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それはまさに外国人アスリート型、人馬とも大一番に強い
文/鈴木正(スポーツニッポン)

アパパネ、強い! 予想していたより、はるかに強い。これが秋華賞を見終えた瞬間の感想だ。

ライバル馬にまたがる各騎手は、さまざまな工夫を凝らしてレースを運んでいた。アプリコットフィズ武豊騎手はインをロスなく回っての逆転Vを狙っていたし、アニメイトバイオ後藤騎手アパパネの直後でチャンスをうかがっていた。だがアパパネは、そんな細やかな抵抗をひと息で吹き飛ばすように、大外から力強く伸びて突き抜けた。

ゴールの瞬間、左腕を上げた蛯名騎手。そして検量室前へと引き揚げる時は空へ向かって3本の指を突き上げた。7枠に合わせてか、オレンジ色のネクタイを締めた金子真人オーナー(名義は金子真人ホールディングス)も最高の笑顔で馬を迎えた。まるで約束された結末であったかのように、すべてが絵になっていた。

それにしても蛯名騎手ここ一番での勝負強さは尋常でない。思い出すのは凱旋門賞ナカヤマフェスタを駆り、直線半ばで先頭に立った瞬間、体のシンからゾクッとした。最後は英国ダービー馬ワークフォースに屈して②着だったが、馬を信じ切った騎乗が実に頼もしかった。

アパパネへの騎乗も同じだ。「全然心配していなかった。いつも一生懸命走る偉い馬。力を出し切らせる。それが僕の仕事だと思っていた。本当にかわいくて、強い。僕が頼りないので馬に助けられてばかりですよ」蛯名騎手の言葉からもアパパネを信じ切っていたことがよく分かる。その思いが、迷いのない騎乗、そして大一番での勝負強さにつながるのだろう。

蛯名騎手だけでなくアパパネ勝負強い。いや、本番に強いと言うべきか。アパパネは今年に入って3勝を挙げたが、すべてがG1だ。トライアルのチューリップ賞は②着に敗れ、ローズSは④着。前哨戦は前哨戦と割り切って走り、上積みをたっぷりと詰め込んで本番で力を出し切るタイプだ。

ローズSオークスから24kg増。気合もひと息に見えた。秋華賞では4kg絞れ、パドックでは踏み込みもしっかり。レースも完勝だ。このあたりのメリハリの良さは国枝師の手腕だろう。かつて管理したマツリダゴッホオールカマーを3連覇した。狙ったレースに向けてピークに仕上げていく技術は、東西の調教師の中でもナンバーワンだと思う。

少々脱線するが、スポーツの世界において、日本人はトライアルをトライアルとして割り切ることが長く苦手だった。オリンピックで言えば、直前の世界選手権で日本人選手はいつも強い。金メダルへの期待も高まる。ところが、肝心の本番でコロリと外国人選手に負けてしまうことも珍しくない。

日本人選手はマジメすぎて常に全力で仕上げようとする面があり、ピークが続かないのだろう。一方で外国人選手は五輪こそがG1で、その前の世界選手権は、あくまで前哨戦だと分かって、ゆっくりと仕上げている。アパパネ、そして国枝師外国人アスリートのような発想、技術の持ち主であると言えようか。

金子オーナーにも、あらためて触れておこう。これで牡馬三冠のディープインパクトに続き、牡牝での三冠達成。こんな記録、世界の競馬にあるのだろうか。しかも、アパパネの父キングカメハメハ、母ソルティビッドともに金子オーナーの勝負服で走った馬。

大オーナーブリーダーでもめったにできない快挙を、牧場を持たない個人馬主がやってのけたのだ。間違いなく世界一馬運のいい(馬を見る能力があるとも言える)オーナーと言って差し支えないだろう。

同期牝馬との戦いは終わり、アパパネのレースは新たなステージに入る。次走はエリザベス女王杯だろうか。京都大賞典を制したメイショウベルーガとの追い比べは、名勝負となるだろう。

その先はエイシンフラッシュブエナビスタ、さらにはヴィクトワールピサナカヤマフェスタとも、ぶつかるに違いない。本番に強い外国人アスリート型牝馬アパパネ。その走りに、まだまだ酔おうじゃないか。