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仕事きっちりの不死鳥、今後が俄然注目となってきた
文/編集部

道悪で行われると思っていたら良馬場。マイネルレーニアがハナを切ると思っていたら出遅れて後方から。昨年のダービー以来1年5ヶ月ぶりで38kg増、斤量58kgを背負ったジョーカプチーノが③着に逃げ粘ったことにも驚かされたが、個人的には何かと予想外のことが重なったスワンSだった。

馬券はというと、「餅は餅屋」ではないが、芝1400mの重賞で勝ち星があったエーシンフォワードマイネルレーニアマルカフェニックスの3頭を中心に組み立てたのだが、そのうちの2頭が馬券圏外に消えてしまっては……的中に辿り着ける買い目はなし。

エーシンフォワードは休み明けという不安要素があっただけに、馬券圏外(⑧着)というシナリオを描けなかったわけでもないが、逃げると想定していたマイネルレーニアの出遅れなどもあって、レース後の心中はかなりモヤモヤした感じだった。

そんな中、馬券の中心に据えた1頭であるマルカフェニックス快走を見せたことで、そのモヤモヤ感は多少晴れた部分もある。というのは、レース前の段階で、「このローテで好走したら、本当に仕事きっちりタイプだな」と思っていて、実際にその通りの結果になったからだ。

マルカフェニックスは前走のスプリンターズSで⑨着。中団より後ろからの競馬で、4コーナーでは窮屈になる場面もあって追い込み切れなかったが、今回は好スタートを切って先行集団を見る位置に控え、上がり33秒9の脚で差し切り。②着ショウナンアルバが急追してきたが、その差は1馬身半で、完勝と言っていいだろう。

前記した「このローテ」というのは、「芝1200→芝1400m」のことを意味するのだが、その時のマルカフェニックスの成績は今回のスワンS勝ちを含めて[2.1.2.1]。唯一の馬券圏外は08年阪急杯(⑫着)だが、③着馬と0秒2差の5位に入線しながらも降着となったもの。

重賞初制覇を飾った08年阪神Cに始まり、09年スワンS③着もそう、今年の京王杯SC②着もそう、そして1年10ヶ月ぶりの勝利となった今回のスワンSもそう。重賞初制覇を飾った08年阪神C以降、馬券圏内に入ったその4回はいずれも「芝1200→芝1400m」というローテだった。

マルカフェニックスに騎乗した福永騎手はレース後のインタビューで、「1400mがピッタリな馬で、ここは狙っていたレースだったので、きっちり勝てて良かったです」と語っていた。狙った1400mの重賞でしっかりと結果を出す。まさに仕事きっちりタイプである。

「マルカフェニックスは芝1400mで何度でも蘇る。そう、不死鳥だけに」

レース後、ひとりでそんなことを考えてほくそ笑んでいたが、傍から見たら気持ち悪かったでしょうね(笑)。「芝1400mのG1がないので、G1になると厳しいですけど、G2はきっちりと勝っていきたいと思います」と語っていた福永騎手。そんな人馬には、ぜひ挑んでほしい記録がある。

2010年における中央の芝1400m重賞は8レース。そのうち、3歳&4歳以上の牡牝混合戦は阪急杯京王杯SCスワンS阪神Cの4レースとなるが、マルカフェニックスは、その4レース完全制覇に挑戦できるだけの存在だと思うから(2011年もその4重賞は芝1400mで施行される)。

マルカフェニックスはすでに阪神CスワンSを勝っている。残すは京王杯SC阪急杯だが、京王杯SCでは②着があるので、難関となるのはやはり、08年⑫着降着09年⑮着と、相性が良くなさそうな阪急杯か。

ちなみに86年以降、中央の芝1400m重賞で2勝したのはマルカフェニックスを含めて18頭となったが、3勝馬はラインクラフト(04年ファンタジーS①着、05年フィリーズレビュー①着、06年阪神牝馬S①着)しかいない。

3歳&4歳以上の牡牝混合の芝1400m重賞完全制覇の前に、芝1400m重賞の勝ち星でラインクラフトに並べるかがマルカフェニックスにとっての目標と言えるかもしれない。

もちろん、そういった話は外野の夢物語に過ぎない。それは重々承知しているが、マルカフェニックスがそれだけの夢の抱かせるだけの存在なのは確かだろうし、そんな個性派がいるからこそ、競馬は多様性があって面白いと思う。不死鳥の今後が、俄然注目となってきたのは自分だけではないはずだ。