80年代の名牝の子孫が、レーヴディソールに再度の挑戦状
文/編集部(T)
近年、日本で活躍した
母や
祖母の子孫から活躍馬が出てくることが多い。たとえば、
ブエナビスタは母が
ビワハイジ、
ダイワスカーレットは母が
スカーレットブーケ、
ローズキングダムは母
ローズバド&祖母
ロゼカラー…といった具合だ。
長く競馬を見ていると、活躍馬の血統表に知っている馬の名があると、それだけで嬉しくなるもの。このレースを制した
ホエールキャプチャもそんな1頭で、
3代母は日本でG1を勝った馬だった。
血統表にあるその名は、
「Talented Girl」。…
外国馬じゃないか! ではない。これをカタカナ表記に直すと
タレンティドガール。兄にチャンピオンマイラー・
ニッポーテイオーを持ち、自身は
87年のエリザベス女王杯を制した名牝である。
タレンティドガールは、引退後に日本で産駒を1頭生んだ後、海外の種牡馬と種付けするために
英国に渡った。日本で活躍した馬が海外に渡って種付けすることは、しばしば行われている。現在は
ウオッカが
アイルランドで繁殖生活を送っているし、かつては
マックスビューティ、近年では
ダンスパートナー、
スティンガー、
フラワーパークなども海外に渡った経験がある。
タレンティドガールが英国で生んだ、
父Nashwanの牝馬
エミネントガールは日本で走ったが、2戦して未勝利に終わった。それに
サンデーサイレンスを付けて生まれた牝馬
グローバルピースも1勝と、なかなか結果が出なかったが、その馬に
クロフネを配合して生まれたのが
ホエールキャプチャだったのである。
競馬の国際化が進み、こういう例はますます増えていくだろう。自分もその流れに乗り遅れないよう、
「Talented Girl」=
「タレンティドガール」と、ひと目で気づく目を養わなければ…と思う。「3代母が●●だから…」といった表現を使うことがあるが、こういうことにすぐ気づけないのは恥ずかしいと思うのだ、こんな仕事をしていると、特に(笑)。
ホエールキャプチャ、そして
タレンティドガールを生産した
千代田牧場としても、自らの牧場で大切に育ててきて、海外にまで送り出した牝系が結果を出したことで、喜びもひとしおだろう。この日の勝利は、
「タレンティドガール」が「Talented Girl」になった日に約束されていたのかもしれない。
話をこのレースに移すと、
ホエールキャプチャは中団の馬群で折り合い、4コーナーで外に持ち出し、直線で早めに先頭に立って押し切った。このレースを制した
池添騎手は、レース後に
「レーヴディソールと当たるまでは負けられない」というコメントを残したが、その言葉も頷けるほどの危なげない勝ちっぷりだった。
一方、1番人気で
⑥着に敗れた
ダンスファンタジアの敗因は、やはり
ペースだったのだろうか。このレースが重賞3戦目となるが、
前半800mの通過タイムは
阪神JFが
48秒5(
⑨着)、
フェアリーSが
45秒1(
①着)、そしてこの
クイーンCが
47秒4(
⑥着)だった。
レースが進むにつれて、
クラストゥス騎手の上体が徐々に起き上がっていき、引っ張る仕草が増えていったところを見ると、やはり
ペースは速いほうがフィットするのだろう。
レース後に
藤沢和師は
「もう少し前につけたかった」と話されたようだが、
最内枠で揉まれてしまったのも敗因のひとつだったかもしれない。
池添騎手もコメントしたように、今年の
牝馬クラシック戦線は、2歳女王・
レーヴディソールを中心に回っている。
レーヴディソールの
新馬戦、
デイリー杯2歳Sの②着馬は
牡馬だったため、
阪神JFで
②着した
ホエールキャプチャは、今のところ
“レーヴディソールに最接近した牝馬”だ。
今回の
クイーンCで
②着に入った
マイネイサベルは
阪神JF⑥着馬で、
阪神JF出走馬でこのレースに出走していたのは、
ダンスファンタジア(
阪神JF⑨着)を含めて3頭だけ。結果的に、
阪神JFの
上位馬によるワンツーだったわけだ。
この結果が、間接的に
阪神JF勝ち馬レーヴディソールの評価をさらに高めることになるのは、ある意味皮肉と言えるかもしれないが、今春の再戦が楽しみになったのもまた、間違いないだろう。