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後味の悪さは残るが、ブエナビスタの強さは際立っていた
文/安福良直

私のこれまでのジャパンCに対するイメージは、「枠順や斜行などによる有利不利がほとんどなく、全馬が実力を発揮できるフェアなレース」というものだった。

この点をもっと世界のホースマンたちに訴えて、強い馬が日本に来るように働きかけてほしい、と思っていたのだが、その点で今年は、よりによって①位入線のブエナビスタ斜行で降着。その他にも審議になるシーンがふたつもあり、「世界に誇るフェアなG1」(あくまで私が抱いているイメージではあるが)としては苦々しいものとなってしまった。

それでまた、繰り上がりで勝ったのが、菊花賞の当コーナーで「ジャパンCで楽しみ」と書いたローズキングダムだったものだから、私としてはきわめて複雑。確かに馬券としては、降着のおかげでプラスになりましたけどね……。これは素直に喜んでいいのやら……、といったところ。

ということで、後味の悪さはどうしても残るが、レース全体の印象としてはブエナビスタがその強さをまざまざと見せつけた、としか言いようがない。

16番枠という外枠でしかもスローペース。後方グループで終始外、外を回る、というロスの多い競馬を強いられた。しかも、馬場は連続開催の最終日でもいい状態で、外を通れば伸びるというものでもない。並みの本命馬なら、これは典型的な負けパターンなのに、直線に入ると大外から豪快に差し切ってしまった

着差以上の強さを見せつけた、という言葉がピッタリのレースぶりだったが、差し切る段階でずっと内へ内へと入っていったのが、唯一にして致命的なミスとなってしまった。

これでブエナビスタは、秋華賞に続いて2回目の降着。行儀が悪い馬ではないと思うのだが、動きがすごすぎて、ついつい周りを巻き込んでしまうのかもしれない。

ヒシアマゾンカワカミプリンセスがG1で降着になった時もそんな感じを受けたし、古くはミスターシービーも(降着にはならなかったけど)周りを巻き込むタイプだった。強くて華がありすぎる(?)馬の悲劇、と言うべきか。それにしても、もったいない斜行ではあった。

さて、繰り上がりで勝者となったローズキングダム。こちらは道中は先行集団の後ろで、内から2頭目のところを手応え十分で追走。武豊騎手「これは勝てる!」と感じていたのではないかと思うし、直線もブエナビスタと並んでから切れ味勝負に持ち込む構えに入っていた。

その瞬間に不利を受け、最後の勝負をさせてもらえないまま終わってしまった、という感じだったが、それでも最後まであきらめずに追い、内のヴィクトワールピサをハナ差交わしたおかげで、優勝が転がり込んできた。

菊花賞では負けたとはいえ、本命馬にふさわしい競馬ができていたから、今日の走りにつながったと言っていいだろう。ただ、今日は不完全燃焼だったのも事実なので、次の有馬記念では、ブエナビスタとの「究極の瞬発力勝負」を見てみたい。

ところで、久しぶりに8頭も出走した外国馬勢だが、⑨着のシリュスデゼーグルが最先着、というありさまで惨敗に終わった。実績は乏しくても、上り調子の馬が多いから楽しみはあるか、と思っていたのだが、見せ場も作れないまま終わってしまった。

今年は日本馬の層が厚かったし、スローペースで上がりの勝負、という展開も日本馬向きだった。とはいえ、逃げ馬のフィフティープルーフがもっとガンガン行くとか、何かしらの策を見せてほしかった気もする。

外国勢としては、最大の収穫はヴィクトワールピサで③着と健闘したフランスのギュイヨン騎手かもしれない。この日は新馬戦で2勝を挙げ、21歳ながらその才能をアピール。さかのぼれば、第1回ジャパンCを勝ったアスムッセン騎手は、その後世界的な名騎手に上り詰めていった。

ジャパンCには、「未来の名騎手を発掘する」という一面もありそうだ。その点で、ギュイヨン騎手はこれから要注目だが、やはり強い外国馬も生で見てみたいよなあ。