セン馬史上に新たな記録を刻んでいってほしい
文/編集部、写真/森鷹史
道中で掛かり気味だった1番人気の
ドナウブルーは直線で弾け切れず⑤着、好位で流れに乗っていた2番人気の
アドマイヤサガスも直線でジリジリとした伸び脚で④着まで。
直線で伸びあぐねる人気両馬を尻目に、早め先頭から押し切ったのは7番人気の
レッドデイヴィスだった。
逃げる
シゲルソウサイと2番手の
シャイニーホークが併走する形で後続を離して進み、
レッドデイヴィスはその2頭から大きく離れた3番手で追走。直線で前2頭を並ぶ間もなく交わし去り、直線で鋭伸してきた
オルフェーヴルに1馬身半差をつけて先頭でゴールを駆け抜けた。
勝ち時計
1分34秒0は、昨年の
ガルボの1分34秒3を0秒3上回る
レースレコード。
「好位でスムーズな競馬を心がけて乗りました。1頭になると、まだフワフワする部分はありますが、それだけ余裕があったのだと思いますし、強かったです」という
浜中騎手のレース後のコメントの通り、その
強さが浮き彫りとなった感じだろう。
2走前の
千両賞は直線で内を突いて前が壁になり、
満足に追うことができずに⑨着。前走は1位入線を果たすも、直線で外にヨレて
他馬の進路を妨害して⑩着に降着。ここ2走は
不完全燃焼のレースが続いていたが、その
モヤモヤも
きれいに吹き飛ばすような完勝劇だった。
その
レッドデイヴィスだが、デビュー前に
去勢されていたため、今回は
セン馬としての勝利となった。
セン馬が
シンザン記念を制したのは史上初。また、
セン馬による3歳1月での平地重賞制覇は、86年以降、
レガシーワールド(92年
セントライト記念)の3歳9月を
大幅に更新して1位に躍り出た。
そもそも、86年以降、3歳時点で
セン馬として平地重賞を勝っていたのは
レガシーワールド以外だと
アラシ(3歳11月、92年
福島記念)しかおらず、父サンデー系としては
メイショウドメニカ(03年
福島記念)以来2頭目だから、今回の
レッドデイヴィスは
極めて珍しいケースだったと言える。
そんな記録尽くめの勝利だったが、一転、新たな
課題が持ち上がってきた。
セン馬は
皐月賞、
ダービー、
菊花賞のクラシックだけでなく、
NHKマイルCにも
出走できない決まりとなっているのだ。
レッドデイヴィスはおじに
菊花賞馬
デルタブルースがいて、アグネスタキオン×トニービン×ノーザンダンサー系という配合は
皐月賞馬
キャプテントゥーレと同じ。また、父の産駒では
ロジック、
ディープスカイが
NHKマイルCを制していて、
ディープスカイは
ダービー馬でもある。
いわば、
牡馬クラシックと
NHKマイルCに
縁が深い血統構成であり、そこへの出走が叶わないというのは……決まりは決まりとはいえ、関係者ならずとも、なんともやるせない気持ちになってしまう。
だが、
レッドデイヴィスにとって
希望が湧いてくるような、こんなデータもある。日本調教馬の
セン馬で平地G1を制したのは
レガシーワールド(93年
ジャパンC)、
マーベラスクラウン(94年
ジャパンC)、
トウカイポイント(02年
マイルCS)の3頭。
そのうち、
レガシーワールドと
マーベラスクラウンは3歳時点で
去勢されていて、いずれも3歳の時に芝重賞で連対実績があったから、
レッドデイヴィスはその点で共通している。
浜中騎手も
「まだまだ成長する雰囲気のある馬ですし、これからもっと力をつけてくると思います」とコメントしており、いずれ訪れるであろう
大舞台での戦いに向けて、着実に実力を蓄えていってほしいものだ。
なお、前記した
レガシーワールド、
マーベラスクラウン、
トウカイポイントは
牡馬としてデビューしていたので、デビューから
セン馬だった
レッドデイヴィスが平地G1を制したとなれば、86年以降、日本調教馬としては
初の快挙となる。
それはあくまで一例だが、
レッドデイヴィスには
セン馬史上に新たな記録を刻んでいってほしいとも思う。その記録に挑める限られた存在であり、それを実現できるだけの
血統背景であり、
実力を秘めているはずだから。