今回は“人気に応えた”と見てもいいのではないか
文/編集部、写真/濱田貴大
出走馬18頭を見渡すと、その多くは3~4歳馬。18頭中16頭は3~5歳馬であり、6歳以上となると、
セラフィックロンプ(6歳)と
サンレイジャスパー(8歳)しかいなかった。
「そうか、よくよく考えるとセラフィックロンプはもう6歳なのか」とレース前、馬柱を見ていて思った。
セラフィックロンプは4歳だった08年に
愛知杯を制覇。当時はまだ条件馬の身だったため、18頭立ての16番人気という低評価だったが、それを覆し、手綱を取った
宮崎騎手とともに
重賞初制覇を飾った。
ところが、その後はしばらく勝利から遠ざかることになる。勝利どころか、12戦連続で馬券圏外。一度
スランプに陥った牝馬が復活するというのはなかなか難しく、今年6歳を迎えた
セラフィックロンプの活躍は、正直、もう望めないかもしれないと思っていた。
ところがどっこい、である。今年6月の
マーメイドSで14番人気で②着に激走すると、続く
府中牝馬Sも休み明けながら14番人気で②着に激走。こうして長い沈黙を破り、
セラフィックロンプは再び上昇カーブを描き出したのである。その牝馬らしからぬ
タフネスぶりには頭が下がる思い。
前走の
エリザベス女王杯はさすがに強敵が揃っていたこともあり、⑦着という結果に終わったが、それでもG1初挑戦だった
09年ヴィクトリアマイルがシンガリの⑱着だったことを考えれば、大きな前進であり、
目下の好調ぶりが本物である証拠だと、個人的には感じた。
そして、今回の
愛知杯。芝重賞において、最高人気は
09年福島牝馬S、
09年愛知杯の8番人気だった
セラフィックロンプが、
近走の好調ぶりが評価されたのだろう、今回は
自己最高の6番人気でレースを迎えた。
内枠を利して好位のインに収まり、4コーナーで前を行く
トゥニーポート、
バイタルスタイルを射程圏内に入れる。直線で外に持ち出した
セラフィックロンプに対し、
トゥニーポートと
バイタルスタイルの間を割って1番人気の
ブロードストリートが伸びて来る。
脚色から言えば、
ブロードストリートが突き抜けそうな勢いだったが、
セラフィックロンプも負けじと渋太く伸びて、馬体が並んだままゴールを通過。結果はハナ差の勝利だったが、
宮崎騎手はゴール後にスタンドに向かって左腕をまっすぐに突き上げていた。
宮崎騎手はレース後の勝利騎手インタビューで、
「力のある馬だと思っていたので、馬のリズムを大事にして走らせることに気をつけました。ブロードストリートを凌いでくれたのは本当に馬のおかげだと思っています。勝ちに行く競馬を意識していたので、今日は勝ててうれしいです」などと語っていた。そのコメントを聞くと、まるで本命馬で勝利したかのようである。
芝重賞で好走する時は、
逆の意味で人気を裏切る立場だったが、芝重賞で
自己最高となる6番人気でレースを迎え、そして勝利した。ハンデを見ても、08年の51kgより4kgも重い55kgを背負っての勝利だ。今回の
セラフィックロンプに関して言えば、これは
“人気に応えた”と見てもいいのではないだろうか。
ちなみに、86年以降、芝重賞でふた桁人気で3回③着以内に入ったことがあるのは
セラフィックロンプ、
スガノオージ、
クラフトマンシップ、
ブリリアントロード、
テイエムプリキュア、
ギャラントアロー、
アサカディフィート、
ステイゴールド、
マヤノライジン、
ナルシスノワール、
ダイワテキサス、
グロリーシャルマン、
リキアイタイカン、
バンブーマリアッチで計14頭。
セラフィックロンプはあともう1回、芝重賞でふた桁人気で③着以内に入れば、
単独トップに踊り出る。
“人気に応えた”ばかりの
セラフィックロンプに対してムチャなお願いをするのであれば、あともう1回、ふた桁人気で激走してほしいということ。
それはあくまで個人的な願望にすぎないし、
セラフィックロンプは今後、母になるという仕事も待っている。それでも、6歳12月を迎えてますます
好調、
本格化したとすら感じさせるいまの
セラフィックロンプには、来年も元気に走り続けてほしいと思わずにはいられない。