「強い4歳世代」の中でも、トゥザグローリーはかなり強力な武器を持っている
文/編集部(M)、写真/川井博
競馬に関する仕事をしていると、いわゆる
「予測変換」がヘンな感じになることがあり、例えば、私の場合は「
とくべ」と打つと、すぐに「
特別競走」と出てくる。
もちろんありがたい機能なのだが、昨日、仕事をしていたら、
新種の予測変換に出くわして驚いた。「
つよい」と入力したら、「
強い4歳世代」と出てきたのだ。私はどれだけ「強い4歳世代」と打ち込んだのでしょうか(笑)。
昨年までは「
強い3歳世代」だったわけだから、「
強い4歳世代」という入力は
今年になってからと思われる。それでも予測変換されてしまうのだから、それだけ現4歳世代の勢いは
今年も凄いということだろう。
今年の
京都記念には
4頭のG1馬が出走していて、例年以上に豪華なメンバーだったと思うが、それらG1馬を押しのけて、
1&2番人気には
G1未勝利の「
強い4歳世代」が推された。
別定G2戦だが、多くの人が
「格なんて関係ない」と考えた証拠だろう。そして、最後の直線で攻防を見せたのも、やはりその2頭、
トゥザグローリーと
ヒルノダムールだった。
ヒルノダムールは差して届かない競馬が続いていたからか、今回は
積極的だった。直線入口で早めに先頭を窺い、ペースを考えても(1000m通過は61秒8のスローだった)、今回はそのまま押し切るかと思われた。
しかし、その後ろから、
いつの間にか外に持ち出されていたトゥザグローリーが忍び寄り、いや、忍び寄るというよりは
物凄い足音で迫ってきて、あっさり交わしてしまった。
②着は
メイショウベルーガだったが、位置取りの差があったにせよ、これに並ばせることはさせなかった。「
強い4歳世代」の中から、またも
完全本格化をした馬が現れたと言える。
「
強い4歳世代」は、本当は「
強い4歳のキングカメハメハ産駒」という話がある。
昨年以降の芝重賞で、
現4歳世代は
13勝をマークしているが、そのうち
キングカメハメハ産駒がのべ
6勝を挙げている。残りの
7勝は、
アプリコットフィズ(
クイーンS)、
ダッシャーゴーゴー(
セントウルS)、
アリゼオ(
毎日王冠)、
スノーフェアリー(
エリザベス女王杯)、
コスモヘレノス(
ステイヤーズS)、
ヴィクトワールピサ(
有馬記念)、
コスモファントム(
中山金杯)。特徴的なのは、
父サンデーサイレンス系の馬が
ヴィクトワールピサしかいないことだろう。
これは、現4歳世代の
父サンデー系の馬が強くないということではなく、
キングカメハメハ産駒が強すぎるのではないかという気すらする。
キングカメハメハ産駒が挙げた
6勝のうち、②着に
父サンデー系の馬(他世代も含む)が入ったケースが
4度もあるのだ。
キングカメハメハ産駒が父サンデー系の馬の頭を叩いているのである。
キングカメハメハ産駒の凄いところは、
さまざまなタイプを輩出していることだろう。
鳴尾記念と
日経新春杯を制した
ルーラーシップと、
中日新聞杯と今回の
京都記念で優勝した
トゥザグローリーを見ても、
ちょっとタイプが異なる印象がある。
ルーラーシップは母父トニービンの影響もあるのか飛びが大きく、
雄大な走りを見せる。
プリンシパルS(東京芝2000m)、
鳴尾記念(阪神芝外1800m)、
日経新春杯(京都芝外2400m)と、いずれも
直線距離の長いコースで
飛ぶように走って快勝した。
一方の
トゥザグローリーは、
ルーラーシップよりも大型なのだが、
小脚が使えて器用な印象がある。
中日新聞杯では内ラチ沿いをスルスルと上がって直線で突き放し、
有馬記念でも
小回りの中山をまったく苦にせず好戦した。今回の
京都記念でも、
直線入口でのワープの仕方は見事だった。
内ラチ沿いを走っていた
トゥザグローリーは、3~4コーナーの坂の下りで徐々に内ラチ沿いを離れ、直線に入ると、
ヒルノダムールの後ろを通ってその外まで持ち出された。馬場状態を考えての行動だったのだろうが、
トップスピード近くであれだけ器用に動けるのだから驚きだ。
レース映像を見られる人はもう一度見ていただきたいが、直線入口で内から外に移動するその姿は、ちょっとした
「欽ちゃん走り」のようである。
鞍上の
リスポリ騎手は、レース後のインタビューで
「自分は乗っていただけ」と話していたが、本当に乗っていただけで
トゥザグローリーが自らの意思で
「欽ちゃん走り」をしたというのなら、末恐ろしい話である(そんなわけはないか)。いずれにしても、この
自在性は、
ルーラーシップも持ち得ない「
強い4歳世代」の中でも
かなり強力な武器だと思う。
おそらく
トゥザグローリーは、今後も
競馬場(コース)を問わない活躍を見せるのではないか。
ドバイワールドCで②着となった母(
トゥザヴィクトリー)を考えれば、ダートでの活躍さえも期待したくなる。
近年では
アグネスデジタルという
オールラウンダーがいるが、同馬に匹敵するような活躍を期待しても、
トゥザグローリーには過大ではない気がする。