずれも異なっている。そもそも、中央で勝ち上がる仔を5頭送り出すだけでもかなり難しいはずなのに、レーヴドスカーはそれにいろいろとプラスアルファを付けてクリアしている。

イスの上に大きなボールを置いて、その上に立ってバランスを取りながら、サーベルとかでお手玉しちゃう雑技団の演技みたいな感じか!? 例えとして伝わりやすかったかどうかは分かりませんが、レーヴドスカー普通では真似できないようなすごいことをしていると言いたかっただけです(笑)。いやはや恐れ入る。

なお、福永騎手はインタビューで「今日が目標ではなく、大きいレースに向けて無事に行ってほしい馬。今日は最後の直線も、馬のバランスだけは崩さないように、それだけは気をつけて、馬を傷めないような騎乗ができればと思って乗りました」とも話していた。

馬の将来を見据え、点ではなく線で考える。そのコメントを聞いて、福永騎手に乗ってもらえる馬は幸せだなと思ったが、今回のレースぶりを見て、なるほど、大きいレースを意識できる存在であることも実感させられた。

牝馬デイリー杯2歳Sを制したのは、96年シーキングザパール以来、14年ぶりのことだが、そのシーキングザパールはG1のNHKマイルCモーリスドゲスト賞を含め、その後に重賞で6勝を挙げる活躍を見せた。

いまの時点でシーキングザパールと比較するのは酷な話だが、レーヴディソールG1を狙えるだけのポテンシャルを秘めていることは、福永騎手の言葉からも伝わってくる。

ちなみに、ナイアガラレーヴダムールアプレザンレーヴレーヴドリアンレーヴディソール3歳5月までのOPクラスの芝で連対実績ありと触れたが、その成績を合計すると[3.2.2.5]。その成績のうち、OP特別とG2&G3が[3.1.2.0]G1が[0.1.0.5]となっている。

芝G1で[0.1.0.5]というのは、5頭のキャリア通算での成績でもあり、いまのところ、連対実績はレーヴダムールによる07年阪神JFでの②着だけ。そのレーヴダムール阪神JFの翌年、牧場での調整中に事故で夭折し、アプレザンレーヴも昨年、屈腱炎によって引退を余儀なくされた。

レーヴディソールの馬名の意味は「飛翔の夢(仏)」。まだあどけなさが残る芦毛の馬体にかかる期待は膨らむばかりだが、兄姉の悲願とも言えるG1タイトル奪取という夢に向かって……レーヴディソール空高く飛び立ったことは間違いないはずだ。