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存在感をアピールするには十分の内容だった
文/編集部

「オレのことを忘れてもらっちゃ困るぜ」。好位で流れに乗り、直線で力強く抜け出してきたルーラーシップを見ていて、そう物語っているように思えてしまった。

今春のダービー以来、半年ぶりの実戦となったルーラーシップ。蹄の不安で休養が長引いてしまったようだが、久々をまったく感じさせない走りを見せた。

大方の予想通り、シルポートが引っ張る展開。12.5-11.0-11.6-11.7-11.7-11.6-11.4-11.3-12.1と11秒台のラップがズラッと並ぶ平均ペースだったが、ルーラーシップアドマイヤメジャーの外の好位につける。その直後にリルダヴァル、さらに後ろにヒルノダムールと有力馬が続く。

直線。逃げ込みを図るシルポートに、残り1Fを切ったあたりでルーラーシップが並びかけ、追いすがるヒルノダムールリルダヴァルの追撃を振り切って先頭でゴールを駆け抜けた。以前と比べると、フットワークに力強さが増した感じなのは気のせいか。

09年ローズSブロードストリートが樹立したコースレコード(1分44秒7)に0秒2差まで迫る1分44秒9の好時計で勝利。阪神芝外回りの芝1800mに変更された06年以降では、08年サクラメガワンダーの1分46秒0を大きく上回るレースレコードだった。

岩田騎手はレース後のインタビューで、「休み明けのぶん、ちょっとモタモタしていた」と話していたが、その休み明けの中、ヒルノダムール(皐月賞②着)、リルダヴァル(NHKマイルC③着)という同世代の強敵を退けたのだから、存在感をアピールするには十分の内容だったと言える。

先週のジャパンCでは、ローズキングダムが①着、ヴィクトワールピサが③着。この鳴尾記念には3歳馬が4頭出走し、①着ルーラーシップ、②着ヒルノダムール、③着リルダヴァル、⑤着ショウリュウムーンとすべて掲示板内。鳴尾記念と同日に行われたステイヤーズSでは、3歳馬コスモヘレノスが勝利を収めていた。

古馬が手薄なのか、それとも3歳馬が強いのか、どっちだと断言するのはなかなか難しく、人によって意見が分かれそう。それでも、ここへきて一段と3歳馬の勢いが増していること、タレント豊富であることは間違いないように思う。

その中にあって、ルーラーシップは父キングカメハメハ、祖母ダイナカール、母エアグルーヴという良血中の良血ダービー⑤着は十分に胸を張れる戦跡だが、それでもどこか物足りなさを感じてしまうのが、この血統の宿命なのか、恐ろしいところでもある。

そういう目線で見れば、この時期に重賞初制覇というのも遅いと感じてしまうのかもしれないが、姉アドマイヤグルーヴは3歳9月のローズSが重賞初制覇で、兄フォゲッタブルも3歳12月のステイヤーズSが重賞初制覇だったから、いまくらいの時期から実が入ってくる血筋なのだろう。

勢いという点では、ルーラーシップの父であるキングカメハメハもすごい。リーディングサイアー争いで首位を走っているだけでなく、クモハタの157勝(53年)を抜き、内国産種牡馬のJRA年間最多勝利数を57年ぶりに更新し、その後も勝ち星を積み重ねている。

さらに、11月21日にJRA通算300勝を達成したキングカメハメハだが、2年5ヵ月での300勝達成はサンデーサイレンスの2年11ヵ月という記録を抜くものだった。サンデー系種牡馬がひしめく状況下で、サンデーサイレンスの記録を塗り替えたことは、素晴らしいのひと言である。

史上3頭目となる牝馬三冠を達成したアパパネジャパンCを制したローズキングダムをはじめ、活躍馬が目白押しの中、ルーラーシップがいよいよ良血開花。レアル・マドリードではないが、その銀河系軍団ぶりにも感嘆するばかりだ。

ルーラーシップはこの後、有馬記念参戦という可能性もありそうだが、一躍、同世代の、キングカメハメハ産駒の看板馬にまで出世するのか。今回の勝利によって、周囲の期待は一層高まりそうだが、それを超える活躍を見せたら、男の中の男でしょう。