ハイペースによって、ダンスファンタジアが存分に力を発揮
文/編集部
「折り合えば勝てる」、
「力さえ発揮できれば抜けている」などと言われる馬は非常に多い。そのようなタイプを
信じるか、
疑ってかかるか、それは馬券を買う者それぞれのスタイルによるところだろうが、今回のレースでは、
信じた方に軍配が上がったようだ。
今年の
フェアリーSでそんな評価を受けていたのは、
ダンスファンタジアと
アドマイヤセプターの2頭だった。どちらも
G1馬を母に持つ超良血馬で、
ダンスファンタジアはデビューから圧勝続きで2連勝、
アドマイヤセプターはデビュー戦で7馬身ぶっちぎり、続く
札幌2歳Sでは引っかかりながら3着。
素晴らしい潜在能力を見せていた。
しかし、両馬とも、前走で
その評価が一気に変わる。
ダンスファンタジアは
阪神JFでイレ込み、レースでも引っかかって
9着に惨敗。その
阪神JFを除外された
アドマイヤセプターは、
エリカ賞で終始掛かってしまい
7着。実力は認められるものの、折り合い面に難しさを残し、その気性が出世の妨げになる可能性も……と思われた。
しかし、このレースでの2頭、特に
ダンスファンタジアは中団でピタリと折り合い、2着
スピードリッパーに
2馬身半差をつける圧勝を飾った。
その
スピードリッパーも、前走は距離が若干短いと思われた1400mの
サフラン賞で3着に入り、200m延長のここで力を改めて証明した。
アドマイヤセプターも、スタート直後は鞍上の
川田騎手が手綱を抑える場面が見られたが、3着に入って一定の結果を残した。
では、
ダンスファンタジアが結果を残せた理由は何か? 内枠有利のコースで2枠4番という良い枠順もあったのだろうが、今回は
道中のペースが最大の要因だったように思う。
阪神JFと今回の
フェアリーSの
前半1000mまでのペースを比較すると、以下のようになる。
[阪神JF]12.5-
11.2-
12.1-
12.7-
12.7[フェアリーS]12.3ー
10.6-
11.1-
11.1-
12.0一目瞭然で、今回の方が
明らかにハイペースだった。
阪神JFが
35秒2-48秒5-61秒2という流れだったのに対して、今回は
34秒0-45秒2-57秒1だった。
一般的にペースが速くなると、折り合いに不安を抱える馬にとっては折り合いをつけやすくなり、道中での
力のロスが少なくなる。
ダンスファンタジアにとって、
力を存分に発揮できる環境が整ったと言えるだろう。
まだ、ペースが落ち着いた時にどうかとか、距離が延びてどうかという課題は残されていると思うが、少なくともここで賞金を加算したことで、
女王・レーヴディソールに対する挑戦権を得た。
このレースが
年明けの中山芝1600mに移ってから3年目。09年の勝ち馬
ジェルミナルはその後に
桜花賞&
オークスで
3着、昨年の
コスモネモシンは
フラワーCで
2着するなどしているが、現在のところ、過去2年の勝ち馬はその後に勝ち星を挙げていない。
今年の
ダンスファンタジアはそれ以上の活躍を期待していいはずだし、昨年の
アパパネに続く
関東馬の星として、頑張ってほしい。
ところで、今回の
1&2着はともに
ファルブラヴの産駒だった。日本で種付けされた同産駒での
重賞勝ち、
中央競馬でのワンツー、
中山芝1600mでの勝利と、すべてが
初めてだった(持ち込み馬では
ワンカラットが重賞を3勝している)。さらに、鞍上の
クラストゥス騎手にとっても、これが日本における
重賞初勝利となる。
いくつものデータを覆したこのレースではあったが、このレースにまつわるデータも、ひとつ生まれた。09年の
ジェルミナルに続き、
阪神JFにおける最上位人気馬はこれで2戦2勝(昨年は出走なし)となった。
阪神JFで上位入線を果たした馬がこのレースに出てくることはあまり考えづらいので、そこで敗れた馬の争いが今後も続くことになるだろう。
G1で人気を背負って敗れた馬がまた出走ということになると、来年以降も、我々は、冒頭の
「力があると思われる馬を信じられるかどうか」を試されることになりそうだ。