“意外と凄かった”ノーザンリバーの勝ちっぷり
文/編集部(T)、写真/森鷹史
「このレースの勝ち馬ノーザンリバーは、4コーナー7番手からメンバー1位の上がり34秒5で差し切った」一見するとなにげないこの事実だけを見て、
「ふーん」という感想を抱く人もいれば、
「開幕週で前が残りやすいはずなのに、よく差し切ったな」と思う人もいるだろう。実はこの一文には、
ふたつの意外な“凄い”が隠されている。
阪神競馬場が改装されて、
芝1600mが外回りになったのが06年12月。それ以来、このコースで行われた重賞で、
上がり1位で勝った馬は
3頭しかいない。
その3頭とは、
ウオッカ(06年阪神JF、07年チューリップ賞)、
ブエナビスタ(08年阪神JF、09年チューリップ賞、09年桜花賞)、
レーヴディソール(10年阪神JF)。
ウオッカと
ブエナビスタは説明不要の名牝で、
レーヴディソールもそれに匹敵する活躍が期待されている3歳牝馬だ。
ちなみに、このコースの
OP特別を上がり1位で勝った馬も、
高松宮記念④着馬
トウショウカレッジ(07年米子S)、G1で②着4回の
スーパーホーネット(07年ポートアイランドS)、
阪神JF②着の
アンブロワーズ(07年ファイナルS)、
ダービー②着の
スマイルジャック(10年六甲S)、
マイルCS②着の
ダノンヨーヨー(10年ポートアイランドS)しかいない。
トウショウカレッジ以外は、いずれも
G1連対馬だ。
今回の
ノーザンリバーのレースぶりには、
これらのG1馬やG1好走馬と肩を並べるだけの価値がある…と聞いたら、
“意外と凄い”ことがおわかりいただけるのではないだろうか。
もうひとつは、
「4コーナー7番手」という位置取りだ。
92年と93年は1回阪神の2週目、96年以降は開幕週に開催されている(94~95年は別の競馬場で開催)このレースにおいて、
差し切り勝ちを収めるケースは非常にまれ。
4コーナー5番手以下の馬が勝ったのは2回しかない。01年の勝ち馬
ダンツフレーム(4コーナー7番手)と、02年の勝ち馬
タニノギムレット(4コーナー6番手)だ。
ダンツフレームは
アーリントンCを勝った後に
皐月賞と
ダービーで②着となり、翌年に
宝塚記念を勝った。
タニノギムレットは
ダービー馬となっている。
ノーザンリバーはこれらのG1馬に匹敵する、
“意外と凄い”差し切り勝ちを収めたということなのだ。
では、G1級の勝ちっぷりを見せたと言える
ノーザンリバーの今後、特にクラシックではどうだろうか。
血統を見ると、全兄に
若葉S勝ち馬の
ノットアローン、半姉に
ファンタジーS②着の
モンローブロンドがいる。また、
ノーザンリバーの半姉
アコースティクスの産駒には09年の
ダービー馬ロジユニヴァースがいて、母系からはクラシックの活躍馬が複数出ている。
ノーザンリバー自身はマイルまでしか勝ち鞍がなく、距離が延びてどうかはまだ未知数だろう。しかし、
父アグネスタキオン、そして
この母系を見ると、血統的にはクラシック戦線でも十分戦えるのではないか、と思えてくる。
一方、このレースで1番人気に推された
ノーブルジュエリーは
⑦着、2番人気だった
スマートロビンは
⑤着に敗れたが、ともにスタートで後手を踏んだことが響いたか(
スマートロビンは直線で前が詰まり気味でもあった)。
ノーブルジュエリーはスタート直後に両側から挟まれて、絞り出されるような格好になってしまっていた。両馬ともこれが力負けではないはずだが、クラシックに出走するための
賞金を加算できなかったのは痛い。
その点、
ノーザンリバーは
賞金を加算したことが大きい。今後どのような路線を歩むかは分からないが、楽しみな存在が誕生したことは間違いないだろう。