ヴィクトワールピサがディープインパクトのような強さを見せた
文/編集部(M)、写真/川井博
前走の
有馬記念で
強いヴィクトワールピサが帰ってきて、今回の
中山記念では、
圧倒的人気で強いヴィクトワールピサが帰ってきた。
ヴィクトワールピサは
デビューから
ダービーまで
7戦連続で1番人気に推され、G1の
皐月賞と
ダービー以外は
単勝オッズ1倍台(1.2~1.7倍)に推されていた(その間、5勝・②着1回・③着1回)。
「ヴィクトワールピサ」と
「単勝オッズ1倍台」はセットだった。
しかし、
フランス遠征で苦杯を嘗めた後は、
ジャパンCと
有馬記念が
8&2番人気。本当の実力と成長力がどれほどのものなのか、
懐疑的な見方が広がったとも言えた。
ところが
有馬記念で
ブエナビスタをハナ差抑えて
勝利すると、今回は、得意の中山競馬場でのレースということもあり、
単勝1倍台が復活した(単勝1.4倍)。
中山記念での
ヴィクトワールピサの単勝オッズは、土曜日の朝の段階では2倍台で推移していたものの、同日の10時頃にはすでに
1.3~1.4倍となり、以後、1.5倍を超えることは一度もなかった。とにかく勝つのは
ヴィクトワールピサ。そんな雰囲気が充満していた。
単勝オッズ1.4倍なのだから
勝って当然、と見る向きも多いだろうが、過去のデータを調べると、一概にそうとも言いきれない。
90年以降のJRA重賞で
単勝オッズが1.0~1.5倍だった馬は
309頭いて、そのうち勝利を収めたのは
157頭。
勝率は50.8%しかない。特に
1800m重賞だと勝率が低く(勝率40.9%)、
半分以上が負けていた事実がある。
レースを終えたいまとなっては「へぇ、そうですか」ってな話だろうが、
デムーロ騎手の勝利騎手インタビューを聞くと、今回の
ヴィクトワールピサは
ややテンションが高く、
デムーロ騎手自身、
1800mという距離もやや短いと感じていたようだ。乗っている側としては、
「単勝1.4倍」という数字ほど楽ではなかったのだろう。
それでも、そのレースぶりは、結局、
単勝1.4倍のそれだった。
これまでは
内を突いて伸びる形が多かった
ヴィクトワールピサが、終始外を回る形で勝負所で動き、直線でも
軽く飛んでみせた。そのレースぶりは、まるで
ディープインパクトのようだった。
ディープインパクトはラストランとなった
06年有馬記念で、
単勝1.2倍の圧倒的人気に応えて優勝したが、その時は
33秒8の上がりで
3馬身差を付けた。
今回の
ヴィクトワールピサは、距離が1800mでG2ではあったが、
単勝1.4倍で、
33秒9の上がりで
2馬身半差。
ディープインパクトに似ていたと感じたのは、あながち間違いではないだろう。
馬場を1周以上する
中山芝重賞(つまり芝1800m以上の中山重賞)で、
33秒台の上がりを使って制した馬は、
06年有馬記念の
ディープインパクト以来だ。それ以前に該当馬は
4頭いて、
04年ステイヤーズSの
ダイタクバートラム(
33秒9)、
04年皐月賞の
ダイワメジャー(
33秒9)、
01年有馬記念の
マンハッタンカフェ(
33秒9)、
97年中山牝馬Sの
ショウリノメガミ(
33秒9)になる。
このうち、
ダイタクバートラムと
ダイワメジャーは、
鞍上がデムーロ騎手だった。
デムーロ騎手は
中山で切れる脚を使う術を知っているのだろうか?
ヴィクトワールピサは壮行レースを勝利し、今後は
3月26日の
ドバイワールドカップを目指す。
これまでに12戦して
5回の敗北を喫している
ヴィクトワールピサだが、その5戦は
フランスのロンシャン競馬場と
東京競馬場、そして
京都競馬場の外回りコース。つまり、
直線の短いコースでは負け知らずで、
ドバイワールドカップが行われる
メイダン競馬場のタペタコースも悪くないはずだ。惜敗を喫している
東京競馬場と同じ
左回りというのが最大のポイントではないだろうか。ぜひクリアすることを期待したい。
今回、
ヴィクトワールピサと並んで注目された存在だったのが
リルダヴァルだった。
池江泰郎調教師の管理として
最後の出走馬となり、積極的なレースを見せたものの直線で伸びきれずに
⑥着に終わった。
池江泰郎先生については、その
功績や
人柄をいまさら語るまでもないだろう。来週から管理馬が走らないことは寂しい限りだが、
「これからも競馬を愛していてください」と話されていたその言葉を大切にして、今後も競馬に接していけたらと思う。
今回の
リルダヴァルの敗戦はもちろん悔しいものだろうが、
ディープインパクトに似た
ヴィクトワールピサの強さを目の当たりにして、
池江泰郎先生も
日本競馬の将来に安堵感を覚えられたのではないだろうか。
池江泰郎先生や
厩舎スタッフの方々には、ただただ感謝するばかりだ。本当にありがとうございました。お疲れさまでした。