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超一流となるための第一歩をいま踏み出した
文/浅田知広

クロフネアドマイヤドンシーキングザダイヤカネヒキリ、そしてエスポワールシチー。この5頭の共通点はいったい何かと言えば、ジャパンCダートで3コーナー3番手以内から馬券圏内に絡んだ日本馬、である。

いまさら成績を列挙するまでもなく、いずれ劣らぬ強豪ばかりだ。あえて言えば、G1未勝利のシーキングザダイヤが少々見劣る感もあるが、それでもG1は20戦して②着9回。条件を問わず安定して強さを発揮し続けた馬だったのは間違いない。

そんな過去のデータを見てしまうと、いくら08年から東京より直線の短い阪神に替わったとはいえ、さて、逃げるであろうトランセンドが1番人気というのは少々疑問符をつけたくなってくる。

周囲の出方によっては「逃げない」という手もなきにしもあらずだが、それではこの馬の持ち味が出ず、春のアンタレスSでは1番人気で⑧着に敗退してしまったように、やはり自身の力を存分に引き出すなら逃げに拘りたいところ。

しかし、G1連対どころか出走すらない馬の逃げ、このレースはいったいどうなんだと、馬券を別にしても、興味を持ってそのレースぶりには注目していた。

そして、鞍上・藤田騎手が選んだ作戦はもちろん逃げ。よほどのことがない限り、ハナには行くだろうと想像しており、ここまでは予想通りだ。刻んだペースは1000m通過60秒0ジャスト。前走のみやこSは60秒6、しかし今回は稍重で、その差も考慮すれば「前走同様」と言っていい。あまりペースを落とさず、後続、特に早めに追走する馬にはなし崩し的に脚を使わせるレース運びだった。

さて、問題はここからである。G1未経験の馬が、前走よりも斤量が1kg重くなり、さらに今度は直線に坂まであって、そのまま押し切れるのかどうか。いやあ、さすがに最後は止まるんじゃないか、と思って眺めていた……4コーナー手前までは。

この手の話、覆されるのはたいてい直線に入った後。それも半ばあたりに差しかかってから「あれ?」と思ったりするものだが、なんのなんの、4コーナーを回ったところでバーディバーディと2頭で「スコン」と抜け出し、これはもう他のレースでよく見る逃げ切り態勢。なんか去年も似たようなレースを見た気がするなあ、と言ってしまうには着差が少々足りなかったものの、ものの見事な逃げ切り勝ちと相成った

さて、このジャパンCダート「逃げ切った」トランセンド。果たして冒頭に挙げた名馬たちに迫る、あるいは上回るような実績を、これからどんどん積み重ねていくことになるのだろうか。

厳しい言い方をすれば、今回のジャパンCダートは前走とさほど変わらないメンバー構成。エスポワールシチーフリオーソスマートファルコンもいなければ、サクセスブロッケンカジノドライヴといった、本来ならこの路線で主役級になっていなければいけない馬も休養中である。

もちろん「阪神ダート1800m」という条件、かつ、いまの状態で考えれば、ここで列挙した馬の何頭かよりもすでに強い可能性も十分にある。ただ、クロフネ級のとんでもない勝ち方を別にすれば、全国各地、さまざまなコースや距離で、長きに渡って結果を出し続けてこそ超一流となるのがいまの日本のダート路線。

トランセンドはそういった存在になるための第一歩をいま踏み出したのだろう。今後はそんな多様な条件でのレース、そしてさらなる強敵との対決も待っている。それをひとつずつ克服していくことができるのか、楽しみに見守ってゆきたい。