前走の敗戦を糧にし、即座に結果を出したことは見事のひと言
文/編集部
今年の全英オープンに出場した
石川遼クンは、
「すごい風の中でもショットが安定していたし、4日間プレーできたことは貴重な経験になりました」と話していた。初出場だった昨年は
予選落ちとなり、決勝ラウンドへ進めなかったが、その
経験を活かせた部分もあったのだろう。
今年の全英オープンはセントアンドリュース・オールドコースで行われたが、
石川遼クンは
トム・ワトソンと同じ組で回り、そのことについて
「一生の思い出になります」とも話し、強風によってプレーが一時中断する場面などもあって、でもそれはプロゴルファーとして、
非常に濃密な時間なのだろうと思った。
石川遼クンのすごいところは、良かった部分も悪かった部分も
経験として明日への自分の糧にし、それが目に見えてプレーや結果に反映されるところだと思うし、
「経験ほど大きな財産はない」ということがよく分かるアスリートのひとりだとも思う。魅力的なアスリートで、そりゃあ、
CMで引っ張りだこにもなりますね(笑)。
「経験ほど大きな財産はない」ということを実感したのは、
京王杯2歳Sを見ていてもそうだった。
グランプリボスは前走の
デイリー杯2歳Sが先行失速で⑦着。2ヶ月ほど間隔が開いた影響があったのかもしれないが、道中で折り合いを欠き、掛かり気味に上がっていったぶん、直線で脚色が鈍ってしまった感じ。
新馬戦で
札幌2歳Sを制した
オールアズワンを負かした実力からすれば、物足りない結果だった。
ところが今回は、先行集団の後ろのインで折り合いをつける。レース後のインタビューで、
デムーロ騎手は
「矢作先生から『先頭から少し後ろの位置で進めてほしい』という指示を受けた」と話していたが、中間に馬の後ろにつける調教を課されたようで、それが本番で活かされたということだろう。
「直線で内に行こうかと思ったんですが、スペースがなくて外に回りました」という
デムーロ騎手の言葉にある通り、直線では外目に持ち出した
グランプリボス。手応え良く進出し、残り200mで仕掛けられるとサッと抜け出し、最後は流した感じで快勝。上がり33秒7の末脚でライバル勢を一蹴してみせた。
レース上がりが34秒3と速く、掲示板内に載った5頭のうち、②着
リアルインパクト以外は4角5番手以内の馬だったから、前残りの展開が味方した部分もあるだろうが、
前走の敗戦を糧にし、即座に結果を出したことは見事のひと言に尽きる。
逆に、
ロビンフット(⑥着)、
オルフェーヴル(⑩着)などは出遅れて追い込み切れず。
ロビンフットはメンバー中最速の上がり33秒4を計時し、③着に逃げ粘った
テイエムオオタカに0秒1差まで迫っていたが、スタートと展開に泣いた感は否めない。
リアルインパクトについては、4角7番手から差し込んで0秒1差の②着まで来たことは、先行したグループが残った展開を考えれば価値があるし、外枠(8枠)から終始外目を通って競馬をした
新馬戦から一転、今回は内枠から内を通る競馬を強いられ、それをこなした点も立派だと思う。
さらに言えば、86年以降、
京王杯2歳Sに
キャリア1戦で挑んだ馬は[0.2.3.20]と未勝利で、そのレース傾向も踏まえれば、
リアルインパクトがキャリア1戦で②着に好走したということは、ある意味、そのポテンシャルの高さを証明したとも言えるかもしれない。
ただやはり、
グランプリボスと
リアルインパクトで勝敗の明暗を分けたのは、今回に限っては
「経験の差」だったように思えてならない。2頭のキャリアの差はわずか1戦でしかないのだが、2歳戦における1戦というのは、古馬などのそれと比べても、
経験という部分での濃度が違うのだろう。
過去の
京王杯2歳Sを振り返ると、勝ち馬には
グラスワンダー、
ウメノファイバー、
コスモサンビームなどがいて、②着以下だった馬にも
ヒシアマゾン、
コイウタ、
マイネルレコルトなどがいる。言わずもがな、いずれも
G1馬である。
19歳の
石川遼クンはプロゴルファーとして、2歳の
京王杯2歳S出走馬15頭は競走馬として、そのキャリアはまだ始まったばかり。勝った馬も負けた馬も、今回のレースで
経験したことを次走以降にどう活かしていくのか。その答えを知るべく、各馬の成長を見守っていきたいと思う。